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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第2章-ザクリケル-
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独学

 即答は出来ない。

 こちらにも事情がある。

 これは独り言だがといった上で、

「検討はしよう」と全ての意味を込めて応える。


 おっさんは「検討だけでも有り難い」と返してきた。

 今日一日だけで激重の身の上話が二回もあった。

 もう当分ないことを祈るしかない。

 出来ることならもう二度と起きて欲しくない。


 ……しかし『愛して欲しい』か。

 その『愛する』ために、宮廷魔術師になれというのか。

 ま、別になってもいいけど、負けた気になる。

 それは最終手段にしておこう。

 とりあえず、学校のことだ。


 そうだ、そういえば学校のことだ。

「えーと、おじさん」

「なんだね、おじさんは他人行儀だから、お義父(とう)さんでもいいぞ」

「いや、それは結構です。

……俺は七歳で、確かセシルも七歳と言ってました。

学校に入るのって確か八歳からですよね?」

「そうだな。八歳までの間は、ザクリケルニアの町並みとツペェアの博物館と図書館を楽しむといい」


「有り難い申し出ですが、一人だと『護衛』の意味がないのでは?」

「誰も一人で行けとは言っていない。セシルと行きなさい。

セシルならば喜んで着いて行くだろう」

「……そうですね、ではご好意に甘えさせて頂きます」


「ところで気になったのだが、いいかな?」

「なんでしょう。応えられる範囲であれば、応えます」


 するとおっさんが、誰にも聞かれないように音量を下げて「君は、今まで何人殺してる?」と聞いてきた。

 いきなり、何を聞くんだこのおっさん。


「何故です?」

「『護衛』であれば、自然と下手人をその場で命を奪うことが要することがある。

そして生殺与奪(せいさいよだつ)権を君が握ることになる。

つまり、殺すことが出来るのか否かだ」

「魔法で(ほうむ)った数ですか? それとも武器で殺った数限定ですか?」

「魔法も込みでだ……。まて、その反応からすると五、六人っていう程度ではないな?」

「ええ、たくさんありますよ。

寧ろ敵対者で、生かした数がほぼないぐらいです。

……今日の盗賊の親玉ぐらいしか……、あーあの三人もいるので、計五人だけ生かしました。

記憶している中でも殺した数は……、覚えているなかでも50人はいますね」

「つまり、ミリエトラルくんに殺人を頼んでも、遂行してくれるということかね?」

「暗殺とか、そういった類はやりませんよ。

……出来ますけど」

 なにせ『闇夜の影渡(ステルス・フィールド)』に「魔力装填」で何かをセットすればOKとか、マジ暗殺者垂涎(すいえん)もの。


「それはやらせんよ、我が娘が泣いてしまう」

「流石、お父さんですね」

「お義父さん?!」

「……いえ、違います。ええ、違いますよー」


 で、そういうわけですから、

「殺しには慣れたくはないのですが、慣れてます。

それと、魔力検知は常にやっているので、部屋の隅っこにいる暗殺者っぽいのを下げて貰えません?

殺気が魔力検知に引っかかって、警告音が非常に煩いんです」

「なに……、気づいているのか」

「気づいていますよ、そりゃあ。

人寄らずの結界だかなんだかを設定してますけど、逆に不自然でバレバレです。

……力を見せる形で、幾つか殺していいです?

