姉②
お父さんに素振りを見て貰いながら、学校に通ってたある日。
お父さんとお母さんが弟を連れて学校に来た。
何のようかな? と思ってアクトら友達数人引き連れて行ってみたら、主要属性判定をやってたみたいだった。うえ、あの紙ものすごく苦くて美味しくなかったんだよね。よく、弟はしゃぶれるなぁ。
「あれ、のうきn、いや、シスの弟だっけ」とアクトが私に聞いてきた。
「そうだよ」
「もう半年経ってるんだ」
「半年?」
「あの紙の奴、生後半年にやるんじゃなかったっけ」
「そうなの? 少なくとも弟はまだ4ヶ月だっけな、それぐらいだよ」
「判定出るのかな、お父さん言ってたけど半年じゃないと正確な結果が出ないらしいよ」
……ええっ、正確な結果が出なかったら私困る。
私と同じ火属性じゃないと、お姉さんとして教えてあげられない。それは困る。嫌だ。
嫌だ、嫌だって思考がぐるぐるしてたけど、そんな私の思考をよそに結果が出た。
結果は、ほぼ無属性。
アクトたちは非常に気まずそうで、私は火属性じゃないことに動揺を隠せず、大人げのない先生たちは哀れみの目で弟を見る。
先生に「弟を哀れみの目で見ないで!」と言いたいけど、私も動揺を隠せていないからそんなことも言えない。
でも、お父さんとお母さんは違った。凄く喜んでいた。
「先生、つまりうちの子は特定の色ではなく全部を網羅出来るんですね?」 と赤の火も青の水も黄の風も緑の土も全部伸ばせると先生に聞いたのだ。
「不可能ではないですが」と先生は、歯切れの悪そうに言ってたけど、「では、うちの子は大丈夫です。この子もシスもとても優秀なので」
「薄くても、この村では初の虹色ですよ。喜ばない理由はない」
「良かったなミリエトラル。お前が望む好きな分野に進めるぞ」とお父さんとお母さんは二人で話を進めて、そのまま意気揚々と帰っていった。
アクトと先生と、ほかの人も可哀想な人を見るような目で両親を見てた。
私は、その空間にいられなくなって帰った。
その日の夕食もよつんばい移動記念のときのように豪華だったが、私の心は晴れなかった。
私の心は晴れなかったが、弟はそんなことを気にしてなんかいられないとばかりに私と遊んでくれた。
と言っても木の枝剣を振るったり、走り回るってことは出来ないから、弟の目の前に指を動かしたり揺らしたり、お父さんが買ってきた、あかちゃん用の本を読んであげた程度だったけど。
それでも喜ぶ弟が可愛く見えてきた。
あの気配は相変わらず健在だけど、私が声をだして絵本を読むと私の声音を真似してくれる。
私と遊んでいる間は泣かないし、昼寝をするときも私に抱きついてくる。 私が弟を疎ましく思っていたとしても、弟は私を好きでいてくれるのだと思う。
そう、思うと私は嬉しくなった。
あの血色が悪くて気持ち悪いのがお父さんみたいにかっこ良くなるのは無いとは思うけど、弟が私のことを好きでいてくれて頼ってくれるならばずっと一緒にいたいなと思った。
一緒にいたいから、弟のことも学ばなければいけない。
……弟の身体はお母さんがみてくれる。私は頼れるお姉さんになるために、嫌いだけど本を読んで、無属性だけどえらくなったひとはどうしてたか覚えなきゃ!
私は決意を新たにした。
そこで早速弟の属性について先生に聞いたけど、先生の反応が悪い。私に対する対応が腫れ物を扱うような、そんな感じ。
いや、腫れ物というか、汚いところを見せてしまったような気まずさが見て取れる。私は気にしないのに。
さて先生に無属性などの魔法について詳しく聞いたところ、ぶっちゃけばかな私には分からなかった。
辛うじて理解できたのは、魔力を属性判定で判明した属性に合わせて魔力を放つもので、無属性は属性がないので魔力が出るだけで何の意味もないとのことだった。
ただ『魔力回復剤』や『魔力促進剤』などは魔力で出来ているから、それを精製する道があると言ってた。
あんまりにもあんまりな内容だったが、弟に聞いたことを教えた。
理解しているのか分からなかったけれど、まぁいいか。
ただ、他の人のために自分の身を使って回復剤になるなんて嫌だな、と思う。
最初は無属性魔法の内容だけを教えるつもりだったけど、いつのまにかばかなアクトとか、アクトのことが好きなアウレの話とか、森で拾った木の実が苦くて不味かった話とか他にもいろいろな話をするようになった。
理解してなさそうな顔だったけど、それでもいい。
この子が可愛いから。私が話をしている間も逃げたりしないでお尻で座った状態でずっと私の話を聞く。
そういえば、弟はお母さん似だなぁなんて薄ぼんやりに思った。
くりっとした茶色い瞳に栗毛で、身内目だから大げさかもしれないけど多分男の子ながらも美人になるんだと思う。
ガサツな私と大違いだろうなぁ。