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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第4章-ある日の一日- XV
329/503

参加


 タニャベと闘技大会について話していたところで、エルリネとパイソと……、


「……珍しい組み合わせだな。ナイアー」


 そう、エルリネとパイソ、エレイシアにセシル……とナイアーという組み合わせが隣と俺の対面に来た。


「む、悪い?」

「いんにゃ、珍しいなぁ……と」

 率直な意見を言ったところで、隣のタニャベは……俺の対面に座ったパイソに目が釘付けだ。

 より、正確に言えば……、胸にだが。


 因みにナイアーも対面だが、彼女には一瞥もくれてない辺りひどい扱いだ。

「…………、」

 自分でも分かるぐらいに人の感情の機微(きび)に疎い自分でも分かる。

 ナイアーに怒り(じわ)が間違いなく寄ってるし、怒気というかなんかこう黒い魔力が『ゴゴゴゴゴゴ』と渦巻いているようだ。


 対してパイソは全くの自然体で、寧ろ自分の胸をこう強調するかのように胸の下に腕を組んでいる。

 そしてそれをじっと見るタニャベ。

 それを何故分かるか。

 エルリネの「たはは」と乾いたような困り気味の笑いが見えるからである。


 それはさておき。

「どうしたんだ、団体で」と聞いてみたところ、

「私はパイソの付き添い」とはエルリネで、「私もパイソお姉ちゃんの付き添い」はエレイシアで、ぞろぞろと食堂に向かったので……とはセシルだ。

「あ、私はたまたまとそこで会ったから」というのはナイアーだ。


「ふーん」と空返事しつつも、パイソしか見ていないっぽいタニャベ。

 といっても、当然俺も空返事だ。

 俺はエルリネのあの困り顔は滅多に見れない。

 正直にいってあの顔だけでご飯二杯いける。


 三杯目にはひと押し足りない辺り。

 だが、毎朝のマラソンとかでは凛々しいエルリネしか見ていないので、非常に新鮮だ。

 だからじっと見る。

 ついでにエレイシアもみる。


 エレイシアは割りと血色良さそうで何よりだ。


「……で、パイソは?」

「……それなんだが、兄上」

 急に(かしこ)まるパイソ。

 何かを要求されるのだろうか。


「ん、なに?」

「兄上、すまない」

 急に謝られた。


――……なにか、


「しでかしたのか、パイソ」


――例えば剣技部で、真剣使ってぶった切ったとか。


「あ、いや。そういうわけでは……その」

 軽くそっぽを向いて、それでいて両手の人差し指をつんつんとあわせる辺り、何かはありそうだが……

 なんだろうか。


「あーパイソに代わって言うとですね――」

 エルリネが助け舟を出そうとしたところで、

「いや、私が言う」とパイソが(さえぎ)り、


「いや、兄上。私と共に闘技大会に出てくれないか?」


 それに対する応えは当然、


「断る」

 NOだ。


 俺の応えにパイソの目にじわりと水分が溜まる。

「……そこを……なんとか……」

「……言ったはずだけど、大会総ナメ間違いなしでつまんないぞ」


 なお、クオセリスとのデートについては言ってない。

 言ったら「私も、私も」と寄ってくること請け合いだ。

 特にパイソとエレイシアが。

 なんだかんだ言って、我が家の肉食系女子がこの二人だ。


「うぐぐぐぐぅ……」

 ぽろぽろと涙を流すパイソ。

 感情が豊か過ぎる爬虫類だ。


「先日の朝ン時も言ったはずなんだけどなぁ……」

 マラソンのときにエルリネに質問されて答えた。

 もちろん、パイソと黒柴がいるときにだ。


 パイソと黒柴の二人が我が家の中で好戦的な性格しているので、それに釘を刺したようなものだ。

 まぁ黒柴は『家族』が絡むと好戦的になるだけで、基本は非常におっとりしているが。

 この間の朝のマラソンのときに強盗現場に出くわして大捕り物をやっている中で、喜々としてパイソが参加して、あっという間にノシているところで、黒柴は何の反応を示さず……、いや欠伸をしたぐらいだったが、犯人の内一人が俺に向けて火球を撃ってきた瞬間、黒柴が一瞬で犯人の足元に距離を詰めて『世界を薙ぐ影なる灯火』の刀剣が犯人の足――それも"くるぶし"付近――を切断したときにはぎょっとした。


