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27話 変化

「ーーーやっと行ったか」


流石に辛い、火球・氷の槍・水の鞭・カマイタチ・土の刺、それぞれは簡単な魔法だがそれを休む暇無くかれこれ10分近く放っている。なのに魔族の女は平気な顔をして俺を迎撃する。でも関係ない俺はアイツらが逃げきるまでコイツを押さえればいい、その結果自分が死ぬことになっても。


「……まだそんな目が出来るのね、《《使徒》》は……」

「俺は守らなきゃいけない」

「………勇者とは長いの?」

「? 一週間位だが?」

「ーーーたかが一週間で命を張るの?」

「なにを言って……」


あ……れ……? タクトとユミは同郷の人間で2歳下で高校に通っていれば後輩だ、だから確かに普通以上に親しくはしていた。

だけどそれでも一週間だ、魔族が現れた場面。いつもの俺なら死にたくないからみんなと一緒にどうにかして逃げようと考えたはずだ。なのに俺は考える暇もなく自分の命を使い相手を止める選択をした。


「なんで……、俺は?」

「! まさか判るの!?」

「逆にお前は今の俺の状態に心当たりがあるのかよ………」

「ーーー初めてよ貴方みたいにちゃんと自分を取り戻したのは……、でも」


一瞬にして魔族の周りに数々の魔法が浮かんでいる、形はさっきまで使っているのと変わらない。だが中身は全くの別物だ。

ーーーあんなの喰らったら消し飛ぶぞ………。

思わず頬がひきつる。そもそも俺はこんな『俺に構わず先に行けぇ!』みたいな事をするキャラじゃないんだぞ! むしろ死にたくないから逃げようと提案する位だ。 なのに《《使徒》》とか言う奴のせいで何故かやる気が出てくる。

ーーー気持ち悪い……、自分の感情じゃ無いのが無理やり入り込んでくる感じがする。


「ーーーくそ!」

「ごめんね、でも貴方がアイツの使徒である限り脅威になりかねない……」

「だから使徒ってなんだよ!」


魔法を、避けながら叫ぶも無視。

しばらくして疲れてきたのか相手の弾幕に隙間が出来た。


「くっ、いっけぇ!」


隙間に入り相手を見る、すると既に俺に向けて魔法を放とうとしている姿が見えた。


「!?」

「ーーーこれで」


ヤバいヤバい! どうする!? 。

足下はいつの間にか水に濡れていて踏み込めば足を滑らせそうだ。かといって構わず前に進んでも既に次の一手を用意してるはず………。

なら助かるには後ろに下がるしかない。


「ーーーこんな所でぇぇぇ!」


俺は数歩先に氷の魔法を打ち込む。形は先端は尖っていて頭は平らな丸が付いている。つまり釘だ、氷の釘を打ち込んだ。

その氷の釘の頭を足で踏み後ろに無理やり反転した。何とか魔法の範囲から逃れると耳を押さえたくなる程の爆発音が聞こえた。

でもこれはチャンスだ、辺りは砂埃で見えない状態。ヘリック達も逃げ切ってる筈だ、後は気配を消し逃げるだけーーー。





これで殺ったはず……、かなりの魔法を叩き込んだ。それにあそこら辺一帯は水の魔法を多様したから地面がぬかるんでるはず。


「………初めてだった」


初めて使徒になった人間が正気を取り戻した、だけど使徒になった時点で《《女神アルテミシア》》との繋がりがある。


「ーーーだからしょうがないの、ごめんなさい……」

「奴はまだ生きてるぞ」

「え?」


いつの間にか隣にいた黒髪の短髪の男がそう言った。


「ゲイルさっきの攻撃は避けようが無いわ」

「ふむ………!!」


ゲイルは何かを感じたのか籠手を着けた右手を背後に向かって振った。


「む!」

「な、なんで!」


籠手に何かが当たった音と共に現れたのは使徒の男だった。でもどうやって避けたの? 方向を変えるにしてもあの足場じゃ……。


「ーーーあれ?あの子は?」

「……消えた」


ほんの一瞬の間に消えた、元々そこに居なかったみたいに。探知系の魔法を掛けてみたが反応は無し、あの子も魔力はそろそろ限界に近い筈だからそれのせいかもしれない。


「ーーー探知には掛からないわ」

「こっちも何も感じない」

「それにしてもビックリよ、あの攻撃を避けたのもそうだけどゲイルの背後を取るなんて」

「攻撃は軽かった、恐らくは意図的に人の意識から外れる事が出来るのだろう」

「どゆこと?」

「つまり正面から見ていても、いつの間にか視界から外れる……。そういう事が得意なんだろう」

「厄介ね……」

「あぁ、次あった時はわかってるなユリア?」

「………えぇ、わかってるわ」

「ならいい……、戻るぞ」


その言葉と共にゲイルはゲートを開く、ゲイルはさっさとゲートに入り帰っていった。

ーーーきっとあの子とはまた会うだろう、勇者の近くにいる限り、使徒である限り……。


「すべては魔王様の為に………」



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