ゲームの共通点と相違点
ここから解決編に入ります。
「何も質問していないのに、どうして私の描いた物が分かったの?」
目の前の男に当然の疑問を投げかける。
すると紳士は顔を歪ませ、
「ワシはこの世界で言う、未来から来た。
だからアイラが何を描いて、何を質問してくるか全部分かった」
おじいさんは淡々と告げる。表情はいつもの真顔に戻っており、目は真剣そのものだった。
私はあまりそういう話を信じない口だが、あえてこの人の話に耳を傾ける事にした。ゲームの全容や知識が不足しているため、どんなにあり得ないと思う話でも、この狂った戦いの世界では、貴重な情報だった。
それに私にはかつての自殺願望が薄れ始め、今は生きたいという気持ちが強くなっていた。私はこのゲームに勝ちたいのだ。勿論、代償としてお父さんの命を、自分が奪う事になるかもしれないという事は分かっている。
しかし、躊躇いはなかった。ただ単に実感が湧かないからだろうか。本当はこのゲームは、ただのお遊びのような気がする。お父さんを殺すという感覚がない。
実際私の知っているお父さんと、この紳士はあまりにも容姿がかけ離れている。あらゆる非現実的な出来事が、私の父親殺しという感覚を麻痺させた。
「お爺さんは、私のお父さんなんだよね?」
「ああ」
間髪入れずに老人が答える。
私は殺そうとしている相手が、お父さんではないと否定して欲しい気持ちと、またお父さんに会いたいという一心での肯定してほしい気持ちがあった。その為、心の中で激しく葛藤する。
「じゃあ、あの戦争をお父さんは生き延びたということ?」
私は行方不明になっていた父の生死を知りたかった。その為なら、この老人の戯言にも聞き入れる事が出来る。
「そうだ。
長い年月拘束された後、ソビエト軍から解放されて、やっと故郷に戻ってきたのだ。
そしたら村の人間は全滅だった」
紳士は悲しそうな目を向けて、私に言い放った。その姿が、ゲームに無関心な私の心を痛ませた。
この男が父親かどうかは証明できない。しかし、目の前で命をかけて戦う相手は、死神でも魔物でもない。私と同じ人間だ。
ふと、二人の少女に目を向ける。私の傍にいる顔の潰れている女の子と、紳士の傍にいる明るい女の子。
紳士、いや、お父さんは一人の女の子しか見えていない。顔の潰れている子しか見えないと言った。
私は考える。私には二人の女の子を見ることが出来る。しかしお父さんには、一人しか見る事が出来ない。
そして私には母親が見えない。お父さんには見える。
何かが閃いたように、思わずはっと息をのむ。私はこのゲームの仕組みを、ついに見破る事が出来た。