不快だし」


「いや、下がらせるから殺さないで欲しい。

彼らも我が私設騎士団の者なのだから」

「そうですか……、仕方ないですね止めましょう」

「ちなみに、どのような殺し方をする予定だったのかね」

「凍死」


「……なに?」

「『凍結の棺』という氷漬けにする魔法で凍死ですね。

旅の始めの野生動物は全て『凍結の棺』で凍死させてましたので、威力などには信頼性があります。

内部まで完全に凍結させるので、抵抗なんかさせませんよ」

「……氷で押し潰したりではなく?」

「ええ、違います」


「私の知っている氷魔法と違うな」

「そうなんですか? まぁこういうのがあるので、セシルは実力者だと思ったのではないでしょうかね」


「……そういった魔法は誰から」

「独学です」

 嘘は言っていない。

 黒歴史ノートに設定した内容をまる覚えでやってる。

「カルスではない?」

「ええ、父さん母さんからではないです。

もちろん、僕とエルリネとセシルを覆っている、このキラキラ光っている円形のものも独学です」


「これを、独学か……」

 感動したかのような声音で、呟いたおっさん。

「やはり、君のような者がカルタロセから出た理由が分からない。

この力があれば隠棲(いんせい)も出来ただろう」


「それを望んでも、環境が許してくれなかったので。

『魔王』ですし」




「……そうか。『魔王』か。

だが、君がここに来てくれたお陰で愛娘を託せた。

とても、嬉しいことだ。

我が友人、カルスの子だともいうしな。

この国に来てくれてありがとう」




「どういたしまして」





◇◆◇◆◇◆


 食事会も終わりに近づき、夜もだいぶ更けた。

 セシルは気丈に起きているが、気を抜くと舟を漕いでいる。

 エルリネは、そんなセシルの頭を撫でている。

 こうやってみると、母と子のようだ。


 一先ずこれにて『護衛』としての顔見せも終わった。

 明日から彼女の『護衛』のお仕事だ。

 おっさんに実力の魅せつけを明日行うと宣言したが、事情が変わった。

 どうせなら初日の内に強烈な自称"災厄"を魅せつけておきたい。


 いきなり過ぎて無理があるだろうが、ちょっとおっさんに言ってみると、やっぱり無理だった。

 まぁ仕方がない。

 明日だ。

 ちなみに罪人(ぎせいしゃ)は、予想していた通りの盗賊の親玉とその側近だった。

 余罪だらけで犯罪奴隷を経由せずに一発処刑。


 詳しい話は聞けなかったが、まぁ貴族の女児というか娘を中心に誘拐してればねぇ。

 しかも結局どこに売ったか分からないというオチ付き。

 殺すよりもどうにかして辿ったほうがいいと思うが、それはそれとして殺りたいらしい。


 当然誘拐された貴族のお家は、怒りが収まらない。

 ウチが処刑する。いやウチだ。馬鹿言うな婚約者が決まっていたウチだとか喧々囂々(けんけんごうごう)。

 で、結局最終的に捕まえた、キュリア家が衆人環視の中処刑することになった。

 もちろん、おっさんの心情的には処刑したくて仕方が無かったのだが、いざやらせるとしたら誰がいいか。


 (セシル)を最期まで守った力のある騎士二名は殉職した。

 アリナは力があるものではないので、名誉あることはさせにくい。

 ならば、娘以外の私設騎士にやらせるか。

 しかし、どれもこの件に関係ない者ばかり。

 それどころか娘の私設騎士団から抜けなければ、娘がこのような目には合わなかった。

 名誉どころか汚名を被せたい。

 出来ることなら殺してやりたい。

 

 そんなときに、俺が「軍隊を滅ぼす魔法を一発撃つ」と(のたま)った。

 じゃあ、友人の子にやらせようという形で決まったようだった。

 で、一応殺すことに抵抗があるかどうか聞いてみれば、五十人は殺しているとのことで逆に驚かされたとかなんとかとおっさんから告白される。

 ことの決まり方が異常に速くて、こっちが驚かされる。


 とりあえず、明日の俺の仕事は『護衛』として問題ないように「砂鉄の剣(サンドストーム)」をぶつける予定だ。

 あとセシルとおっさんのために、ガチ"災厄"の力を見せたいところ。

 そっちの方は「天空から墜つ焼灼の槍」をぶつける予定。

 もちろん、「天雷、裁終の神剣」もいいかもしれない。

 どっちも脅迫には最適だ。


 とりあえず明日のことは考えない。

 今日はこれ以上のイベントはないというし、とりあえず寝ることにする。

 久しぶりに森の中で採らない肉と果物、茸以外のものを食べれた。

 それだけで満足だ。


 セシルを部屋に入れようとすると嫌々されたので、エルリネと寝て貰うことにした。

 宛てがわれた部屋に入り、エルリネはドレスを脱ぎ、マリンルックのあの服になる。

 俺も、マリンルックの服になり、寝台に倒れ込む。

 トカゲくんのほうは、飯食う前に部屋の寝台脇の文机の上に微動だにしてないようで、固く目を閉じていた。

『前衛要塞』の方も解除した。

 これで三人を守る力は無くなったが、魔力検知に「自動起動(オートスペル)」をリンクさせ、設定魔法は「凍結の棺」にした。


 これで、明日までぐっすりだろう。


 …………おやすみなさい。

作者名とアカウントネームが違うため、私の活動報告に直接飛べません。目次の下部にある「作者マイページ」から、私のアカウントの活動報告の閲覧出来ます。

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