F18 A②
※警告※
割りと胸糞展開あります。
また、過大なネタバレ含む可能性があります。
お嫌いな方はお戻りください。
そんなわたしたちの国に向かおうとしている、人族と獣人族の集団、群れが成されている。
エルさんからの情報曰く、また『勇者』なるもの複数人いるという。
また『勇者』か。
虹持ちとやらなのだろうか。
どちらにせよ、わたしたち魔族に害をなすのであれば、殺すだけ。
洞窟に迷うこと無く入った。
目的はやはり、わたしたちの国のようだ。
お父さんが作った、迷宮に侵入される前に殺すことにする。
獣の姿で妹と共に奥地に向かう。
そして、奥地で『勇者』どもを目の前にした。
獣が人語を解するのは、驚嘆するのだろう。
この『勇者』どもも、一様に驚いていた。
芸がない。
懇切丁寧に獣人族が、獣魔族のことを説明する。
但し、言葉の切れ端に厭味が混じる。
魔族なんぞに心と身体を許した、穢らわしい獣人族の親を持つ者だという。
わたしが生まれた頃は、魔族も人族も、獣人族もみな手を取り合ったというのに。
なぜこのようなことになったのか。
ただ、一つ言えることは、わたしたちはもう帰れない人族や獣人族と手を取り合って、協力するということはできない。
いつ、手の平を返されるか。
お父さんは無償の愛をわたしに教えてくれた。
だから、お父さんにもし騙されたとしても、わたしは許せる。
でも、お前らは許せない。
絶対に殺す。
喉を切り裂いて、胸を抉って死なない程度壊してやる。
壊して壊して生きながらにして食い殺してやる。
お前らの魔力を食って、更に『魔王』になってやる。
そのためにも、お前ら『勇者』は絶対に殺す。
異臭がしてくしゃみをする。
異臭とは即ち人族の発情の匂い。
目の前の男の『勇者』は、ちょっとだけ豪奢な服装の女と繋がっているようだ。
わたしたちは、好きな人と想いを遂げられないのに、こいつらは想いを遂げている。
吐き気を催す。
わたしが想いを遂げられないだけではない。
わたしたちの国に戦争を吹きかけたとき、魔族を使いやがった。
あのときの魔族にも家族がいたのに、こいつらはのほほんと子作りをしていた。
許さない。許せない。
絶対に殺す。
魔族は生きているんだ。
お前らだって、家族が殺されれば悪鬼のごとく怒るのに、わたしたちには怒るという牙をもいで、わたしたちの国しかまともに魔族がいないのに。
女の方を生殺しにして、生きながらにして食うか。
それとも……、妹の方陣を使うか。
そう、思って妹を見れば、最早妹が使う気であったようだ。
妹が既に仮展開している。
あの『勇者』らについては任せよう。
わたしはそれ以外の『勇者』たちを睥睨する。
「…………、」
驚いたことに、発情または子作りをした匂いが複数する。
臭い。
許さない。
妹に情報を伝える。
全員嬲り殺しすると。
嫉妬かもしれない。
だが、まぐわった上でわたしたちの前に現れるなど、愚の骨頂。
愛する者と交わりたい、なんてものは魔族だって同じなのに。
お前らは……。
目の前の発情の匂いを漂わせた男が、私に微弱な魔力を当てる。
攻性魔法ではないようだ。
わたしに掛かっている「自動起動:魔力撹乱」が反応しなかった。
人族の男が驚いている。
何を驚いているかは分からないが、名前とレベルとやらが不明で種族というものしか分からなかったようだ。
レベルというものが何なのかは分からない。
お父さんに聞く必要があるなと、心のなかでメモをする。
それよりも、種族と名前が分かる魔法なんてものがあるのか。
これは怖い。
今後は即座に『勇者』を狙うことにしよう。
それとみんなにも伝える必要がある。
気になる種族について聞き耳を立てていれば、わたしは「ダークネス・ヴァルキュリア」で、妹は「シルバーリング・ヴァルキュリア」らしい。
"ヴァルキュリア"という単語が分からないが、"ダークネス"と"シルバーリング"はお父さんの"日本語"講座で聞いたことがある。
わたしは"闇"で妹は"銀"。
なるほど、言い得て妙だ。
体毛の通りの色だ。
となると"ヴァルキュリア"とはなんだろうか。
これもお父さんに聞こう。
妹は興味なさげに欠伸を一つ。
わたしも欠伸を一つ。
二人でふわあとおっきな口を開ける。
