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王国歴千八年春の終月第四週火の日
今日は食材集めの外班だったからローラに贈る物を探しながら街の外にある森に行ったの。
森の中ではみんなそれぞれ秘密のとっておきの場所があって、始めに一緒に採集をしてからは自由探索になった。
私は川を飛び越えて滝の陰になっているところで水草の実を袋にいっぱいとってから前の嵐で崩れた崖の下を探すことにした。
こういうところにはたまに綺麗な石が落ちてることがあるからじいっと斜面を見ていたらふっと影が落ちてきて、シアンの声がした。
「何か探しておるのか?」だって、相変わらずおじいさんみたいな話し方。
シアンはね、私を産まれた村からこの孤児院に連れてきてくれた人なの。
それからたくさん寄付をしてくれて、たまにこうやって私に会いにきてくれる。
孤児院に余裕があるのもシアンのおかげだって院長先生言ってた。
ローラの事を話したらちょっと考えて、
「なら、これはどうだ?」って前に私にくれたのとよく似てる、濃い青緑色の平ぺったい石を渡してくれた。私のよりちょっと色が薄いけど、とっても綺麗。受け取ってお日様にかざして見てたら空を二匹の竜が飛んでいくのが見えた。薄紫色の竜と銀色の竜だ。そのまま何処かに行くのかと思ったらしばらく上を行き来していたっけ。
私が着けているのと同じように首飾りにしたいって言ったら少し触ったかと思ったら小さな穴が空いててびっくりしちゃった。きっと魔法を使ったのね。
それから最近日記を書きはじめた事を言ったら読んでみたいって言ってきた。恥ずかしいから絶対に見せないけどね。それに私の秘密の文字だから読めないだろうし。
私の作った話を聞いてヒィが将来本を書けばいいって言ってくれた事を話したら、シアンが聞きたがった。古竜の話をしている間じぃっと私の顔を見てたけど、創世記と違うから嫌だったのかもって、聞いて見たらそうじゃないって。
そのまま一緒に戻ったらみんな嬉しそうな顔になった。シアンの来た日はいっつもご馳走になるからよ。
帰り道では屋台やお店でみんなが食べたいって言ったものをシアンがどんどん買っていくから持ちきれなくなって、ついには荷車まで買っちゃった!孤児院にくれるんだって、シアンすごい!
ラインお兄さんがすみませんって言ったら「子供が気にすることでない」だって、あんまり年も変わらないように見えるからなんか変な感じ。
うう、もう書くところがないけどいいや!書くことがいっぱいだから次にも書いちゃう!!
シアンはすごいの!背も高いし緑色の髪が綺麗だし、目は空や湖より綺麗な青色なの!!
魔法使いで空も飛べるし水の上にも立てちゃうし、できないことは無いんじゃないかな?
喋り方はちょっとおじいさんだけど、そういえば何歳なんだろう?院長先生は私を連れて来た時から変わらないって言ってたけど、ラインお兄さんよりちょっと年上に見える。
成人はしているんだろうけど、今度会った時に聞いてみようかな?
えっと、それで、背が高くて強いのよ。前に衛兵さんがシアンを見て身のこなしにスキがないって言ってたもの。
今日のご飯は机にいっぱい料理がのせられて、のりきらない分は台所に置かれて、院長先生に言われてみんなでお礼を言ってから食べたの。
その後ちょっと話したらすぐに行っちゃったから忙しい人なのかもしれない。
次に来るときは白紙の本を持って来るって、私のお話を書いて欲しいって言ってた。
今あなたに書く手を止めてローラの石に紐を通してみたの。上手に結べたから私の首飾りも外して並べてみた。これを渡したらローラとお揃いになるの!嬉しいな。
(青色と緑色を使って竜のように見えるいびつな動物が描かれている)
シアンの絵を描いちゃった。今度ここだけ見せてあげよう。
じゃあ、また明日。