落ち込んで体育座りしたけど、好きなロリっ子のバブみを感じたら元気が出た破壊神
一時ランキング1位になったけど、すぐに転落して3位になった。泣きたいですけど、今ならまだ返り咲けると信じて連日投稿。1日の評価ポイントが2千を切らないように頑張りたいです。
そんな作品ですが、お気にいただければ評価や感想、登録のほどよろしくお願いします。
波乱万丈の模擬戦が終わった日の放課後。フラフラと頼りのない足取りで屋敷に戻ったシヴァは、自室の部屋の壁際で体育座りをしながら項垂れていた。
「まさかあの程度でやりすぎって怖がられるなんて……しょうがないじゃんか、あのくらいの魔法使っても、俺がいた時代じゃ本当に大したことじゃなかったんだから」
若干、不貞腐れてもいた。今回のエルザの言葉ばかりは流石に傷ついたのか、体育座りの体勢を保ちながら床をコロコロと転がり始める。
「そりゃあまぁ? ケガさせたり死なせたりしたのは、ちょっとは悪かったと思ってるけど? あんなんすぐに蘇生させればオールオーケーじゃないのか?」
シヴァはコロコロコロコロ、体育座りの体勢のまま転がる。
4000年前、人里恋しくて町まで忍び込んだ時に盗み見た戦闘訓練では、組手相手が死ぬまで戦闘を続け、その度に蘇生させていることも珍しくはなかった。
「測定器は悪いことしたって思ってるけど、俺はあくまで手を抜かずに真面目に測定しようと思っただけだし。それにあんな岩くらい、すぐに直せるんだからちょっと壊したって問題ないだろ。なのに大袈裟に騒ぎ立てて……」
コロコロ、コロコロ体育座りの体勢のまま転がり続ける。
4000年前ならもっと大きな岩山を木端微塵のする者も居たし、そうしたものは周囲から称賛の視線を浴びせられていたのだ。当時は同じことをしても呪いのせいで怖がられてばかりだったシヴァは、褒めたたえられる者が羨ましくて、良いところを見せようと頑張った結果が、4000年前と同じく周囲からの恐怖の視線。
個人的には愚痴の一つでも言いたくなって当然だ。自分なりに精一杯真面目に授業に取り組んだだけ。それでいてやりすぎにならないように手加減したし、出来る限り周りに配慮して甲斐甲斐しく蘇生したりした。
「無事に蘇生できるよう、魂まで燃やしてないんだからいいじゃないか……測定器だって本気でやっていいっていうから本気でやったし、それでも壊れないように注意だってしたんだぞ」
魂まで焼失すれば、蘇生魔法も意味をなさないのだ。シヴァとしては誰1人として何の問題もなく蘇生できている時点で十分手加減できていると思っていたし、そんな自分の心遣いは向こうにも伝わっていると思っていた。
しかし、それはシヴァの思い込みに過ぎなかった。その結果、周りに配慮していたはずの自分に向けられたのは、4000年前に嫌というほど向けられた、恐ろしい化け物を見るかのような弱者の視線。何気に一番シヴァの心を傷つけてきた眼差しだ。
「……本当は俺だって言われて納得したんだよ。4000年も経って平和な時代に、俺みたいな大戦経験者の感覚が合うわけがないって」
そこでシヴァの愚痴が止まる。ついでに転がるのも止める。体育座りの体勢で横たわったまま、シヴァはこれまでの自分と周囲のズレを正確に認識し始めた。
いうなれば、完全にジェネレーションギャップという奴なのだ。力で平和の道を切り開いた英雄ですら、泰平の世になった途端に裏切った時の脅威を好き勝手に想定されて、手のひらを返されるのが人の世。
シヴァのようになんの功績もない人間が時代の基準を大幅に超えた力を見せつければ、それは大衆にとって不倶戴天の敵と何ら変わりはない。
よくよく考えてみれば当たり前だったのだ。何時その力が自らに向けられるかも分からないのに、どうして人々が心を開けるだろうか?
