夢
朝食の時間になって、眠りから覚めた皆は、一足先に起きて準備をしていたケイの作る料理を口にする。
「おれなんかすげー変な夢を見たんだよ。」
そう話していたのは一番最初に眠りについたユキであり、その話には皆も食いついた。
「それってどんな夢なの?」
「人はいなかったから、詳しくはわかんないんだけどな?なんかよくわかんない機械でその部屋は埋め尽くされていたんだ。」
「待て、その話メモ取らせろ。」
そのユキの話へ食いついたのは、ジュンであった。勢いよく立ち上がったジュンは懐からメモを取り出す。ジュンの慌てように動揺しつつも、ユキは話を続ける。
ユキの見た夢に映し出されていた部屋はたくさん機械のあるどこか研究所のような部屋だったという。ユキ自身、その部屋に見覚えはないし、本能的に危険信号が脳を駆け巡っていたがために、悪夢から解放されたときかのように飛び起きたのだという。
「それにしてもユキが悪夢なんて珍しいな、俺は多分この中でお前と一番付き合いが長いけれど、始めて聞いたぞ、お前が悪夢見たように飛び起きたって話。」
「俺も久々に飛び起きた、熱で魘されていたとき以来だって本当に。」
「で、そんな感じの夢見たのはユキだけなんだな?」
ジュンの問いにあたりが静まったことから、ジュンはユキだけがその状況に陥ったのだと推測する。ユキの脳の危険信号から察するに、ある種の予知夢であると考えるのが筋道を立てるのには都合がいい、このまま都合よく捉えていいのだとしたら今後その部屋が自分たちに関わるかもしれない、という考えに至ったのだ。
最も、それが現実通りに起こるとは言えないし、これが予知夢の類のものではなく、世間一般的な夢、もしくは彼の潜在的な恐怖を引き起こす悪夢であるのかもしれない。
「あ、でも私ジャンルは違うけどいつも見ない夢を見たわ。」
モカの見た普段見ないような夢は、学校が崩れ落ちる夢。爆発に巻き込まれるのではないかと思い、思わず恐怖に陥ったのだという。
そのほかにも、レン、コト、マユキがいつも見ないような悪夢に近い何か恐怖を覚える夢を見たのだという。
「ここまでくるとなにか偶然ではない何かを感じるなぁ。」
「ただでさえ普段とは違う生活が始まったのだから、精神的に堪えて悪夢を見ているという可能性が無いわけでもないけれど、ここまで一度に悪夢を見ると何か関連性が・・・。」
ひとしきり案を出してみても未だ謎は深まるばかりなので今後その類の悪夢を見たら随時報告するようにという取り決めをメンバーの中で行い、各自の自由行動に映ったのだ。最も、その悪夢が本当に危険信号であるとはだれ一人として信じていなかったのだが。