テト
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村長の家で、『闇夜の影渡』と『最終騎士』を同時に起動させる。
先程は『十全の理』は要らないといったが、今更捨てられる訳がない。
生前の世界でいうPCの起動音のように、魔法陣が顕現する。
どちらも、最低駆動であれば、自前の魔力で十分動く。
走るための足に『最終騎士』を展開させ、足元に『闇夜の影渡』を使用した。
この『闇夜の影渡』でこの村で死んだはずの俺が、何故か『いる』ということはなくなった。
――ま、バレたらバレたで、その時はその時だ。
そして、村長の家の玄関の扉をゆっくり開けて、滑りこむように外へ出た。
――良かった、村の通りには誰もいない。
いたら、風もないのに、何者かが門扉を開くという、ホラー話が出来てしまう。
――別にもう、この村には俺はいなくなるのに、うわさ話が出来てしまうことを心配するのは何故だろうか。
なんだかんだ言って、生まれたところだからだろうか。
村にこれ以上、恐怖は与えたくなかった。
――なんだよ、もう結論出てるじゃん。
俺にとって、姉さんと母さんと、メティアと、まぁ稀にテトしかいないこの村のことが好きだったんだよな。
凄い今更だ。
それに気づいていれば、怒り狂わなかった。
いや、そうじゃない。
村が本当に好きならば、もっと怒り狂ってもある程度無意識でセーブしてた筈なんだ。
どこかで、この世界は俺の設定を披露する世界で、俺を中心に回っている世界なんだと思っていたんだ。
だから、やり過ぎても「まぁ、いっか」で終わっていたんだ。
でも、そうじゃない。そうじゃなかった。
村人には村人の人生があった。
それを蔑ろにした。
感情の魔力も『あの状況ならば仕方がない』と村長さんは言っていた。
でも、この魔力の使い方を感情に任せてただ流しするのではなくて、もっと効率よく感情の魔力を制御していれば……。
いや、『化け物』と恐れられてもいい。
最初から『十全の理』を起動して、幼少なのに高火力、高出力な魔法使いだと周知させていれば、そもそもこの村に賊が入らなかったかもしれない。
母さんが昔、言っていた。
『潜在属性が虹色の子は、魔法使いにもなれる。騎士にもなれる。商人にもなれる。工商にもなれる。狩人にもなれる。そして、勇者にもなれる』と。
『化け物』になっていれば、少なくともこの村の『勇者』になれていたかもしれない。
でも、
――今の俺は、この村に害を及ぼした『魔王』だ。
母さんと姉さんと一緒にいたくて、『化け物』になることを恐れた俺は、最終的に『魔王』になってしまった。
走って自宅に戻るつもりで『最終騎士』を展開させていたのに、気付くととぼとぼと歩いていた。
もう、ここには帰れない。
自分の育った村の景色を目に収めるようにして歩いた。
歩いて気付くと、目の前にテトがいた。
――そういえば巻き込まれずに、生きていたと村長が言ってたな。
あの時の喧嘩もそうだった。
そして今回もだ。
――怖い思いをさせた、申し訳ない。
と頭を下げる。
と、声に出しても聞こえる筈がないし、頭を下げても見える筈がない。
なにせ『闇夜の影渡』だ。
魔力的にも視覚・聴覚的にも術者を完全に隠蔽するものだ。
最低駆動でも効果は出る。
「ミルはズルいんだよ」
――なんか喋りだしたぞ、こいつ。
「僕との喧嘩はあのときの一回だけ、勝ち逃げするつもりかよ。
僕はまだ、ミルのことを五体不満足にしていない。
僕より強いミルが死ぬわけないんだ。
あの時の魔法もきっとミルが使ったんだ。
怖い思いをした、僕の子分は失禁してた。
……ミル、頼むよ。
このまま、姿を見せないで消えるってことはしないでくれ」
――。
「父さんも母さんも、アクト兄ちゃんが亡くなったことを、シスさんから聞いて泣いてた。
村の人たちはどう思っているかは分からないけど、少なくとも父さんと母さんは、ミルにお礼が言いたいと言っている。
この辺りにいるんだろ、ミル」
……最低駆動とはいえ、『闇夜の影渡』を看破しただと……?!
「姿を見せないか、当然だよな。
……ミル、父さんと母さんからの伝言だ」
――敵を討ってくれてありがとう。
「そして、僕からは」
――助けてくれてありがとう。
そう言ってテトは俺がきた道へ向かって駆けて行った。
その後ろ姿を俺は……眺めるしか出来なかった。
――ネガティブに腐ってた俺を戻してくれて、ありがとう。
と、『闇夜の影渡』の中から呟いた。
折角書いたので投稿します。




