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セイヴァーソウル 魔族討伐隊  作者: ペンギンマン
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換金所

 禍月終夜と鬼道魔利は自分たちが倒した銀狼の報酬を得るため、換金所を訪れていた。危険種討伐の報酬を得るためには、依頼主から直接貰うパターンと、()()()()が指定してある口座に振り込まれる二パターンある。前者は個人の依頼主が多いため当たり外れが多いが、その分基本的には高報酬で提示されていることが多い。後者は、公的機関が運営していることもあり、確実性はあるが、手続き費用などで報酬からいくらか減られる場合がある。


 換金所は街の中心部から離れた郊外にある。周りには他に、屠殺所やごみ処理施設などが建てられており、陰鬱で独特の雰囲気を醸し出している。


 「終夜クサーイ」


 周囲の環境から発せられる悪臭に、魔利が思わず鼻を摘んだ。


 「お前、ここにくるのは三度目だろ? いい加減慣れたらどうなんだ」 


 「慣れないよ! だって臭いもんは臭いもん!」

 

 終夜がそういって宥めるが魔利は首を振ってそれを拒否した。


 「着いたぞ」


 そうこうしているうちに目当ての換金所にたどり着いた。


 換金所はコンクリートの壁に大きなシャッターと、出入りのための鉄製のドアがあるだけの質素な造りで、周囲の環境も相俟って違法な雰囲気を演出している。


 終夜はドアの横にあるインターホンを押した。ボタンを押すと建物の殺伐とした佇まいに反して軽快なメロディーがなった。するとボタンを押してから数十秒ほどで、中から男の人がでてきた。


 男性は黒いスーツをビシッと着こなし、今から面接にでも行きそうなくらい清潔感があるが、肝心の着ている人物はスキンヘッドで強面の男で着ている服とはギャップが激しかった。


 「なにかご用意でしょうか?」


 その強面の男が開口一番そう発した。威圧感のある見た目に違わぬドスのきいた低い声だった。


 「依頼で危険種を狩ったからその報酬を貰いにきたんだけど?」


 終夜がそう返すと、強面の男性は眉一つ動かさずしばらく終夜をじっと見つめると、「少々お待ち下さい」といって扉を閉めて奥に消えていった。


 「……な、なんだあの人けっこうコワイかんじだな……」


 「あんなのにビビってたら、この先やってけないぞ」


 怖がる魔利に比べて終夜は場馴れしているのか平然としていた。さっきの男性が消えてから数分たったとき、扉を開けてまた別の男性が出てきた。


 身長はやや小柄であり、服装はラフなアロハシャツに肌は黒い黒人風の男。さっきの男性とは全てが正反対である。


 「オマエラか!? 危険種を狩ってきたとかほざくガキは?」


 肌黒の男性は開口一番そう発した。


 「ほざくもなにも、実際に狩っきたんだが?」


 「バカコケ! オマエラミタイに危険種を倒したからカネをクレッテホラを吹くガキがタクサンキテコッチはメイワクシテル。ガキはサッサトクソシテネロ!」


 この流暢ではない喋り方、どうやら外国の人物のようだ。


 「ここから、北に20Kmほど離れたところにある危険種処理施設……銀狼を狩ってきた」


 「アノクソ田舎の山にある危険種処理場カ……タシカニアソコニハバカデカイクソ犬とソノムレがイタガ……オマエラがカッテキタトイウ証拠デモアルノカ?」


 「…分かった」


 終夜はそういうと、上着のポケットからスマートフォンを取り出して、その男性に画面を見せた。


 スマホの画面には、切られた首を胴体に置かれ死亡している巨狼と、それをバックに笑顔でピースをする魔利の写真が表示されていた。


 「……フム……」


 肌黒の男性は、顎に手を当てて写真をしばらく凝視したが首を振って「イャア、ダメダメだ。写真ダケジャネ。合成カモシレナイ、コレダケジャ証拠ニナラナイネ」と終夜達に告げた。


 「…はぁ…」


 終夜はそれを聞いてため息をついた。そしてしばらく間を開けた後、左手を上に掲げ、一気に振り下ろした。


 すると終夜と肌黒の男性の目の前に写真の巨狼の生首が叩きつけられた。


 「……!!……」


 何も無いところから突如現れた巨狼の生首に男性は驚愕した。この生首が()()()()()()()()()()出てきたのかはわからないが、どうやらこれが終夜の能力らしい。


 「コレが証拠品だ。首落とせば死んでるだろ。これで信じるか?」

 

 「……ウム……」

 

 鈍い音と共に地面に叩きつけられた生首をその男性はマジマジと見つめる。


 「オイ、オマエラシャッターヲアケロ!」 


 肌黒の男性は声を張り上げ、誰かにそう指示した。すると後ろの鉄製のシャッターが上がり、その中から作業着を着た別の男性が数名現れた。


 換金所から現れたその男性達は巨狼の生首を運び持ってきた台車に乗せた。上げられたシャッターの奥には、鎖で繋がれた狼のような生き物や、巨大生物の頭骨、毒々しい葉色の観葉植物のようなものがあった。


 どうやらここは換金所と同時に証拠品の保管場所でもあるらしい。作業着の男性達は巨狼の生首を乗せた台車を押ながら、またシャッターの奥に消えていった。



 肌黒の男性は上げられたシャッターを降ろすと、内ポケットから厚みのある白い封筒を取り出すとそれを終夜に手渡した。


 「ウケトレ」


 封筒を渡し終えた肌黒の男性は、もう用はなないとでもいう風に終夜に背を向け換金所に戻っていった。


 「フム」


 終夜は、男から貰った封筒を確認した。封筒の中には大量の札束が入っていた。どうやらこれが巨狼討伐の報酬のようだ。


 「何貰ったの? みして〜……す、すげえ……沢山の諭吉さん……っ……!!」  

 

 終夜が持っている封筒を覗き見た魔利がその報酬の多さに驚きで声を上げた。


 「ふん、こんなの俺らがした労働の対価としたら当然の額だ」


 しかし、終夜はその報酬の額に驚くこともなく当たり前のようにそう呟いた。


 「よし! じゃあこの金で今日は焼肉だ!」


 「いや、アホか。貯めるってんだろ」


 終夜は魔利の冗談にそう返すと、貰った封筒を内ポケットに閉まった。すると同時に誰かのスマホの着信音が鳴った。摩利のポケットからだ。摩利がポケットから電話にでる。


 「もしもし……うん…うんうん分かった。じゃあね」


 会話が終わったようで、摩利はスマホの電話を切った。


 「()()()からだ。いつ帰ってくるの? アジトで待ってるってさ」


 摩利からアリスという名前を聞いて、終夜の眉がわずかにピクッと動いた。アリスという人物はどうやら終夜達の仲間のようだ。

 「あいつか、ここからアジトまでは近くない。悪能力も使いきったし、バイクはガレージに置きっぱなしだしな。となると最後の手段は……」


 「よし!快速スカイライナーで爆走だ!!」

 

 「いや、あほか。普通に各駅で帰るんだよ」 


 ボケる魔力に頭からチョップを繰り出して終夜がツッコミをいれる。 


 「ここからだと雑魚駅が近いな。そこから各駅快速で如月駅に直行で俺らのアジトにつける」


 「スゴーい! 終夜やさっすが頭いいね!」


 「お前が頭悪いだけだろ」


 終夜あきれて摩利を馬鹿にしながら換金所を跡にした。

 

 

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