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トゥールとアレセンシアの本  作者: 川島 蛍
9/17

アレセンシア国4

夜も更け林の中は少し肌寒くなりトゥールにとって初めてする野宿は自分の知らない世界でとなった。

しかし色々な事が一度に起こり混乱する頭の中を整理するにはこのぐらいが丁度いい気温に感じられた。

眠れず見上げた夜空は無数に広がる星達が自分の存在を知らしめる為に競いながら輝きを放ち空の向こうへと流れ落ちていた。

トゥールは空へ手を伸ばし星を掴む真似をすると溜息を吐き握った手のひらを開き起き上がった。

ミーゴは気持ちよさそうにイビキをかき豪快な寝相をしながら寝ていたが、トゥールはルアが居ない事に気が付くと近くを探しに出る事にした。

トゥールの足音が離れて行くのを聞きながらミーゴは目を開けそれをそっと見送っていた。

林の中を少し歩くと微かに水の流れる音が聞こえ更に奥へ入るとそこには川幅の狭い小川になっており狭いながらも流れはしっかりとした勢いのある水音が響いていた。

ルアは足を水につけ、ぼんやり川を眺めていたが月の下、輝く銀色の髪はトゥールにもすぐに見つける事が出来た。


「お前も…寝れなかったのか。」


ルアはトゥールの気配に気が付つくと川を眺めたまま話をした。


「うん…僕、野宿って初めてなんだ。でも、アレセンシアってとても素敵な所なんだね。星空も綺麗だし、最初にみた崖からの景色もすごかったんだっ…」


「…。」


隣に座り見たルアの横顔はどこか悲しげでトゥールには何だか辛さを隠した精一杯の表情に見えた。

雰囲気を変えようとトゥールは一生懸命話題を探しルアに質問したがこうした事に慣れていないトゥールは会話の弾まない結果になってしまった。


「ねぇ、ルアのお父さんとお母さんはどんな人なの?あ、えーっと、狼か!僕はねお母さんが小さい時に死んじゃってずっとお婆ちゃんと暮らしてたんだ。」


「父親は?」


「うん、父さんが手紙をくれてね、迎えに来てくれたんだけど、まだよく分からないんだ。ずっと離れて暮らしていたし、どういう風にすればいいのか何を話せばいいのか。」


「そうか。」


「それより、ルアは?ルアの家族は?」


トゥールとルアが話していると背後で突然大きく樹々が揺れガサガサっという音が聞こえると背筋が冷たく凍りつくような視線に気が付いた。

恐怖で後ろを振り返る事ができないトゥールは肩を震わせながら事が過ぎるのを願っていた。

一方ルアはすぐさま振り返ると視線の主を睨みつけいつでも飛び掛かる準備が出来ていた。


「そんなに怖い顔しないで下さいよ。」


落ち着いた口調でそう言いながら顔を見せたのは肩幅が広く背の高い男だった。


「何しに来たっ!!」


緊張感が高まる中、ルアは険しい表情をしながら男へ問いかけた。


「まあまあ、落ち着いて下さい。今日はご挨拶ですよ。あいにく腹は減っていないんでね、すぐに取って食おうなんて思っていませんから。」


「挨拶だと!?今すぐに消えろっ!でないと喉元を噛みちぎってやるっ!」


「ああ怖い。それでは帰るとしますか、そこの坊ちゃんにも宜しくお伝え下さい。では。」


男はニヤニヤと笑いながらそう言うと夜空へ真っ直ぐ飛んで行ってしまった。



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