人の姿を取っていれば、はしたないとお父さんから注意を受けるが、生憎お父さんはいないし、そもそも今は獣の姿だ。
まだ、人族は話し込んでいる。
待ってあげているのは、わたしなりの慈悲だ。
このあとは嬲り殺しだ。
遺言ぐらいは待つ余裕はある。
『勇者』どもは「十中八九ネームドだ! このパーティーで二匹のネームドは危険すぎる!」とか、「数が少ない魔族を倒せば、俺達の名が上がるぞ」とか、退却と戦闘の意見が半々のようだ。
『勇者』と思しき者が男女併せて四人。
それに併せて一般人と思しき者は二十人。
全員許容範囲だった。
下手すれば妹のみで二十人を殺せる。
それにこの場は広すぎず狭すぎず。
わたしたち二人の独壇場だ。
わたしたちの国に攻め込んできたのだ。
お父さんが言っていた言葉が頭の中で跳ねる。
"殺しているんだ。殺されもする"と。
それは、こいつらにも当てはまる。
攻めに来たんだ。
攻め返されるに決まっているし、それを覚悟していないのはそいつが悪い。
だから、殺す。
よし、そうしよう。
一先ず逃さないようにする。
部屋を『世界』で閉じる。
これみよがしに欠伸を、もう一度。
眠そうな顔、といっても獣の顔だけども。
『勇者』どもに伝える。
わたしは「今直ぐに選べよ」と一旦言葉を切って。
「わたしたちに一撃で殺されるか。嬲り殺されるか」
そして「来いよ、ブタ共」と妹が言った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
戦闘を開始すれば、今までの例にもれず『勇者』というものが弱かった。
わたし程度の速度に追いつけないだけで、ああも弱いとは。
追いつかないなら、追いつかないだけの一撃で狩るようにすればいいものを。
ネスとティーネなら圧倒的大火力と膨大な燃える魔力でわたしを捉えるし、エリーは消耗戦になってわたしは勝てないし。
人族は個々が弱いから、弱いなりに群れると聞いた。
それでもこの弱さは異常だ。
『歴史を垣間見る、不純なる昏い闇夜月』を使うまでもなかった。
だが、油断をしていると殺される可能性もある。
だから、本気は最初から出す。
それでも、肩透かしだ。
正直にいえば、幻滅した。
『世界を薙ぐ影なる灯火』で『重力刀』を指に装填させ、「砂鉄の剣」を同時起動。
総数十本の砂鉄の蛇が現れる。
それで男の『勇者』二人とそれに発情している女と、その『勇者』の仲間だと思われるものをひたすら切り刻む。
わたしが既に駆け抜けた中空を、すっとろい剣の閃きが舞う。
遅い、遅すぎる。
その間に連中の身体が、砂鉄の剣に切られたりしている。
奴らはもしかして、砂鉄の剣を駆除しようとしているのだろうか。
『世界を薙ぐ影なる灯火』を解除しなければ、砂鉄の剣は消えない。
ただの魔法ではないのに。
馬鹿すぎる。
お父さんと違って馬鹿すぎて困る。
同じ人族なのだろうか。
女が一人、砂鉄の剣に首を切られた。
血煙が舞う。
『勇者』の絶叫が響く。
わたしたち魔族を狩る人族が、一人また死んだ。
嬉しい。
もっと死ね。
お父さんを壊した奴はもっと死ね。
そうお前だよ。
そこの黒い髪と黒い瞳の人族。
殺してやる。
男女別け隔てなく、殺す。
人族、獣人族関係ない。
後ろで妹が暴れている。
お父さんから貰った"鋼糸"とかいうものを使っていて、正直に言えばわたしほどの脚と種族特性がないと共闘は無理と言われた。
お父さんも無理だと言ってたし、ネスもエルさんも無理って言ってた。
それぐらい、妹の得物は室内では最高に近いのだという。
妹が舞っている。
その動きに合わせて、鋼糸も舞う。
わたしと妹であれば見える細い糸。
洞窟の壁が寸断していく。
向こうで相手をさせられている『勇者』とその一行は、目に見えないほどの細さとその早さで鎧が寸断され、剣が折れていくのを確認出来た。
目の前で二人の獣人族が同時に死んだ。
剣で鋼糸を弾いたつもりだったのだろう。
今、この部屋にある鋼糸は何百本という具合である。
四、五本弾いただけだと思えば、ほかの鋼糸に貫かれたようで頭から血の塊流れでていた。
それに呼応するかのように鋼糸に捕まっていたようであった、獣人族が鋼糸を外せず膾切りされていた。
あの血の流れ方から、即死だろう。
もちろん、妹は鋼糸だけではない。
