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あまね日和  作者: アサオ
3/10

そこから始まる初めてを


「――改めまして、私が私立秋祝高校三年、料理部部長の桜谷希織!好きな食べ物は大福!嫌いな食べ物はキムチ!彼女は大絶賛募集中です!」


「彼女募集中って、あなたねぇ……」


「いいじゃんかよー。私だって美少女とお手て繋いで登下校とかしたいんだよー」


「はい、はい……それで私が副部長の姫宮姫。三年よ」


「そして私が藤崎由来美です!ゆらみんって愛を込めて呼んでください!」


「……料理部って三人しかいなかったのか?」


「それなら問題ないぞかりん君!なんてったって今日から五人だからな!」


いや、なにが問題ないのかわからん。俺としては人の名前を覚えるのが面倒臭いから少ないに越したことはないんだが……なんとも濃いメンツだな。特に桜谷さんと藤崎のテンションが無駄に高い。


「そんなわけで!かりん君にかりんちゃん、今後ともよろしく!」


「あ、は、はい!よろしくお願いします!」


元気に挨拶する転校生の黒澄。


「と、そのまえにかるーく面接しましょうか」


「……面接?」


「面接ですか?」


俺と黒澄は揃って首を傾げた。


「なんですかそれ?」


「そんなのあったの?」


おまけに藤崎と姫宮さんも首を傾げた。


「そう、面接!フッフー、君達、我が料理部が今まで何故三人だけだったかわかるかね?」


無難に人気が無いとか何じゃないのか?いや、でも、なかなかにこの料理部のレベルは高い。料理のレベルではなく女の子のレベルがだ。三人揃ってそこらの女子なんかよりは数倍も美人だし可愛いと思う。それなのにも関わらず部員が三人呑み、んーむ…なんでなんだろうか?


「はい!部長の頭がおかしくてみんな「部長にはついていけません!」って、逃げっていったからです!」


謎は全て解けた。おまけに桜谷さんの彼氏(彼女)がいない理由もわかった。


「何言ってくれちゃってるのよーゆらみちゃーん。やめていったゴミどもはただ単に料理部との相性が悪かっただけよー」


「……ちなみにやめってたやつはどれくらいいるんだ?」


「確か、一昨年は男子が32名、女子が15名。去年は男子38名、女子8名。そして今年は男子21名、女子5名。合わせて男子が91名、女子が28名辞めていったわね。みんなだいたい「部長(桜谷さん)にはついていけません!」だったわ」


姫宮さんはすらすらと今までの経緯を正確に説明していく。


しかし、とんでもない数だな…。三年間でざっと119人。甲子園常連のやたらめったに厳しい野球部じゃあるまいし…そして、部活を辞めていく理由が揃って「部長にはついていけません!」って…桜谷希織――一体どんな人なんだ?確かに無駄にテンション高いし頭がイカレてそうだが…そんなに問題あるのか?


「そんなわけで面接をしようと思ったわけよ」


推測するに入っても直ぐに辞めるような奴かどうかを判断するために面接をしてどんな性格なのかとかを見極めるつもりだろう。



++++++++++++



「それでは、戸塚凜次郎君あなたはこの部長が自ら面接します!」


「……よろしく」


目の前には料理部部長の桜谷希織。俺は桜谷さんが、黒澄は姫宮さんが面接をやることになった。ちなみに藤崎は用事があるからと言って先に帰った。今日はもともと俺と黒澄を紹介したら直ぐに帰るつもりだったそうだ。


「んー、そだねぇー、まずはなんで料理部に入ろうと思ったのかな?」


この部長のことだから変な質問してくると思ったんだが、案外普通だ。


「料理が出来るようになりたかったから」


「ふーん…それはなんでまた?きっかけはなにかあったのかな?」


「藤崎の手料理が上手かったから、俺も出来るようになりたいと思った。それだけだ」


「なんと!ゆらりんの手料理を食べただと!?どうゆうシチュエーションで食べたんだこのやろー!」


「今日の昼休みに教室で」


「なんだ!?お弁当か!?お弁当ですね!昼休みの教室で二人向かい合いあって、彼女の手作り弁当を、はい、あーん♪とかやってたんだろ!このリア充め!すげぇうらやましいんですけど!」


「…………」


なんてゆうか…この部長は微妙にオッサンくさいと、そう思った。

「……そんなことばっかり言ってるから恋人いないんですよ」


「あははは…細かいことは気にしなーい…」


部長は顔を引き攣られて渇いた笑いを浮かべた。


「気を取り直して次の質問!」


「…………」


「かりん君、ぶっちゃけ誰が好みなん?」


「……はぁ?」


「もし、このまま滞りなく進めば部員は5人。私、姫、ゆらりん、かりんちゃん、かりん君で女の子4人に男子が1人だよ。しかも、その4人全員が美少女だぜ!君は自分がどれだけ満たされた環境にいるか理解しているのかね?」


「……桜谷さんは美少女の自覚があるんだな」


確かにそこらの奴らよりは遥かに美少女ではあるが、普通、美少女は自分のことを美少女とは言わない。絶対に言わない。俺はそんなやつ美少女とは認めない。


「あはは…いやー、確かにみんなと比べるとあれだけどさー…私って可愛くないかな?」


「……俺に聞くな」


「あはは…そうだよねぇー……――って、ちゃうわー!今は私が可愛いか可愛いくないかなんてどうだっていいんだよー!今はかりん君だから!で!かりん君は誰が好みなの?美少女かりんちゃん?元気娘ゆらみん?それともクールビューティー姫宮姫?さぁ!白状しちゃいなさい!」


「…………」


――さて、どう答えたものか……、誰と言ってもこの部長のことだ、ギャーギャーと騒ぎ立てて面倒臭いことになるだろう。かと言っていないといっても結果は同じだ。そうだな、ここは――。


「……俺は桜谷さんみたいなのが好みです」


「なんと!私か!?並み居る美少女軍団を差し置いて私か!かりん君、君はそれでいいのか!」


「……まぁ、たまたま桜谷さんが俺の好みだったから」


「……あ…………えーっと……そのぉ……………………」


「……どうしたんだ?」


「い、いや!別になんでもない!」


「…………」


「…………」


それから桜谷さんは暫く黙って考え事を始めた。しばしの沈黙。


「……まぁ、合格かな」


不意に桜谷さんが沈黙を破り呟いた。


「はい、これ」


桜谷さんはどこからともなく一枚の紙を取り出すとそれを俺に差し出す。


「……これは?」


「入部届けだよ。これに名前書いたら君は晴れて料理部さ!」


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