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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第1章-成長-
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姉③

 弟のミルと一日の感想を話す、もとい独り言を3ヶ月ぐらい話していた。

 その甲斐があってから弟が話しが出来るようになった。

 最初は、私を指さして「ねえねえ」と、「あー、うー」といった意味が分からないことばではなく、明確な意味があることばを発してくれた。


 私はとても嬉しくなった。

 あの、弟が私に「ねえねえ」といったのだ。

 アクトが最初に明確な意味を持つことばを発したのは、1歳のお誕生日を大分過ぎてからだというし、最初の言葉は「ごはん」だったそうだ。

 それに比べて弟はどうだ。私を指さして「ねえねえ」だ。

「おかあさん」とか「ごはん」ではない。

「ねえねえ」だ。「ねえねえ」。

 可愛い可愛すぎる。これが弟なのか。

 なんてことをアクトたち、弟や妹をもつ友達に自慢したら羨ましがれた。

 ……へっへっへっ、羨ましいだろう。


 因みに、おかあさんに弟に「ねえねえ」って呼ばれた! って報告したら、その日のご飯はやっぱり豪華だった。

 ただ、おかあさんは「初めてのことばはおかあさんって呼ばれたかったのに」と少し凹んでるように見えた。

 ……ごめんね、おかあさん。


 最近、ミルが纏う雰囲気に所謂魔力の残り香を感じ取れるようになった。

というのも、私が火属性だからなのか火属性特有の魔力という無臭であるはずのものに、火がついた独特な匂いまたは、気配を感じる。


 最初はアウレが纏う水属性の匂いがちょっとしてたけど、慣れ親しんだ火属性の匂いを感じ取れるようになってからというものの、匂いから明確な気配。

 魔力の残り香を感じる。


 私が火属性の魔法とかの練習をしだしたのは村の学校に通うようになってからだ。

それまではやり方とか知らなかったし、おかあさんからも禁止を言い渡されていた。

 そんな私よりも早く魔法を使えるようになるなんて、弟はやっぱりすごい。


 気配は相変わらず怖いけど、それ以上にすごい。

自慢の弟だ。可愛いしね。


 そんな感じで自慢してたもののしばらくしてたら、火属性の気配が私以上に強くなってた。

 私が村の学校にいる間でも、弟の火属性の気配が森にいるか家にいるか分かるようになってしまうぐらい気配がすごかった。


 気配がすごくて仕方ないけど、おかあさんや村のおじいちゃん先生もなにも言わないし、たぶん大丈夫なんだろう。


 ある日、相変わらず弟の気配を毎日感じながら、村の学校に通い帰ってきたところ、おとうさんが家に帰っていた。

 弟を見に来たそうだけど、私を心配して帰ってきてもいいのに、と弟に軽く嫉妬。

 その日はおとうさんといっぱい話しが出来た。


 友達のこととか、弟のはじめてのことばとか。おかあさんはやっぱり凹んでいるようにみえた。

 おとうさんはおかあさんの反応をよそに、自分のことのように喜んでいた。


 その日の弟はおかあさんと寝ないで、私のところに来て抱き合って寝た。

 日中に抱いたりしてた弟の体温は夜でもやっぱり暖かかった。

 おとうさん、おかあさんの寝室からはゴトゴトと音がしてたけどなんだろう。


 弟もアクトみたいにそこそこ格好がつくようになってきた。

 だから、私謹製の木の枝ソードを弟にあげた。

 おとうさんに木剣を作ってもらってから、使わなくなった剣の打ち合い用木の枝ソード。

 持ち手に森の長い葉っぱを巻きつけて、余分な枝を折って作った木剣よりお粗末な出来だけど、数多の無礼者(※主にアクト)に天罰を与えた聖剣:木の枝ソード。

 木の枝ソードを弟にあげたとき、喜んでいるように見えたけど、微妙に顔が歪んでた。

 複雑な顔が出来る弟はすごいなと思った。


 弟に木の枝ソードで、私は木剣なんてことをしてしまったらただの弱いもの虐めだ。

 だから、私も新しく作った木の枝ソードの打ち合いで遊ぶ。

 新しいとはいえ、使い慣れているからひたすら、弟に大人げなくぺしぺし当てる。

 弟はちょっと不服そうだったが、泣かないのは意外だった。

 アクトの弟に似たことしたら泣かれたことがある。

 ……泣かないなんて流石、私の弟だ。ねえねえは鼻が高いぞ。


