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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第1章-成長-
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成長④

 その間俺の身体的な成長としてはまず歩けるようになった。

 これはでかい。

 自由に母さんや姉さんの部屋に行き来出来、自宅周りの庭で寝転がる事も出来る。

 身体を動かして運動も出来る、まだよちよち歩きみたいなものだが近いうちに走り込みしたいところである。


 ほかに話せるようになった。

 これもでかい。

 もはや、詠唱文なんか使わずに水球に流水辺りは出せるが、そうじゃなくても姉さんと話せるのはよい。

 彼女も受け答えが出来る相手がいると話し甲斐があるのであろう、より一層感情を込めて話をしてくれるようになった。

 お母さんは相変わらず「よく出来ちゃわねー」、「おいしいでちゅかー?」と赤ちゃん言葉で話しかけてくるが、ごめんなさい母さん、姉さんのお陰でそこそこ高度な日常会話を理解出来ます。


 動きまわることで分かったことがある。

 この家庭の男手、つまりお父さんは村ではなく街かそれよりも大きい都市で働いているようだ、と当たりを前から付けていた。

 実際に両親の寝室にはお父さんのものと思われる篭手や鎧みたいなものがあって剣を振るう肉体的な職業に就いており、また、例のリトマス試験紙のイベントから生後8ヶ月の間、お父さんを見ていない。

 そこから推測すると前述した通りに大きい都市に泊まりこみで働きに行っていると(にら)んだ。


 それに対する答え合わせとしてお父さんが自宅に帰ってきたが、その時の格好が、フットマンズソード、つまりはショートソードを腰に挿し革製品の服と金属製の胸当てを付けていた。


 この世界にも所謂ギルドか冒険者組合なんてものがあり、それに属しているのではないかと考えたが、そうではないようだ。

 高度な会話を理解できないと思われているためか、赤ちゃん言葉を交えて父さんの立場を教えてもらったところ、要はなんと王国の騎士で且つ凄いところで働いているらしい。


 なにこれ、ご都合主義系の設定じゃないか。

 つまり、母さんと俺と姉さんは王国の一等地に家があり、家政婦がいてもおかしくなく、教育も一等級のものが施されることも出来たというわけだ。

 あれか、ここから貴族らしい感じのweb小説始まっちゃうと言っちゃう?

 両親の血統も凄いらしいが、詳しく教えてくれなかった。

 多分事情があるんだろう、生後8ヶ月の赤ん坊に言ってもしょうがないしな、その辺り。

 ……あーこれはweb小説待ったなしですわー。


 因みに当然ながら、設定にそんなものは入れていない。

 入れたのは一般的な平民だが貴族とはそこそこ仲が良いという程度の筈だった。


 変なところで設定が反映されていない。

 人生を左右する例の設定、つまり運命の分岐点イベントが発生するかが分からない。

 お父さんの帰宅イベントは一抹の不安を抱えることになったイベントだった。


 それでも一家団欒はとても楽しくて素晴らしかった。




 魔力容量的にも成長した。

 ほぼ毎日、水球と流水をひたすら練習していたらちょっとやそっとでは倒れなくなった。


 むしろ使わないと寝れなくなったというべきか、とにかく時間がわからないが予測として夜10時ぐらいに自動的に寝なきゃ! と思う。

 しかし、目を閉じても寝れないため、日中の間に火属性の「火炎球」などの燃焼し続ける魔法で無駄に魔力と体力を消費させないと寝れなくなってしまった。


 これもステータスによる数値化が無いため分からないが、きっと多分水球よる水魔法の習熟度よりも火炎球により火属性の習熟度のほうが高いだろう。


 こんな方法で習熟度を上げるなんて、世間の努力している人たちには申し訳ないね。

 そこはチート様々か。


 チートで思い出したがこの世界の魔法を使うことで例のユニーク魔法の発現のさせ方を思いついた。


 世界に満ちる『魔力素』つまりマナは前世で言う原油で、人間の魔力素を貯めるタンクの限界値が『魔力容量』に一旦保存し魔力、前世でいう灯油に精製し『主要属性』をフィルターから魔法を出す。


 火属性というフィルターから漏れ出た魔法は当然火属性だし、それ以外の属性はフィルターを通しているのでその属性。

 で、無属性だとそのフィルターが無いらしい。

 というのも姉さんが村の学校で聞きかじったことを毎日の姉さんとの会話で聞いたからだ。


 つまり、俺がひねり出した幻想的な光を出すあの水は、実は水属性魔法ではなく魔力という名の灯油だったようだ。


 この話が上述した例のユニーク魔法とどう繋がるのかというと、人間の魔力素を貯めるタンクを経由せずに直接、灯油ではなくガソリンに精製するのがこのユニーク魔法である、ちょっとイメージしただけで簡単に周囲の魔力素からガソリンのような爆発的大火力を生み出す魔力を精製する。

 射出位置も指ではなく任意の場所という設定の上、本人がイメージするだけなので詠唱も必要がない。

 つまり無詠唱。


 そんなものを覚えたら化け物である。

 齢1歳にして無詠唱で、街を洗い流す大洪水、文明を滅ぼす大地震、確実に対象以外には及ぼさない焼滅させる炎。

 そんなチート覚える必要なんて全く無い。

 設定? そんなもの、イレギュラーがある今、気にしないことにする。


 第一、設定上のミリエトラルは王立学校に通って魔力精製能力が同年代以下で魔力イメージも転生者でもなかったからこそ、苦肉の策としてこのユニーク魔法を発現させた。

 今の俺の身体でこのユニーク魔法を発現させたら、イメージ力も相俟って洒落にならない。

 一人で軍隊相手に出来るわ。


 この魔法は要らない。

 少なくとも運命を左右するイベントの手前までは絶対に要らない。



 姉さんのことも最近になって分かってきた。

 まず歳の差は三歳ぐらいの違いらしい。

 らしい、というのはあくまで本人から聞いていないからである。


 あと姉さんの話す内容から鑑みると、俺みたいな魔法使いではなく、前線で斬り合う戦士または騎士が性に合っているようで、同年代の女の子と遊ぶより男の子と一緒になって川や森に行ったりするのが好きらしい。

 もちろん木の枝でチャンバラもするようだ。

「アクトは私の子分なんだ!」とも言っているし、楽しそうで何より。

 ただ、暇があったら俺に木の枝を持たせてチャンバラさせるのは勘弁して欲しい。

 こえー、この人の枝、風切り音がするよ?!


 そんなある日、枝チャンバラで姉さんにベシベシにされた日。

 うっかり強くなりたいって願ってしまった。

 今後、身体が大きくなり体格的にも姉さんに簡単に勝てるようになったときに、姉さんを守れるようになりたいと、ベッドの布団のなかで母さんと姉さんと一緒に寝てたときに願ってしまった。


 そのせいで例のユニーク魔法が発現した。

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