魔法と魔法陣
説明回です。
起きてからは、正座させられた。
いや、正座したのは自分からだ。
正座した理由は、俺はエルリネに怒られており、内容は【拾ったものを食べては駄目】ということだ。
この時に言い訳をしてはいけない。
彼女は一応俺より年上だ。
年上の言うことはちゃんと聞く。
例え、対等な存在としても家族だ。
家族の言うことはちゃんと聞く。
他人だったら、どうでもいい。
ひと通り怒られてから、エルリネから「どうして食べたの?」と聞かれた。
故郷の食感のためだと言ったら、"日本人"について説明する話になる。
だから。
「『蟲毒街都』があるから、食べれる」と返答する。
事実、『蟲毒街都』があれば、あのキクラゲもどきを食えたんだ。 特級駆動なら、フグの卵巣も、カエンタケも食えるだろう。
やりたくはないが。
「……えっと、そのうーん。bxkstidfってなんですか?」
「ん……ああ、"日本語"で言ったからね、聞き取れなかったか。『蟲毒街都』っていったんだ」
「なんですか、それ」
「俺の魔法の中でも、とびっきり危ないものの内の一つでね。
これ、使っていると外部からの毒を一切受け付けなくなるんだ」
「…………、」
「だから、ああいうキノコを食っても味わいと食感を感じることが出来て、毒は受けない」
「それだけ聞くと、特別危ない感じはしないのですが……」
「それはね、副次効果だけの部分だから」
「副次効果ってなんですか?」
「副次効果ってのは、そうだなあ。
例えば、食べ物を焼くために、焚き火を作ります。そのついでに暖を取ります。
この暖が副次効果のこと。
要は、狙っている効果とは別に追加で来るものを副次効果だね」
「ほへー」とよくわかっていなさそうな反応を示すエルリネ。
とりあえず、話を進める。
「『蟲毒街都』の主要効果は毒をばら撒き、殲滅するものだ。
範囲内にいるものを全てを対象にする。
つまり、もし敵対判定されていたらこの場にいるエルリネも対象に入る」
エルリネが分かってなさそうな顔から一転、直ぐ様離れる。
「ああ、大丈夫大丈夫。俺が敵対対象にしてないし、ばら撒く時は通常駆動だ。
低級、または最低駆動であればばら撒かない」
「"最低駆動"ってなんですか?」
「それを説明する前に、魔法陣と魔法について説明しておく。
俺の使う魔法には魔法陣と呼ばれるものと常在魔法と攻性魔法の3つがあるんだ。
常在魔法は『多重起動』、『自動起動』などで特に意識せずに常に使われている状態。
対して、攻性魔法は『魔力装填』とか、さっきの猫を殺した『電磁衝撃』は詠唱して使う必要があるもの。
これらの攻性魔法には詠唱が必要で、その場限りの現象が発生する」
「…………、」
「『電磁衝撃』が常に発生していたら、この森全滅するでしょ。
そういうのが、俺の中の魔法」
一度話を切り、鹵獲品の水筒を呷る。
水筒の口を締めながら、続ける。
「魔法陣は詠唱を必要としないが、多大な魔力を使い魔法が発生するものを指している。
そして、その魔力に見合っただけの現象が発生する。
要は、文字通り世界が変わるんだよ。一度使うと。
例えば、エルリネに初めて会ったとき、苦しがってたの覚えてる?」
「……うん」
「あの時に使ったのが……"起動"『世界』」
俺とエルリネを中心に世界が作られ、閉じる。
森でギャアギャアといった鳥の声などが、聞こえなくなり耳が痛くなる。
「これの効果は、世界を新しく作る。
そのため、内外の音は別世界だからお互い聞こえないし、魔法的効果も祝福も外から効果が着ていれば遮断する」
「…………、」
「これはあくまで世界を閉じ内外遮断するだけだから、通常駆動でも問題ないのだけど、『蟲毒街都』と、『奪熱凍結の言霊』は範囲内にいる敵対者に等しく死を与えるものでね。
常に毒の沼を発生させてたり、常に凍える猛吹雪が発生していたりとか常に現象が発生する。
囲っておしまい、じゃないから魔力を通わせ維持する必要がある。
だから魔力を最低限通わせるのが【最低駆動】、それよりちょっぴり魔力を通わせるのが【低級駆動】、通常の魔力消費で発生させるのが【通常駆動】。
それより上はやったことがないけど、やったら多分凄いことになるからやらない。
ちなみに『吸襲風吼』も魔法陣です。
……ここまでで質問は」
「……ないです」
「よろしい」
というわけで。
「というわけで、『蟲毒街都』は危険なのです。
でもこの『蟲毒街都』があるから毒物でも食べれます。
だから毒キノコ食っても平気――」
「それでも食べてはいけません!」
彼女に釘を刺された。
美味しいのに。




