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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第4章-世界の分岐点- 侵攻(Invisible Legion)
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ICBM


――警告です。


――『戦熾天使の祝福』から承認されていないシステムを検知致しました。


 俺の八本の羽翼を全て分解され、再構築されていくのは得体のしれない何か。


「な、何をしている! ウェリエ!」

「あ? 見て分からない?」


――「遠隔操作(リモートスペル)」の起動を確認致しました。


――承認を確認致しました。


 まったく、これを分からないとか、ロボ好きの風上にも置けない。

 なんて考えたけど、よくよく思えばここ異世界で動く鎧(リビングアーマー)系はいてもロボはいなかった。


 そんなしょうもない話を脳内に浮かべ、俺は天へと高く指を差す。

 ここからザクリケルまで方角にして、大体……南。


――『戦熾天使の祝福』より『一殺の沈黙者(サイレントスナイパー)』の上級駆動を確認致しました。


――内部に『天界の天象儀』の通常駆動を接続致しました。


 目の前には白亜と金縁の物体、陶器と金属で出来た建築物が俺の身長から、一階建ての家屋の高さまでとカタチを成していく。


 だが、確かに分からないだろう。

 縁がなければ、想像も付かない。

 本当ならば、サイアに教える義理はない。

 だが、クオセリスが物凄く聞きたそうに見ている。

 それはワクワクという感情ではなく、恐ろしいモノを見るような目だ。

 だから、少しでもネタばらしをして、恐れを取り除いてやりたいと思うのは当然だろう。

 よって、言った。


誘導爆弾(ミサイル)発射台と、それを構築(つく)ってるんだよ」


――属性『大陸間弾道ミサイル』の作成に成功しました。


 俺の言葉に重ねて発言される『世界』の声。


――命名をどうぞ、『管理者』。


 命名権があるらしい。

 確かに前世の世界ではミサイル一発一発に固有名詞がついている。

『ピースメーカー』だったかな、そんな感じなものが色々。

 エクスカリバーとかそういうのも名前としてはいいだろう。


 だが、アイタタタな黒歴史ノートで名付けた名前(モノ)はそんな既存のもので満足するものではない。

 前世の世界の『神話』にあるような名前では、ありきたりで凄さとか想像が頭打ちだ。

 俺が作ったというこの世界で、『エクスカリバー』、『レーヴァンテイン』と言った使い古された武具は極力使いたくない。


 魔法ならまた別で、例えば稲妻のような速さで駆け抜け、逃さずに確実に命中し、防具を貫通し、内部で枝分かれして云々とか武器というよりも魔法に近い。

 なお、その武器の名前はゲイボルグという槍の名前だった筈だ。

 魔法の武器というより、明らかに魔法。

 そんな、イメージし易いそれを魔法として運用するのではなく、こんな異世界で『ゲイボルグ』なんて名称の武器を作って、それを使う輩が『クーフーリン』、または『フェルディア』ならまだしも、俺もしくはエルリネたち現地の異世界人が使うのだ。

 イメージが崩れるってレベルじゃない。


 ちなみに『内部で枝分かれ』という単語を聞くと、『拷問の供犠台(ハートレスアルター)』の「血茨(ブラッディソーンズ)」を思い出す。

 やっぱり、武器というより魔法だな。


――命名を確認致しました。


――『戦熾天使の祝福』、どうぞ『管理者』の願いを宜しくお願い致します。


 カリカリとハードディスクを書き込むかのような音。と、共に聞こえるのは、


――聖剣:セフィリエントを確認。


 という、『戦熾天使の祝福』の特徴である女性の声。

『世界』も女性だが、『戦熾天使の祝福』もかなり女性だ。


 目の前の発射台から魔力の燃焼するときの爆光が輝き出して、とても目に悪い色だ。

 それ以上に皮膚を()く感覚。

 これは酷い。

 もう二重、三重の意味で目立つ。


 だからやれやれだ。

 もう、本当に酷い。


――VLS式で射出します。衝撃に備えてください。


 とかの『VLS式』とか俺しか分からないワードだ。

『精神の願望』が張り付いている連中からすれば、意味が間違いなく分からない。

 はぁ、本当に嫌だ嫌だ。


――三、


 このカウントダウンも嫌だ。

 本当にやれやれだぜ。


――二、


 ぶっちゃけた話、さっさと射出しろって


――……一。


 思うわけです。


――射出を確認。


 その声と共に、爆風と爆炎と爆音が()い交ぜになった暴力が俺の周辺を(さいな)み、飛んでいった。

 爆光と爆音と爆煙が一緒くたに天へと向かって。

 初速がちょっと遅いが、なぁに。

 五分程度で着弾するだろう。


「たーまやー」

 大陸間弾道ミサイルと言えど、ちょっとした距離しかない。

 間違っても、一時間も二時間も掛かるような距離なんかじゃない。


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