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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第1章-成長-
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成長③

 結局決めた属性は水だった。

 こういうのは大抵イメージである。

 魔力なんかは考えない。

 魔法の詠唱文も考えない。


 詠唱文もイメージにある程度方向性を持たせ、固定化させるためだけにあるものだと思っている。

 実際はどうだかは知らない。

 ひたすら水をイメージする。

 どうせ、詠唱文なんか今の時期に言えたとしても「ばー」とか「あうー」とかしか喋れん。

 そんなのでは意味が無いし、こちとら別世界から来た人間だ。

 舐めるな日本人。

 ゲームに小説、漫画にアニメ、イメージする対象なんて腐るほどあるわ!


 ということでまず水でイメージしたものは、津波。

 悲しいかな。

 ゲームにおいて水属性の最強魔法は大抵津波系。

 ラノベでも後半で使われる水魔法といえば津波系。


 ただ、これをイメージして出してしまったら、魔力が足らずにぶっ倒れるだろう。

 下手したら死ぬかもしれないし、出しきったらこのログハウスを破壊するかもしれない。

 そもそもとして出ない可能性が非常に高いが。


 では、ほかにあるとすれば何があるか。

 色んなゲームやラノベでは水魔法といえば、氷属性も水魔法の一種として計算されていることが多い。

 氷を使うかと思ったが、この世界の氷はどういう扱いだろうか。


 自然現象の氷は当然あるだろうが、水属性としてカウントされているのだろうか。

 俺がやったゲームの中に水属性と氷属性が分かれているのがあった。

 この世界では分かれているのか、分かれていないのか。

 設定集ではそんな指定はしていない。


 つまり、うっかり氷作って涼んだところで家族がこの部屋に入ったら何言われるかわからない。

 涼んで「水の発展系である氷属性使ってこの子神童ね!」と喜ばれるか、「水属性と氷属性が別枠で使えてこの子化け物ね!」と家族に恐れられる。

 いや、もしかしたら齢5ヶ月にして、家族の冷蔵冷凍庫という名を欲しいままにするかもしれない。

 が、化け物と呼ばれる方がダメージでかいので結局水球にした。


 早速、水球をイメージするが当然出てこない。

 今度は異世界モノに魔力供給についてよくあるイメージパワーを使う。

 使いきった中身がほぼない歯磨き粉チューブの後ろから丸めてひねり出す、あのイメージを自分の身体をチューブに、魔力を歯磨き粉に見立ててひねり出す。

 右足の先から血液とは違う未知の半液体(魔力)を幻視し股間を通り、左の足の先へ通す。

 その後、再度股間を経由し胸へ行き、頭を経由し左腕を通り、右腕の人差し指から半液体の魔力をひねり出す。


 そんなイメージを人差し指に集め、そこから蓋を開けた結果、指から汗みたいな水がポタポタ落ちた。

 まだまだとばかりにひねり出したところ、ひねり出していたものと落ちたもの全ての水に輝きが生じていた。

 キラキラと光っており、とても幻想的である。

 そんな幻想的な空間の中、意識のスイッチが急にOFFになり、そのまま倒れた。



 魔力の使い切りによる疲労で倒れたようだ。

 一日ぐっすりしてたわけではなく倒れたのもほんの数時間のようで、お腹の減り具合も一日食事を抜いたような飢餓感はない。

 使いきった割にはリカバリが早い気がするが、そういうものなのだろうか。

 とりあえず、ステータスという数値化が出来ないため、復活して早々だがもう一度ひねり出してみる。


 魔力が完全に回復して復活なのか、それもとも一定量回復で復活なのか、だ。

 倒れる前とほぼ同じぐらいのキラキラ光る水を出したところで、また倒れた。

 どうやら完全回復で復活のようだ。

 歳相応に絶対値も小さいだろうし、そうでもないのかもしれないが。


 結局、魔力のひねり出しから水球を作るまでに時間が掛かり、生後7ヶ月にして漸く水球を出せるようになった。



 ところで、最近になって姉さんが俺に話しかけてくるようになった。

 内容はなんてことはない、ただの話し相手だ。

 姉さんの思ったこととか、食事の感想とか、近くの村の友達の話とか、村の学校の話とか色々。

 話を理解しているとは思っていないのであるのか、割りと赤裸々な話をしてくるが

 赤ちゃん特有のポーカーフェイスで理解していないような雰囲気を醸し出す。


 例えば、だれこれがどこそこの男の子が好きで私に頼られたとか、俺が学校行くようになってだれこれとどこそこの人に会ったら反応に困るような話をする姉さん。

 前世では一人っ子だったためか、姉属性というものが好きでしょうがなかった。

 設定に姉というものを設定にいれてなかったが、設定だらけで雁字搦めになっているのも詰まらない。

 ちょっとぐらいイレギュラーがあってもいいんじゃないかな、とおもった。

 ……姉ちゃんってこんなに可愛い生き物なのか。


 話しかかけてから、決まって夕食の時間になるまで俺は姉さんの話を聞くようになった。

 彼女も話を聞く相手が欲しいのだろう。

 俺が母さんを取っているからな、代わりと言っては難だが俺が聞くよと意思表示に姉さんの服の裾を掴むとずっと話をしてくれる。


 その間の姉さんの表情を見ていると活き活きとしていて、血縁関係があっても思わずドキッとしてしまう。

 それぐらい素晴らしい笑顔になるのだ。



 授乳から離乳食になり、忙しくなった母の代わりに遊んでくれる姉さんと話し、空いた時間は昼寝か水球の練習を毎日してた結果、いつの間にか俺は生後から1年経っていた。

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