 毎度、似たことをして、毎度似たことを思い、その度にその日に寝るときは一緒に抱いて寝る。

 布団の中で弟を抱く時、弟は嫌そうに逃げるが、私は逃さない。

 何故ならば、毎度ついついやってしまうが、別に私は弟を嫌いでやっているわけじゃない。

 寧ろ大好きだ。

 大好きだからこそついつい木の枝ソードを身体に当てて男の子のプライドを刺激させる。

 プライドを刺激して反撃をさせても最初は当たるようにしても、最後にはひたすら避ける。

 避けながらひたすら当てる。


 おとうさんが言っていた。『女はきほんてきに、耐えながらいちげきをあてるというのはたいかくてきに無理だ』と。

 今でもよくわからないけど、じゃあ我慢するのは出来なくても避けながら戦う、ということが分かる。

 だからおとうさんは私に『【魔法が使えるきし】で、弟は【剣が使える魔法使い】になれたら、2人でまえとうしろで分けれてきっと最高なんじゃないかな』なんて言っていた。

 "まえ、うしろ"がなんのことかよく分からなかったけど、おとうさんの言うことだ。きっと間違いはないのだろう。

 その言葉を信じて、私は弟に木の枝ソードでぺしぺし当てる。

 その度に弟はムキになった顔をして、打ち合い遊びのあと、ご飯のときに弟は私に対してとても素っ気なくなる。悲しい。


 だからご飯のときに摂取出来なかった弟の温もりを寝るときに摂取する。

逃すわけがない。

 おかあさんの温もりは好きだ。それ以上に弟の温もりが大好きだ。

 ずっといたい。出来ることなら村の学校でも抱いていたい。

 そんな私、ねえねえの気持ちを知らずに逃げる弟は許さない。ずっと抱いてやる。

 弟が「暑い。ねえねえ、ちょっと離れて」と言うが、私は「暖かいので駄目」といって抱く力を強める。


 その度に弟が魔法を使う。

 水魔法の水球だ。

 自分の顔とか身体に水を掛けて、熱を取るらしい。

 無理にでも、私をの腕をほどいて押し出せばいいのに、弟はすぐに魔法に頼る。

 弟の魔法のお陰でいつも寝間着がぐっしょり濡れている。


 そんなこんなで弟を抱きながら寝ているとある日、おかあさんも一緒に寝ることになった。

 たぶん、ほぼ毎日私と弟の寝間着がぐっしょり濡れているからであろう。

 私は火属性で弟は無属性だ。

 誰が水属性を使っているのか心配になったのだろう。

 まぁ、おかあさんでも弟の温もりは渡さないから、今日も抱いて寝る。

 ただ、今日の弟はいつもと違っていた。


 剣の打ち合い遊びでも、本気で避ける私に2回当てたし。当ててからいつも必死になったような顔で私を見ていたけど、そのときはおとうさんが私を見るような穏やかな顔で。


 ――姉さんは僕が守るから。

 と、いつも"ねえねえ"と言っていたのに"姉さん"といった。

 弟が変わった、とおもった。

 私に甘えてくれる弟じゃなくて悲しいな、とおもったけど、それ以上に嬉しいなと思った。


 ご飯のときも素っ気なくなかった。

 打ち合い遊びがない日のように接してくれた。

 寝るときになって、弟の温もりはいつも以上に摂取していたが、弟を抱いて寝るのは最早日課だ。

 身体を拭いて、さぁ寝ようとしたときにおかあさんも一緒に寝ることになった。


 弟を真ん中にして弟の両脇をおかあさんと私で固める。

 きっと非常に暑いだろう。

 水属性の魔法でぐっしょり濡れるのではなく、汗でぐっしょり濡れるだろう。


 そうしている内におかあさんは寝て、私もうとうとしだした。

 寝る前に一瞬だけ家の窓から外を見た。

 曇っていたけど、月は煌々と光っている。


 明日は雨かもしれない。

 火属性の私には苦手な日だ。

 明日も弟を抱いて一日過ごそう。

 実際は村の学校に行くのだけど。

 ――おやすみなさい。


 そのとき、弟から。

 目が焼けるような眩めく光が。

 それでいて優しい雰囲気の光が。

 ほんの一瞬発生した。

 発生したあと、その光が窓から月へ向かって伸び。

 そのまま消えた。

 光量が嘘のように消え、静けさだけが戻った。

 目を焼きそうになったその光に対して、弟に問い質そうと身体を動かしたが、私の身体は意思とは反対に寝かかっており、そのまま私は意識が切れた。

 意識が切れる瞬間、弟の背後に太陽と月と星を描いたように見える幾何学的な絵が、光の線で描かれていた。

 ……やっぱり私の弟は自慢の弟だ。

AはAnotherの意です。

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