『人形機甲師団』で人形まで扱う。
属性に合わせた人形。
こんなに狭い室内で魔法をポンポン使う人形。
勘弁して欲しい。
妹の鋼糸と、人形が放ってきた風の魔力が掛かった槍のような矢がひっきりなしに飛んでくる。
私は避けるから良いものの、獲物が死んでしまう。
いや死んでいいのだけど、愉しみがなくなる。
だから妹に殺されないように、こちらも速度を上げて殺す。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
結局半時もしない内に殲滅した。
わたしの被害はなし。
『世界を薙ぐ影なる灯火』の「世界薙ぎの剣」まで出来なかった。
物足りない。
最後に残ったこの女の子(推定十三歳)に向けて「世界薙ぎの剣」を使おうか。
だが、心がへし折れている奴相手に使ってもつまらない。
弱すぎて不完全燃焼。
つまらない。
わたしたち魔族である『魔王』滅ぼす『勇者』ならば、もっとあるだろうと。
一思いに殺してやろうか。
そこでふと思った。
「助けてくれ」と言った『勇者』助けはしなかった。
当然殺した。
だが、こいつはどうだ。
「助けてくれ」と言わない。
ならば、こいつを助けたら『勇者』どもはどう思うか。
決めた。
こいつは助けよう。
命までは取らないでやろう。
ただ、このまま放逐するのは仲間を呼ばれる危険性がある。
そうだ。
お父さんとこいつは共通の人族だ。
話し相手になって貰おうか。
いや、人族は魔族を捕まえて犯して殺した。
ならば、この人族には孕み后となって貰うか。
ネスが確か奴隷紋を仕込めた筈だ。
奴隷紋仕込んで、孕み后になってもらう。
人族がやったことは許せないし、殺したいが無抵抗の人間を殺るほど、わたしは狂ってはいない。
わたしはお父さんの、いえご主人様の番犬なのだから。
歯向かない奴相手には、穏便にしたい。
人族と違い殺さないし、最低限の生活は出来るようにして貰う。
お父さんも先の戦争で、捕虜奴隷もある程度生活出来る村を作っていた。
その村にこいつ入れてもいいだろう。
駄目なら、ティーネにでも渡して殺して貰うし、魔族の子どもたちの魔法の的になって貰うのもいいだろう。
よし、連れて行こう。
で、妹を見れば妹の方も終わったようだ。
豪奢な姿をした女が、長剣を片手に泣きながら『勇者』を何度も刺し貫いていた。
相手を操るなんて狂ってないと中々思いつかない。
でも、それを先にやりだしたのは人族だ。
大陸を旅している間に、何度も見た光景。
助けに行きたくても力がなくて、出来なかったあの頃。
黒い体毛と黒い瞳を持つ男女が、溢れるようになってからそうやって魔族を殺していく姿を何度もみた。
きっと、それが妹の心に残ってしまったのだろう。
だから、こうしている。
誰かの所為だって言わないけども、人族がやったからやり返しているだけなんだ。
寧ろ実行している数が少ないのだから、文句を言うのは自分たちの先人に言って欲しい。
妹がわたしに気付く。
妹が何か言う前に「これは孕み后にするから」と先手を打つ。
すると、興味を失ったように泣きながら長剣を持っている女に向き直り「ねえ、気分は? ねえ、気分は?」と聞いている。
中々えげつない。
ふと脇をみれば、女の『勇者』がズタズタにされながらも息をしていた。
生きているので、こいつも孕み后にしよう。
回復したあとに生きながらにして食うのもいいだろう。
無限の可能性がいっぱいだ。
愛しの『勇者』様を殺した豪奢の女はどうしようか。
孕み子としては価値がない。
捕虜村の女として投げ入れるのもありかもしれない。
殺されるか、姦されるか。
それは知らない。
連中の人間性に任せよう。
さて、茫然自失している豪奢っぽい女と、『女勇者』と女の子を回収したことなので、わたしたちの国に戻ることにする。
今日も一杯殺した。
お父さんに妹と一緒に褒めてもらおう。
そして、わたしたちは国へ戻る「転移魔法」を使用した。
妹は白銀の鋼糸が、妹と豪奢な女を覆い、そして消えた。
わたしのほうは女の子と『女勇者』を抱え、墨汁とかいう黒い液体が壁となりわたしたちを覆った。
そして、気付けば王宮内だった。
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