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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第1章-成長-
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十全の理

 姉さんを守りたいが故に軽く望んでしまった。

 そのお蔭で起動してしまった、例のユニーク魔法。

 設定上のネームは【十全(じゅうぜん)(ことわり)】。

 派手に出現するような設定にはせずに、淡々と『十全の理が起動した』と設定した筈なのに、派手に出現した。


 形状は俺の身体をゆうに超える大きさの魔法陣が複数並び、最小でも俺の頭ぐらいの魔法陣が全て連結している。

 全体を平面で並べれば、日本の基本的な大きさの2階建ての家を遥かに超える大きさだ。


 厨二病であれば誰もが夢見る魔法陣。

 かくいう俺も高校生のときはひたすら書いた。

 コンパスと定規と鉛筆で。

 黒歴史ノートに挿絵よろしく、ひたすら書いた。


 その魔法陣を全て魔力パスという名称の線を設定にして高校3年間書き連ねた魔法陣のそれぞれを意味なく。

 ただ、隙間なくそれでいてくどくない程度に繋ぐ。

 結果、できちゃった魔法陣の大きさが実家の高さを超えた、具体的に言えば高さ17m超。

 そのできちゃった魔法陣が今、俺の背中に現れている。


 ただ、ありがたいことに、それぞれを魔力パスという名の線で繋げてはおらず、単体の魔法陣。

 一応それぞれの魔法陣には設定上では意味があるが、この世界では過剰すぎる内容だから割愛しよう。


 光の線、つまり俺の純度100%魔力の線で描かれており、キラキラと光り輝く見ている者を魅了させる、最高の形状、最高の描写。

 そんな代物が俺の背中に現れた。


 ◇◆◇◆◇◆


 化け物のような魔法陣が今起動している。

 設定にこれの解除方法は記載していない。

 つまり、ほっといても起動したままということだ。

 今のところ、設定させたものは設定したままで発現している、つまり発現した十全の理に設定したそれぞれの効果が発生していると見ていい。


 実際、姉さんが起き上がって俺に話を聞こうとしていた雰囲気は感じ取ったが、某魔法陣の弱化された自動迎撃が発生していた。

 つまり姉さんは魔法陣の能力によって、姉さんが不自然に思わせない形で昏倒させられたのだ。

 この場では助かったが、今後発生する度にこれでは危険なので、この世界で十全の理の制御が出来るようになったら、即設定する必要がある。


「困ったなぁ」

 魔法陣の自動迎撃能力によって静かになった部屋の中で独りごちる。

 喋っても、多分きっと暴れても自動迎撃能力で母さんと姉さんはまず起きないだろう。


 それ故に困ったのだ。

 魔法陣が起動したままだと、自動迎撃によって昼になっても、明後日になっても強制睡眠でぐっすりであろう。

 魔法陣の解除をしたい。出来れば今日の夜間の内に。

 しかし、設定していない解除方法を見つけるのは至難の業だ。


 試しに「閉じよゴマ!」と叫んでも、当然燦然と輝いている『十全の理』。

 思いつく限りをひたすら唱える。

 自分の名前も叫んでみたし、設定資料内の人の名前もダメ元で叫ぶが、やはり魔法陣が起動していた。


「ダメだ、思いつかない……」

 と独りごちるも諦められない。

 こんな形で家族は(うしな)いたくない。

 だから、そのワードは本当に偶然だった。

「『戻れ』」と、戻れを"日本語"で唱えた。

 "戻れ"で十全の理ら、魔法陣が反応し燦然と輝く魔法の線が電力を失ったネオンのように消えていき、最後には無くなった。


 あとには煌々と輝く星と月の光が窓から差し込むだけだ。

 先程は聞こえなかった、姉さんと母さんのスースーという寝息が聞こえるようになった。

 その姿に俺は安堵する。


 安堵したところで、姉さんは無意識だか分からないが、俺を身体全体で覆うようにして抱きついてきた。

 俺を下にして。

 上からの衝撃に備えるように。

 または、不届き者から俺を見つけないように隠すように。

 姉さんの寝息が俺の額に掛かる。

 とても息が苦しい。

 暑い暑くないではなく息が出来ない。


 だが、どうにかして守れた姉さんと母さんの体温がありがたいので、ひとまずこうしておこうと思う。

 ただ息が出来ないのは流石にキツいので、風属性の魔法を使って俺の顔の前に新しい空気、換気できるようにした。




 因みに後日談が三つある。

 まず一つ目は姉さんは『十全の理』について何も言ってこなかった。

 多分発生した瞬間のときは見えていた筈だが、何も言ってこなかった。

 藪蛇になるので俺からは何も言わなかった。


 そしてもう一つ。

『十全の理』を発現させたお陰で、拘りなく属性がほぼ全て網羅出来るようになった。

 というのも魔法陣の一つに『属性王(エレメンタルマスター)』と設定した魔方陣がある。

『十全の理』発現時に、『属性王』が当然同時に起動したので魔法陣とのパスが繋がった。


『属性王』と名の通り、『十全の理』以上に属性全てを網羅し、基本属性以外の特殊属性の全てが使えるようになった。

 特殊属性というものは基本属性とは、当然違うものだ。

 多分集団の中に一人でもいたら、権力者が引き抜きにかかるだろう。

 ま、俺は引き抜かれて目立つようなことはしたくないので、とりあえず隠そうと思う。


 最後はやはり『十全の理』についてだ。

 終了が出来たので起動も出来るようになったが、正直一度しか起動していない。


 何故なら、起動した瞬間から魔力を精製するのだ。

 起動した本人が危険だと思うぐらいに精製する。起動してから遅々として設定なんて出来るわけがない。

 自動迎撃だけでも解除したいが、解除出来ない。


 それに新しい言語に慣れてしまった。ぶっちゃけ日本語覚えていない。

 いや、覚えているが咄嗟に出るかと聞かれたら出るわけがないと言い切れる。

 それほどまでに、この世界に順応した。

 十全の理を強制終了させてから、気づく。

 ……日本語で自動迎撃能力解除って言えば解除出来たんじゃね?

 と、気づいたところで後の祭り。


 また起動なんて出来るわけがない。

 怖くて出来ない。

 化け物認定されるのだけは避けたい。

 

 だから試していない。


 そんな(姉さんとチャンバラ)こんな(独学で魔法の実践)している内に俺は3歳になり、村の学校に行けるようになった。

漸く十全の理が出せました。

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