しかもシヴァの場合、実際に力を向けまくってしまったのだから言い訳のしようもないのである。
「あそこまで言われれば気付くさ。悪いのは俺だよ。この時代の理解を深めようとしなかった俺が悪い。でもあれ以上、どうやって手加減しろっていうんだよ」
再びコロコロコロコロ転がり始めるシヴァ。
先に言っておけば、周囲がどう思おうとシヴァは本当に手加減に手加減を重ねていたのだ。そうでなければ今頃この学術都市は炭の平野と化している。
しかし、逆に言えばシヴァがどう思おうと、周囲はシヴァの事を傍若無人な問題児とでもみることだろう。シヴァは自分が理想としていた学校生活と、リア充への道程がガラガラと崩れていくのを実感した。
「……でもまだ大丈夫。4000年前と比べたらまだ大丈夫なはずだ。だって話が通じるだけ大進歩じゃないか」
コロコロ転がり続けたシヴァは部屋の隅っこで体育座りの体勢のまま身を起こし、両膝を抱える両腕に力を込める。
これまでの一連の動作は、呪いを掛けられてから10年間、シヴァが体ではなく心が傷ついた時によく行うものだった。
人に近づくだけで攻撃された日。誰かに話しかけるだけで泣きながら逃げられた日。どんなに誤解を解こうとしても話が通じなかった日。呪いの解呪が遅々として進まないと嘆いた日の夜には、こうして自分自身に言い聞かせて明日の励みとする。
「呪いが解けて、新しい自分に生まれ変わったんじゃないか。そうだろ……? シヴァ・ブラフマン。これからは気を付けて、生きて諦めなければ何とかなる。まだ全部が終わったわけじゃないんだから、大丈夫だ」
どんなに超越した存在になり果てたとしても、彼はまだ17歳の若者だ。傷つく時は傷つくのである。
4000年前の人々とエルザが口にした、今日まで自分を散々傷つけてきた〝化け物〟という言葉を頭から追いやって、また明日もポジティブな気持ちになれるように何度も繰り返して「大丈夫」という言葉を繰り返していると、私室のドアがゆっくりと開いた。
「……セラ? どうかしたのか?」
「…………」
銀のように薄い灰色の髪揺らしながら、ホワイトボードを胸に抱きしめたセラはゆっくりと近づいてくる。
(そういえば……セラは普通に俺の後ろに付いて帰ってきてたな)
エルザの言葉が割とショックで、呆然としてて声を掛けられなかったが、クラスメイト達が感覚的にも物理的にも距離を取ったのに対し、セラだけは距離感を保っていた。
【?*|¥;。@+】
「どうした? 魔道具使ってるのに言語がすごく不安定だぞ」
そんなことを考えていると、セラのホワイトボードに言語になっていない文字の羅列が浮かび上がる。頭の中でも伝えたい言葉が全く纏まっていない証拠なのだろう……アタフタとした様子で何とか言葉を絞り出そうとしているようだが、結局何も思い浮かばなかったのか、セラは床に膝をついてホワイトボードを脇に置いた。
「えーっと、結局何の――――」
用事だ……そう問いかけようとしたシヴァの頭に、セラの小さな手が乗せられた。そして指で髪を梳くように、ゆっくりと優しく撫でられる。
一体何事かと思わず呆然としていると、子供のように小さな手のひら相応に細く短い両腕が、シヴァの頭をセラの胸元へと抱き寄せた。
「…………もしかして俺、模擬戦の時のことで慰められてたりする?」
「…………」
セラは頷き返すこともしなかった。今でもシヴァの何気ない言動に顔を青くして怯えることがあるセラからすれば、なけなしの勇気で取った行動なのだろう……答える余裕もないのだろうが、それ以上に行動が言葉以上に意味を雄弁と語っていた。
7歳の時から、シヴァは誰にも苦悩を打ち明けたことがない。本来ならばそこに居るはずの母や父にも頼ることが出来ず、全ての感情を自分1人で処理してきたのだ。
しかし、呪いを受ける前なら、このような感覚に覚えがある。今となっては朧げな記憶だが、それは確かに、シヴァを怪物と見間違えざるを得なかった父母の手と胸の感触だったように思う。
「……やっぱり、お前は優しい奴だな」
普段ならもうちょっと煩悩が前のめりになりそうだが、今回ばかりは素直に身を委ねることが出来たシヴァは、氷が融けだしたかのように心が軽くなり、そのまま口まで軽くなってきた。
「なぁ……だったら慰めついでに愚痴でも聞いてくれないか? 今まで色々あったんだけど、誰にも愚痴った経験なんて無いんだよ」
「…………」
小さく頷くセラ。そこからシヴァは、自分が伝説に語られる《破壊神》であるということを含めて所々の詳しい事情を伏せながら、月明かりが浮かび上がるまで色んなことを語り明かした。
つい最近までこの身に巣食っていた呪いのせいで両親だけではなく、出会う人々全員から魔物扱いされていたこと。
生きて無事に呪いを解呪する為に旅に出たは良いものの、行く先々で殺されそうになったこと。
窮地を切り抜ける度に、より強い奴が自分の命を狙ってきて、それが延々と繰り返されたこと。
弱いままの者が悪で、勝者だけが生きる権利を得るような場所で生きてきたこと。
死にたくない……ただその一心のみで、必死になって強さだけを求めなければなかったこと。
そして……辿り着いたその先には何もなく、ただ孤独と敵だけしか待っていなかったこと。
今まで本当は誰かに聞いてもらいたかった事、少しでもいいから自分は悪くないと言って欲しかった事、それらをあらかた吐き出すと、シヴァは少しすっきりした表情を浮かべる。
「まぁ、俺の話はこんなもんだな。世の中には俺より悲惨な奴がごまんといると思ってやってきたけど……うん、やっぱり、誰かに慰められるってのはいいもんだなぁ。ちょっと前まで、見知らぬ子供が母親に慰められるのを見て妙な気持ちになったもんだけど……そうか……あれは羨ましいと思ってたんだな」
「…………」
セラの両腕に力が籠る。それを感じたシヴァは苦笑してから、長い前髪の奥に見え隠れする翡翠色の瞳を見上げて、何時ものように笑って見せた。
「大丈夫だ、セラ。お前のおかげで、俺はもう大丈夫。明日も俺は、頑張っていくから」
窓から差し込む月の光が、孤独だった少年と少女をいつまでも照らしていた。
ロリっ子がバブみを出すっていう発想はすごいと思うんです。その結果が、ヒロインに残念な子として、「私がついてあげなきゃダメ」と思われるような破壊神の誕生だとしても。
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