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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第1章-成長-
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姉①

 あの日、弟が生まれた。

 弟は赤い身体してて、ぶっちゃけ同じ人間かと疑うぐらい不細工だった。

 ……なんだこいつは。

 お父さんはお母さんを褒めていた。

「よくやった、男の子だ」と。

 男の子? こんな不細工なのが、お父さんみたいな格好いいのになるのか。

 いやいや、絶対ありえない。

 でも、お父さんもお母さんも何も言わない。

 お母さんは弟を抱きあげて泣いていた。

「生まれてきてありがとう」

 お母さんはそう言っているけど、……なんだろう、こいつ怖い。



 それから一週間ぐらい、お母さんに会えなかった。

 お母さんは出産の影響で身体が弱っていて、弟はお母さんと一緒にいなきゃいけないらしくて、私はお父さんと一緒にいた。

 その間、お母さんの世話は村にいた助産師のおばさんがやってた。

 ついで、とばかりにお父さんと私のご飯も作ってくれた。


 正直、お父さんのご飯は豪快だ。

 街で買ったイノシシの肉を豪快に焼いて豪快な味付け私に食べさせようとした。

 私は肉が好きだ。

 でも、これは流石にあんまりだ、と思う。

 野菜は好きじゃないし、出来ることなら食べたくない。

 でも野菜の緑がなく、肉100%のご飯が三食続く、本当にキツい。

 二日でダウンした。

 村のおばさんがごはんを作ってくれて本当に助かった。


 一週間経って漸くお母さんの料理が食べれると思うととても幸せな気分になった。

 そんな、私の様子を見ていたお父さんはあからさまに凹んでいるように見えた。


 それから更に一週間後、漸く弟とご対面した。

 初めてみたときのような気持ち悪い体色はしていないけども、顔に感情が見えるのは気のせいかな。

 いや知性というよりも年不相応な気配というべきかな。

 なんだろう、やっぱり怖い。

 お父さんも赤ちゃんの頃はこんな気配してたのかな?

 でも何故だろう、弟が笑うと私も釣られて笑ってしまう。

 気配は怖いけど、可愛いなぁ。


 目の前に人差し指を振ってみたら視線だけでも追いかけるところが、なんか猫っぽい。

 と、遊んでいたらお母さんがご飯の時間だと言って、弟を抱き上げておっぱいをあげてた。

 弟は一心不乱にごっくんごっくん飲んでいる姿に、自分もお母さんになったらあんな感じになるのか。

 なんだろう、あんな怖いものに吸われるのか。可愛いけど、あんなのは要らない。

 大人になりたくないな。


 お母さんは弟の体調が安定するようになったら、外に出て前後に揺れる椅子に座りながら唄うことを日課にしてた。

 とても物悲しい曲調だけど、愛する子供に行く先について大地と森と風に幸せを願う唄だとお母さんに聞いた。

 村では聞いたことがないから、多分お母さんの即興した唄なんだろうと聞き返したら、お母さんの故郷の唄なんだそうだ。

 お母さん曰く、実在した、村を作ったとても偉い人が自分の一族のための唄。

 この唄を歌い繋いでいく限りずっと加護が宿るとか。


 加護ってなんだろう。私は村の男の子、アクトが言うとおりにばかだから分からないや。

 ばかといえば、アクトもばかだから、「ばか!」って言い返したら私を「のうきん」と呼んだ。

 のうきんってなんだろう。

 とりあえず、ばかにされてるのは分かるから木の枝剣でとりあえず、引っ叩くようにしてる。

 けれど、わたしに会う度に、「のうきん!」って言われる。その度に引っ叩くけど、アクトって本当にばかなのかな。

 叩かれてるのに言い続けるって相当だよね。


 弟が産まれてから初めてよつんばい移動が出来るようになった、とお母さんから聞いた日、その日の夕食は豪華だった。

 具体的に言えばお肉とお野菜の量がすごい。こしょうも塩もいっぱい使われていてとっても美味しかった。


 お母さんは相変わらずあの怖い弟に付きっきりで、詰まらなかったからお父さんの素振りを真似を見よう見真似でやってみた。

 お父さんから褒められて才能があるって言われたけど、才能ってなんのことだろう。

「俺と同じきし目指すか!」とお父さんは言ってたけどきしってなんだろう。

 アクトにきしについてよく分からないけど褒められたって聞いてみたら「俺は負けねぇ!」って言って素振りしだしてた。

 よくわからないけど、がんばってねアクト。


字空けなどの修正 2/6

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