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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第2章-ザクリケル-
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貴族街


 今、令嬢サマをおぶって通っている道は、いわゆる貴族街らしく中々整備されていた。

 コンクリートとかアスファルトとかでは流石に整備されておらず、中世的異世界らしく石畳だが遠目から見るとコンクリートだ。

 家も大きい。

 あの村で見た村長の家より、大きい。

 あの村の実家が、二十個は入りそうな家が沢山ある。


 その中でも一際デカい家、それがこの令嬢サマの家らしい。

 って、あの小山に鎮座しているあれかよ。

 いや、普通にデカい。

 これしか言えない。


 なにこれ三階建てながらも、生前でいうホテルみたいな貫禄があるんだが。

 そしてそれ以上に、俺もエルリネも非常に場違い感が強すぎる。

 なにこの無音の圧迫感。

 やばすぎる。


「何あの奴隷」って見られている感が強い。

 ……ノー審査で入れたけど貧民街コースですかね。

 まあ、いいんだ。

 行き先はここじゃなくても、もっと遠くだし。

 と、ビクビクしていると、背中の令嬢サマがぎゅむっと胸を圧し潰しながら、先を促す。


「何を恐れているのですか、早くわたくしの屋敷へ」

「いや、いやいや、何か凄い場違い感が強すぎて嫌なんですけど」


「……みな、嫉妬しているのですよ。

わたくしをおんぶしたいと望む方はたくさんいらっしゃいますし」

「じゃあ、立って下さいよ……。いやなんですよ、こういう空間」


「あら、『魔王』様という方がこういう場を嫌うとは、たかが知れてしまいますね」

「いやいや、元々田舎者だよ?

田舎者が一丁前(いっちょまえ)に『魔王』って自称しただけかもしれないんだよ?」


「いえ、大量殺戮しか出来ない魔法使いであれば、十分『魔王』でしょう。

ここに人を守るという意思があれば、立派な『勇者』さまですが」


「…………、」

「まぁわたくしには、どちらでも構いません。

『勇者』でも『魔王』でもどちらでもいいのです。

わたくしは――、いえなんでもありません」


 言い掛けてはおらず、ボソボソと喋られ内容をもう一度聞こうとしたところ、なんでもないと返された。

 何を言っていたのか非常に気になるが、一応令嬢サマを送り届けてから考えよう。


 そう考えていたほうがきっと賢明だろう。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 小山のところまで非常に遠かった。

 直線距離であれば一、二キロメートル程度かなと考えていたが、通れない道などがあり迂回に迂回を重ね、着いた頃には日が傾き掛けていた。


 令嬢サマは比較的軽かったが、ずっとおぶっていると身体が悲鳴を上げる。

 その間は無言、ではなく令嬢サマの愚痴を聞いていた。

 誰これの視線がやらしいとか、そういうネタだ。

 俺に言われても非常に困る。

「助けて?」という目線をアリナに送るが、「頑張れ♪」という目線を返される。


 というか、俺も誰これのように君をやらしい目で見ちゃうよ。

 というぐらいに、胸を押し付けられる。

 生前でいう、ロリ好きはこういうシチュエーションに血涙するんだろうなと漠然と思う。

 腕が疲れてきた。

 足腰もガタガタだ。


 余り使いたくはないが、使うしかない。

 背に腹は代えられないということで、『最終騎士(クラウン・シュヴァリエ)』を低級駆動させる。

 令嬢サマは『蠱毒街都(ヴェナムガーデン)』を見せたのでそこまで驚かれなかったが、アリナは初見だ。

「なっ?!」と息を呑まれる。


 その驚かれることで、精神的な部分の疲れが飛んだ。

 肉体的、魔力的な疲れは当然飛ばない。

 足腰と肩と足裏に奇妙な文字配列と魔力線で描かれた幾何学模様の緑色の魔法陣が発生する。


「ああ、気にしないで。

おんぶ用に足裏と足腰を強化しただけだから」


「……は、え?」

「うーん、腹減った」


「わたくしを屋敷まで連れて頂ければ……、うん。

もし宜しければ一緒に夕食を食べませんか?」


「いや、いいよ。緊急時とはいえ、君の兄上を殺したんだ。

殺人犯と共に食べる夕食は不味いだろ」

「いえ、いいのです。この国は実力主義です。

実力がないのに言い寄り、実力がないから殺された。

それだけです。


……それにわたくし、兄上のこと大嫌いだったので。正直に申し上げますと、死んでせいせいします。

それに、わたくしには……、いえ今言っても詮無きことです。

とにかく貴方には、いて欲しい理由があります」


「へえ、差支(さしつか)えなければ教えて欲しいね。その理由」

「差支えあるので、教えられません」

「…………、もしかして惚れちゃった? 俺に」

「いえ、全く」


 即答で返された。

 ショックだわー。

 などと、コントしている内に令嬢サマの、屋敷についた。

 今度こそ令嬢サマに「降りて?」と聞いたが、やはり「まだ」と返された。


 いい加減マジで降りて欲しい。


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