監視の目
「ほう、これは興味深い、貴方がこのような殺し合い(げーむ)を作るのは、珍しいじゃないですか。」
空虚な部屋でただ煌々と液晶画面が光る部屋で白衣を着た男は、一番大きいモニターの正面にいる青年に声をかけた。青年は振り返り、こう返答する。
「たまには僕だってこういう遊戯を作るときだってありますよ、テル。あまり人数が残っていなくて面白くできないのが残念ですけれどね。」
にんまりとテルと呼ばれた青年に笑いかけるその男の笑みこそ悪魔的とも認識できる。なにより、この液晶モニターから監視できる範囲は少なく、彼が思う通りに進むとは思えない。しかし、顔色一つ変えることなく奴はゲームのシナリオ通りにコマを進めていく。
「ああ、トウヤ。言い忘れていました。マナがラボで呼んでいますよ、頼まれていたものができたとかできていないとか。」
「なんでそこは不明瞭なんです?」
「伝言だからね、ワタルからの。」
「なるほど、では向かうとしましょう。」
廊下に反響する二人の靴から生み出される甲高い音により、その廊下の人通りの少なさを表していた。最もこの場所に辿り着くにはある程度の信用がないと入ることはできないから当然なのではあるが。
ラボ、と呼ばれるその空間は建物の地下塔の多くを有しており、そこには専門の知識を持つ者でも普段お目にかかれないような特殊な機材が場を占めている。デジタル信号が埋め尽くしたメモが至る所に張られていたそのラボの壁でさえも狂気的に映る。
「ああ、トウヤくん、お疲れ。」
ラボに入室してきたトウヤとテルに対して少し丈の長い白衣の袖を捲りながらも出迎えたのはこのラボの主、マナである。このゲームを開発するにあたって最新テクノロジーを用いた発明にかかわった人物である。
「トウヤ先輩、テル先輩お疲れ様です。現在確認したところ百ほどのプレイヤーが現在ログイン、マッチング中。以上は見受けられません。」
そして、部屋の奥から出てきたこの青年が、テルに伝言を頼んだ張本人、ワタルなのである。あまり整えられておらずすさまじい寝癖を持つ彼は気怠そうに身に着けていたゴーグルを取り外す。
「あ、そうそうお二人さん、そこら辺に座って。会議と行こうよ。」
二人分の飲み物を用意しながら椅子へ座るように促したマナは彼らの目の前に差し出した。
「マナ先輩、俺の分は。」
「向こうにワタル君のホットココア作ってあるから持ってきな。」
「ありがとうございます。」
ワタルがラボの奥にあるこじんまりとしたキッチンスペースにホットココアを取りに行っているうちに、マナの端末に連絡が一件入る。
「ありゃ、今日揃うメンバーはこれだけか。あの子も忙しいね。椅子出しちゃったのに、しまわなきゃかな。」
本来、定期的に行われているこの会議で、主要メンバーが集まるのだが、五人のうち一人がほかの仕事が立て込んでいて来れないという。
「じゃあ、第3回、共同プロジェクト【コディチェ】の開発討論会を始めましょうか。」