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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第2章-ツペェア-
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湖の都:ツペェア

 ツペェアは生前で言うベネチアのような水の都だった。

 というのも"息子さん"曰く、湖の中心に島があってそこから発展したのが始まりだという。


 なるほど、湖の中心の島が首都ならば攻めにくく守りやすい。

 極端なことを言えば、湖の上に人口島を切り離して島に引き篭もるという芸当も出来る。

 なんてことを聞いてみれば、過去にそんな芸当は何度もあったようだ。

 

 周りが敵だらけのなか、宮廷魔術師という戦略兵器が街に入り敵軍隊を壊滅させる。

 なるほど、だから高火力ならばそれだけ重用されるのか。

 そして、裏切りなどが起きないように金銭的にも溢れるほどの額を支払われ、女という異性に手を出し放題。

 もちろん、女性宮廷魔術師であれば男性に手を出し放題……、というわけでもなくそこら辺は難しいらしい。

 

 俺も、そんなものは知りたくない。

 で、有事の際の戦略兵器だというのも国民は知っているため、解体とかを叫ぶ(やから)は皆無。

 叫んだ結果一人でも減ったため、首都が落ちて、奴隷落ちされた側は笑えないしたまったものではない。

 俺なら叫んだ馬鹿を血祭りにあげる。


 そういうことも分かっているのか。

 誰一人として声をあげないようだ。


 さて、ツペェアに着いてザクリケルニアではスルー出来た、入街審査を行う。

 ほぼ顔パスの荷馬車の人夫婦と、ちょっと時間を掛けていたが"息子さん"が、上級人物ということで逆に畏まられていた。


 よくわからないけど凄いな上級って。

 物語でよくある冒険者ランクに上級とかの括りだろうか。

 そして俺たち。

 セシルはザクリケルニアのキュリア家ってことでスルー。

 当然の事ながら怪しい風体の俺とエルリネが引っかかった。


 フロリア家と言っても、隣の国の貴族だ。

 通じるはずがないし、無断入国者だ。

 寧ろひっ捕らえられる。

 どうしたものかと考えていれば、"息子さん"が俺を勝手に「宮廷魔術師の門を叩きにきた男の子だよ」と説明した。


「なに、勝手に説明してんだよ!」と問い詰めようとしたところ、「いいからいいから」と笑いながら、審査官と話を進める。

 言っていることを要約すれば「俺が認めるほどの強さだし、もしかしたらもしかするかもしれない。そんな人物を怪しいからというだけでほっぽったら、この国に取って損だよ」といいのけていた。


 なる気はないし、そもそもキュリア家の者だと言えば訝しげに見られながらも通れたのにと"息子さん"に言うも、アハハハと笑うだけで取り合わない。

 荷馬車の夫婦もアハハハと笑う。

 俺は笑えない。


 で、審査官から言われたことは、やっぱり。

「実力示してください」

 当然である。

 いくら上級が凄くて、上級が褒める人物だとしても非常に胡散臭い。

 近所の子供にお世辞を言うものだ。


 ただ、こう言われてしまっては今更「キュリア家の者です」とは言えない。

 だから嫌々ながらも実演する。


天雷(ディヴァイン)裁終の神剣(オーバーシューティング)」を撃ち込んだら、名実共に宮廷魔術師狙いになる。

 それは御免被りたい。

 学園に行けなくなるのはメリットだが、貴族生活やハーレムというデメリットがデカすぎる。


 となれば、あからさまにデカいのは使わない。

 残るは「凍結の棺」などの低級魔法だが、これは相手がいて初めて現象が分かる。

 中級に位置する「雪山の吹雪(クレバスストーム)」ならば、ある程度分かるだろうか。


 考えるよりも使おうということで「雪山の吹雪」を使う。

 よく一寸先は闇というが、こちらは一寸先は吹雪。

 どっちも全く見えないという意味で、同意語だろうか。

 横殴りの牡丹雪などの雪で、視界を遮りながら、同じく横殴りの鋭い雹で直接ダメージを与えるものだ。


 この世界の攻性魔法の基準が分からないが、多分きっと見たことがないと思う。

 この七年間、雪というものを見たことがない。

 いや、冬というものを感じたことがない。

 少なくともあの村の環境を敢えて四季で例えると、春だ。

 ぽかぽかする陽気だった。


 ザクリケルがどうだかは知らないが、カルタロセの隣国だ。

 大して変わらないだろう。

 なんてことを思考の端っこで考えながら見せつけたところで、入街許可を貰った。


「ぜひ門を叩いてくれよ!」とお墨付きまで貰った。

 だからやんねーって。




 審査官に1/100以下の実力を見せたところで、"息子さん"が「俺、要らなくね?」とどんよりした顔つきで、聞かれた。

 どう、答えればいいのか分からない。

 とにかく、黙っていれば「何もしないでお金を貰っただけじゃないか……」と更に暗くなっていく。

 チートありきの俺だから仕方がない。

 俺からは声を掛けられない、下手をすれば地雷を踏み抜く危険性がある。


 その様子を見ていられなくなったのか、荷馬車の夫婦のうち奥さんのほうが、励ましていた。


 それからツペェアを体感一時間ほどを使って、目的地に到着した。

 そこは、荷馬車の夫婦が経営する、肉と野菜などを売るお店だった。

 元々はいわゆるしがない回復薬(ポーション)屋だったらしいが、旦那さんの友人が趣味で作った野菜を申し訳程度に店に置いてみたら馬鹿売れ。

 折角だからということで、肉も置いてみたらそれも馬鹿売れ。

「麻薬的な中毒を起こしているのか?」と思って食べさせて貰ったが、『蠱毒街都』は何の反応も示さず普通に食えた。


 ということで、このツペェアへの旅はあっさり終わった。

 家を借りるまでの資金を手に、夫婦と別れた。

 その後"息子さん"と世間話をしながら、ツペェアを回ろうとしたところ「俺、こっちに用事あるから!」と言って駆け出して、あっという間に雑踏の中に消えた。

 そういえば"息子さん"の名前を聞いていなかった。

 今度、もし会ったときでいいか。



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