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パネ子ちゃんの憂鬱  作者: 鬼影スパナ
廃村宣言
6/50

第4話 闘技場通い


 村の名前が『Lv4廃村』から『Lv5廃村』になったのに合わせるかのように、闘技場に通う私のLvも1から2にUPしました。

 最初は大変だった闘技場ですが、今では嫌いではありません。

 ただ、未だに不思議に思うことがあります。

 闘技場ではモンスターと戦うわけですが、初戦でゴブリン、ワーウルフみたいな弱いやつと戦ったかとおもったら、その次はドラゴン二連戦とかだったりするんですよ。

 わからない。まったくさっぱりわからない。

 まるで、そう。プレイヤーさんの言動みたい。

 そう思うと、余分な力が抜けて、体の底から不思議と力がふつふつ沸いてきます。

 そしてその力を目の前のモンスターにぶつけるのです。


「うおりゃぁあああー! 巫女さん舐めンなぁあ!!」


 私の繰り出した右コブシは、ドラゴンのどてっ腹を突き上げ、その巨体を1mほど空中に浮かせました。

 散策や闘技場で鍛えた足腰×プレイヤーさんへの不満の力が生み出す破壊力はまさしく太陽が昇る如し……

 これぞ必殺、『みこみこアッパー』です。

 本当はライジングサンとかグレートサンライズとかカッコいい名前をつけようとしたのですが、プレイヤーさんに「みこみこアッパー以外認めない」と言われてしまったのです。

 もちろん、プレイヤーさんをみこみこアッパーの餌食にするわけにはいかないので、こうしてかわりに闘技場でドラゴンをぶちのめしているわけです。


 うん、闘技場は嫌いじゃないです。ストレス発散できるので。

 というわけで、ドラゴン二連戦にも結構余裕で勝つことができました。


「はー、はーっ……ふぅ、すっきりしました♪」


 私が出場口の門に戻ろうとすると、がらがらの観客席からぱちぱちと一人分の拍手が聞こえます。


「パネちゃん、最近はますますスゴイわね」


 そこには鬼人ジト目勇者こと、シャーロットさんがいました。


「シャロさん!」


 愛称は縮めてシャロさんです。

 はい、私が最初に行ったあの『新しい村』の勇者の、です。

 シャロさんがなんでここにいるかって?

 簡単に説明すると2行です。


 お互い死ぬかと思ったけどお互い死ななかった。

 お友達になった。


 はい、2行です。でも、この2行は私たちにとってとっても重大なことでした。


「……このパネちゃんに来られてたら、私は何もできずにやられてたわね?」


「はい、Lv1と2の違いを体感してますよー♪……なんていうか、2倍以上ちがいます」


 そうなんです。Lv1から2になったときにプレイヤーさんがボーナスPというものを割り振ってくれました。

 LvUPで得たボーナスPを割り振った分だけステータスが強くなるわけです。

 ステータスにはHP、攻撃力、防御力、回復力、統率力があります。

 速度や積載量というステータスもありますが、これにはボーナスPを割り振ることができないので無視です。

 私は兵士たちを率いてみたいなーということで統率パラメータに振るのをを強く希望したのですが、プレイヤーさんが強引に攻撃を700にして残りを全部防御につぎ込んでしまいました。いかにもテキトーといった感じで。

 どうせテキトーなら少しは勇者の希望を聞いてくれてもいいと思うのに。まったく。


「まぁ、おかげで闘技場はらくらく勝てるんですけどねー……けど、ねー?」


 ちなみにLv3になったら今度は回復に全部とか言ってます。

 あーあー、思い出したらふつふつと怒りがこみ上げてきました。

 ……よし、次のみこみこアッパーのネタはこれにしましょう。


「パネちゃん、ちょっと顔が怖いわよ」

「おっと、いけないいけない。」


 今はシャロさんと一緒に休憩時間でした。


「クッキー作ってきたの。食べる?」

「はいっ♪」


 シャロさんのクッキーはおいしくて大好きです。

 戦闘で疲れた体に甘さが染み渡ります。


「疲れが取れるおまじないに、黒胡麻とハチミツを混ぜてみたの。どうかしら?」

「とても良い感じですっ、シャロさんのお料理Lvはもはや3ですね!」


 ぐっ、と親指を下に向けて突き出します。


「パネちゃん、それ上下逆よ。意味としては……そうね、プレイヤーさんにやってあげたらいいとおもうわ?」

「えう!? そうでしたかっ!?」


 よくわからないけど、失礼な意味だったんですね。今度プレイヤーさんにやっときましょう。

 私は改めて親指を上に向けて突き出します。


「ふふ♪」


 シャロさんは微笑んで、紅茶を一口のみました。


「ところで、シャロさんって黒胡麻とかハチミツとか、どこで手に入れてるんですか? ……その、村の食料はうちの兵士がすっからかんにしていってると思うんですが」

「彼らはちゃんと私たちが食べる分は残していってくれてるから大丈夫よ。もっとも、このクッキーに入ってる黒胡麻とハチミツは私が近くの森林で見つけたものよ」


 最近、シャロさんは村の外に散歩にいくことが増えたみたいです。

 まぁ、おかげでこうして闘技場の休憩時間で優雅なティータイムができるわけですが。


「自分で見つけたんですか。……あの、ハチとか大丈夫でしたか?」

「魔導書に書いてあったハチ採りの儀式をしたからね。魔方陣を書いた紙をたくさん燃やさないといけなかったけど」


 ふふん、と自慢げなシャロさん。

 それで無傷でハチミツを採れたということは、実際に効果があるもんなんですね、儀式。侮れない。


「今度詳しく教えてもらおうかな?」

「儀式は魔術の才能が必要だから、パネちゃんにできるかは分からないけど……」


 それでもいいのなら教えてあげる、とシャロさんは言いました。


「はいっ、それじゃプレイヤーさんをぎゃふんといわせる儀式とかお願いします!」

「う~ん……そういうのは無いと思うわ」


 むぅ、それは残念です。


「そろそろ次の準備したほうがいいんじゃないかしら?」

「そうですね。えーっと、次の相手はー……」


 対戦表をみました。


 『ラドン(ドラゴン上級種)』


「…………わぁい」

「強敵ね。がんばって、お祈りしてるわ」



 あっさりまけましたー



「なにあの紫のドラゴン!? 毒? 毒ドラゴンなんですか!?」

「強かったわね……今度毒消しの術符作ってあげるわ」

「ぜひお願いしますっ」


 こうして、私は今日も闘技場に通います。

 私がラドンに勝てるようになるのが先か、プレイヤーさんが村を廃村にするのが先かは分かりませんが、

 とりあえず5戦目も終わったし、プレイヤーさんに報告に帰るとしましょう。


 5戦目負けたことについて何かといわれると思うので、その際に親指を下に向けるのを試してみようと思います。


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