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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第2章-常識-
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魔法と魔法陣

説明回です。


 起きてからは、正座させられた。

 いや、正座したのは自分からだ。

 正座した理由は、俺はエルリネに怒られており、内容は【拾ったものを食べては駄目】ということだ。


 この時に言い訳をしてはいけない。

 彼女は一応俺より年上だ。

 年上の言うことはちゃんと聞く。

 例え、対等な存在としても家族だ。

 家族の言うことはちゃんと聞く。


 他人だったら、どうでもいい。


 ひと通り怒られてから、エルリネから「どうして食べたの?」と聞かれた。

 故郷(せいぜん)の食感のためだと言ったら、"日本人"について説明する話になる。

 だから。


「『蟲毒街都(ヴェナムガーデン)』があるから、食べれる」と返答する。

 事実、『蟲毒街都(ヴェナムガーデン)』があれば、あのキクラゲもどきを食えたんだ。 特級駆動なら、フグの卵巣も、カエンタケも食えるだろう。

 やりたくはないが。


「……えっと、そのうーん。bxkstidfってなんですか?」

「ん……ああ、"日本語"で言ったからね、聞き取れなかったか。『蟲毒街都(こどくがいと)』っていったんだ」

「なんですか、それ」


「俺の魔法の中でも、とびっきり危ないものの内の一つでね。

これ、使っていると外部からの毒を一切受け付けなくなるんだ」

「…………、」

「だから、ああいうキノコを食っても味わいと食感を感じることが出来て、毒は受けない」

「それだけ聞くと、特別危ない感じはしないのですが……」


「それはね、副次効果だけの部分だから」

「副次効果ってなんですか?」

「副次効果ってのは、そうだなあ。

例えば、食べ物を焼くために、焚き火を作ります。そのついでに暖を取ります。

この暖が副次効果のこと。

要は、狙っている効果とは別に追加で来るものを副次効果だね」

「ほへー」とよくわかっていなさそうな反応を示すエルリネ。


 とりあえず、話を進める。

「『蟲毒街都』の主要効果は毒をばら撒き、殲滅するものだ。

範囲内にいるものを全てを対象にする。

つまり、もし敵対判定されていたらこの場にいるエルリネも対象に入る」


 エルリネが分かってなさそうな顔から一転、直ぐ様離れる。

「ああ、大丈夫大丈夫。俺が敵対対象にしてないし、ばら撒く時は通常駆動だ。

低級、または最低駆動であればばら撒かない」


「"最低駆動"ってなんですか?」

「それを説明する前に、魔法陣と魔法について説明しておく。

 俺の使う魔法には魔法陣と呼ばれるものと常在魔法と攻性魔法の3つがあるんだ。

 常在魔法は『多重起動(たじゅうきどう)』、『自動起動(じどうきどう)』などで特に意識せずに常に使われている状態。

 対して、攻性魔法は『魔力装填(まりょくそうてん)』とか、さっきの猫を殺した『電磁衝撃(でんじしょうげき)』は詠唱して使う必要があるもの。

 これらの攻性魔法には詠唱が必要で、その場限りの現象が発生する」

「…………、」

「『電磁衝撃』が常に発生していたら、この森全滅するでしょ。

そういうのが、俺の中の魔法」

 一度話を切り、鹵獲品(ろかくひん)の水筒を(あお)る。


 水筒の口を締めながら、続ける。

「魔法陣は詠唱を必要としないが、多大な魔力を使い魔法が発生するものを指している。

そして、その魔力に見合っただけの現象が発生する。

要は、文字通り世界が変わるんだよ。一度使うと。


例えば、エルリネに初めて会ったとき、苦しがってたの覚えてる?」


「……うん」

「あの時に使ったのが……"起動"『世界(ワールドスフィア)』」

 俺とエルリネを中心に世界が作られ、閉じる。

 森でギャアギャアといった鳥の声などが、聞こえなくなり耳が痛くなる。

「これの効果は、世界を新しく作る。

そのため、内外の音は別世界だからお互い聞こえないし、魔法的効果も祝福も外から効果が着ていれば遮断する」


「…………、」

「これはあくまで世界を閉じ内外遮断するだけだから、通常駆動でも問題ないのだけど、『蟲毒街都(こどくがいと)』と、『奪熱凍結(だつねつとうけつ)言霊(ことだま)』は範囲内にいる敵対者に等しく死を与えるものでね。

常に毒の沼を発生させてたり、常に凍える猛吹雪が発生していたりとか常に現象が発生する。

囲っておしまい、じゃないから魔力を通わせ維持する必要がある。

だから魔力を最低限通わせるのが【最低駆動】、それよりちょっぴり魔力を通わせるのが【低級駆動】、通常の魔力消費で発生させるのが【通常駆動】。

それより上はやったことがないけど、やったら多分凄いことになるからやらない。

ちなみに『吸襲風吼(きゅうしゅうふうこう)』も魔法陣です。


……ここまでで質問は」


「……ないです」

「よろしい」

 というわけで。

「というわけで、『蟲毒街都』は危険なのです。

でもこの『蟲毒街都』があるから毒物でも食べれます。

だから毒キノコ食っても平気――」


「それでも食べてはいけません!」

 彼女に釘を刺された。


 美味しいのに。




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