偏頭痛
「先生!モカが倒れた!視聴覚室にいる!」
教室に勢いよく入ってきたレンが事情を話す。
「レン、ふぃじゅるさるタオル用意して!!」
「え、ちょっと先生!?なにそれ!?」
勢いよく教室を飛び出していったユウヤはレンの質問にも答えることなく視聴覚室へ向かっていった。
「冷たいタオル、かな。沖縄弁出ると本当にわかんねぇんだから・・・。これ使って持って行って。俺はモカのカバン取ってくる。薬あるかもしれないから。」
ジュンは苦笑しながらレンに濡らしたタオルを渡して、荷物の置いてある一年教室へを向かった。
レンは受け取ったタオルを急いで視聴覚室にいるであろうモカの元へと持っていく。視聴覚室への前まで辿り着けば、教室の前でコトが思い悩みながら立っていた。
「あれ、コト。中は行って大丈夫かな」
「ああ、タオル頼まれたのね。いいと思うけれど、静かに入ってだって。」
「わかった。コトも休んだ方がいいと思うよ、顔色悪いから。」
「うん、ありがとう、ちょっと休んでるね。」
コトは視聴覚室の前から立ち去り、ゆっくりと階段を降りていく。
人目のつかない所を選ぶために会議室の扉を開く。
「・・・ごめんね、退室した方がいい?」
会議室の机で数々の紙を広げて作業をしていたのは、ノノであった。
「ううん、大丈夫。ノノちゃんは?」
「タカノの負担を減らすために、作業中。」
「そっか。」
「コト、これでもつまんだら?」
そういってノノから差し出されたのは、桃味の飴であった。
「いいの?ノノちゃんの飴なんじゃ・・・。」
「コト、モカが倒れてからバタバタしてお昼食べてないでしょ、あんな状況に直面したらガッツリお昼は食べられないかもしれないけれど、すこしはなにか食べたり飲んだりしといた方がいいと思うよ。」
「じゃあお言葉に甘えて。」
二人しかいない会議室に無機質なPCのキーボードをたたくタイピング音だけが反芻される。あめをなめ続けているうちに脳に糖分が行き渡り、心境も落ち着いてきたコトの顔色が次第に良くなっていることをノノは確認して少し安心する。
会議室の扉がノックされたので、扉を開けるとそこにはコトが来る前に一度この部屋から出て、別の用を消化していたマユカだった。マユカはドーナツが三個乗った皿を持って入ってくる。
「休憩のお時間ですよ~お二人さん~。」
「ちょっとマユカ、何処へ言っていたの?」
「たまたまケイ先生と出くわして、貰った!」
「ケイ先生ドーナツ作れるの!?」
「まぁ、ケイ先生料理部の顧問だけどドーナツってなかなかに難易度高くない?」
「本人曰く、少しでも気休めになったら、だって。食べよ食べよ~」
ケイの作った手作りドーナツを食べ、一通り休憩をし終わった後作業に戻ろうとするノノとマユカに話しかける。
「私に手伝えること、ないかな?」
「じゃあ、こっちを調べてくれる?ゲーム開発チームの内情を調べたいってタカノが言っていたの。」
ノノに手渡されたその資料を見て、コトは一人静かに驚愕する。
「なんで・・・?どうして、ここに虎波音姉さんの名前があるの・・・・?」
深く絶望した顔をしたコトは自分を心配する彼女達の掛け声に、猫を被り、会議室を出た。
突き止めたい真実に、教室へ戻る。全ては自分の幼馴染の真相を知るために。