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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第1章-準備-
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テト

作者名とアカウントネームが違うため、私の活動報告に直接飛べません。目次の下部にある「作者マイページ」から、私のアカウントの活動報告の閲覧出来ます。


 村長の家で、『闇夜の影渡(ステルス・フィールド)』と『最終騎士(クラウン・シュヴァリエ)』を同時に起動させる。

 先程は『十全の理』は要らないといったが、今更捨てられる訳がない。

 生前の世界でいうPCの起動音のように、魔法陣が顕現する。


 どちらも、最低駆動であれば、自前の魔力で十分動く。

 走るための足に『最終騎士(クラウン・シュヴァリエ)』を展開させ、足元に『闇夜の影渡(ステルス・フィールド)』を使用した。


 この『闇夜の影渡(ステルス・フィールド)』でこの村で死んだはずの俺が、何故か『いる』ということはなくなった。


――ま、バレたらバレたで、その時はその時だ。


 そして、村長の家の玄関の扉をゆっくり開けて、滑りこむように外へ出た。


――良かった、村の通りには誰もいない。


 いたら、風もないのに、何者かが門扉を開くという、ホラー話が出来てしまう。


――別にもう、この村には俺はいなくなるのに、うわさ話が出来てしまうことを心配するのは何故だろうか。


 なんだかんだ言って、生まれたところだからだろうか。

 村にこれ以上、恐怖は与えたくなかった。


――なんだよ、もう結論出てるじゃん。


 俺にとって、姉さんと母さんと、メティアと、まぁ稀にテトしかいないこの村のことが好きだったんだよな。

 凄い今更だ。


 それに気づいていれば、怒り狂わなかった。

 いや、そうじゃない。

 

 村が本当に好きならば、もっと怒り狂ってもある程度無意識でセーブしてた筈なんだ。

 どこかで、この世界は俺の設定(チート)を披露する世界で、俺を中心に回っている世界なんだと思っていたんだ。

 だから、やり過ぎても「まぁ、いっか」で終わっていたんだ。

 でも、そうじゃない。そうじゃなかった。

 村人には村人の人生があった。


 それを蔑ろにした。



 感情の魔力も『あの状況ならば仕方がない』と村長さんは言っていた。

 でも、この魔力の使い方を感情に任せてただ流しするのではなくて、もっと効率よく感情の魔力を制御していれば……。


 いや、『化け物』と恐れられてもいい。

 最初から『十全の理』を起動して、幼少なのに高火力、高出力な魔法使いだと周知させていれば、そもそもこの村に賊が入らなかったかもしれない。


 母さんが昔、言っていた。

『潜在属性が虹色の子は、魔法使いにもなれる。騎士にもなれる。商人にもなれる。工商にもなれる。狩人にもなれる。そして、勇者にもなれる』と。


『化け物』になっていれば、少なくともこの村の『勇者』になれていたかもしれない。

 でも、

――今の俺は、この村に害を及ぼした『魔王』だ。


 母さんと姉さんと一緒にいたくて、『化け物』になることを恐れた俺は、最終的に『魔王』になってしまった。

 走って自宅に戻るつもりで『最終騎士(クラウン・シュヴァリエ)』を展開させていたのに、気付くととぼとぼと歩いていた。

 もう、ここには帰れない。

 自分の育った村の景色を目に収めるようにして歩いた。


 歩いて気付くと、目の前にテトがいた。


――そういえば巻き込まれずに、生きていたと村長が言ってたな。


 あの時の喧嘩もそうだった。

 そして今回もだ。


――怖い思いをさせた、申し訳ない。


 と頭を下げる。


 と、声に出しても聞こえる筈がないし、頭を下げても見える筈がない。


 なにせ『闇夜の影渡(ステルス・フィールド)』だ。


 魔力的にも視覚・聴覚的にも術者を完全に隠蔽するものだ。


 最低駆動でも効果は出る。


「ミルはズルいんだよ」


――なんか喋りだしたぞ、こいつ。


「僕との喧嘩はあのときの一回だけ、勝ち逃げするつもりかよ。

僕はまだ、ミルのことを五体不満足にしていない。


僕より強いミルが死ぬわけないんだ。

あの時の魔法もきっとミルが使ったんだ。

怖い思いをした、僕の子分は失禁してた。


……ミル、頼むよ。

このまま、姿を見せないで消えるってことはしないでくれ」


――。


「父さんも母さんも、アクト兄ちゃんが亡くなったことを、シスさんから聞いて泣いてた。

村の人たちはどう思っているかは分からないけど、少なくとも父さんと母さんは、ミルにお礼が言いたいと言っている。

この辺りにいるんだろ、ミル」


 ……最低駆動とはいえ、『闇夜の影渡(ステルス・フィールド)』を看破しただと……?!


「姿を見せないか、当然だよな。

 ……ミル、父さんと母さんからの伝言だ」


――(かたき)を討ってくれてありがとう。


「そして、僕からは」



――助けてくれてありがとう。



 そう言ってテトは俺がきた道へ向かって駆けて行った。

 その後ろ姿を俺は……眺めるしか出来なかった。


――ネガティブに腐ってた俺を戻してくれて、ありがとう。


 と、『闇夜の影渡(ステルス・フィールド)』の中から呟いた。




折角書いたので投稿します。

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