 その速さたるや『十全の理』で視力強化していても追いつかなかった……ということで、凄さが分かるであろう。

 とにかく速い。

 異常に速い。

 更に言えば『世界を薙ぐ影なる灯火』の刀剣の装填と振りかぶる姿が見えず、一瞬の内に火球が消滅し犯人の血が滴る足を咥えている辺り、番犬っていう世界じゃない。


 これにはパイソも「うわぁ……」と言いたげな顔で、他の衛兵さんたちも口の端がぴくぴくと痙攣(けいれん)し、犯人たちも真っ青の顔だった。

 確かに一瞬で距離――約五十メートル――を詰める奴。

 墓神戦では約三十メートルが一歩だったが、それを更に成長させたというべきか。

 とにかく、そんな化け物的強さの……使い魔。


 普通に怖い。

 その後は褒めて褒めてとばかりに目をキラッキラさせる黒柴に「やり過ぎ」と叱り、「でもよくやった」と褒めた。

 言葉を解さないただのわんこだったら、「やり過ぎ」だけでよいが、言葉を解する人化するわんこなので複雑な叱りもちゃんと理解してくれるのは助かる。

「ごめんなさい」と言いたげに自分の顔を前脚で覆う黒柴にキュンキュンしたが、それはともかくとして、それぐらい好戦的な性格の二人。


 黒柴は理解していなさそうに「?」な顔していたので、人語を理解するパイソは理解してくれているだろう、と思ったが、そうでもなかったようだ。


「殆ど、俺の魔法博覧会でつまんないって。絶対」

 対するパイソはえぐえぐと泣き、耳まで真っ赤だ。

「「焼灼の槍」と「焼夷の命令」、「神剣」、「御剣」に「天墜」とか封印したとしてもさ。相手の立場で考えよう。……「雪山の吹雪(クレバスストーム)」と「電磁衝撃(エレクトリックショッカー)」食らいたいか?」

 泣き声すらも無言になるこの空間。


 誰もが考えたのだろう。

「雪山の吹雪」と「電磁衝撃」は食らいたくないと。

「あー、そのなんだ。ウェリエ」

「なんだ、タナベ」


「その雪山と、衝撃とかいうのって――」

「ああ、そうだ。イニネスがガイアス先生にぶち込んだ魔法の内の一つだ」

 そう答えれば、ゾッとした顔になるナイアーとタニャベ。


「……確かに、あれは食らいたくないな……」

「う、うん。私も食らいたくない……」

 種を知っている一般ピープルな二人がゾッとするぐらいだ。

 何も知らない他所のクラスの人間だって、そんなビックリドッキリおもちゃ箱相手に死にたくはないだろう。


 こちらとしても人殺しにはなりたくはない。

 ザクリケルに泥を塗ってしまう。

 ただでさえ『宮廷魔術師』という兵器の称号を貰っている。

 だからやりたくない。


 ついうっかりが間違いなくある。

「焼灼の槍」が出ちゃった日には、誰もが死ぬ。

 ネトゲ的な言い回しだが、俺相手に属性耐性にMdefを極限まで上げる必要がある。

 更に重力と磁力の能力で、物理攻撃も出来る。

 よって、Defも当然高める必要がある。


 更に更に無詠唱なので高速で魔法の射出が出来る。

 鈍重に寄ってきてぶん殴るとかたたっ斬るには不向きなので、軽装で避けまくりつつ、ほぼ確実に当ててくる重力と磁力を防具で軽傷に抑えこみ、たまに当ててくる属性魔法を耐性とMdefで無効にしつつ長期戦。

 で、長期戦な訳だからいわゆるVit、つまりは体力が必要。


 誰が好き好んでこんなのと相手をしたいのか。

 俺が相手側だとしたら絶対に嫌だ。

 しかもいくら自分が耐性とMdefとDefで固めても、「雪山の吹雪」という視界を雪で埋め尽くす効果とかどうにもならないし、こちとら生半可な攻撃は全てカットする防壁もある。

 よってAtkとMatkという防壁貫通させるだけの攻撃力が必要で、視界を雪で埋め尽くすのはともかくとして、弓とか魔法で遠距離攻撃をしようにも雪で対象に取りにくい。


『魔王』もいいところだ。

 どこのラスボス、いや裏ボスだろうか。

 誰もが楽しむはずの闘技大会が何故俺の魔法博覧会にせねばいけないのか。

「そういう訳だから、一人でやりなさいパイソ」


 だが。


「あー、ご主人様。実はですね……」

 とはエルリネだ。

「闘技大会って二人参加が必須なんです」

「ほう?」


「なので、ご主人様の参加をして欲しい……そうなんです」

 泣くことを止めてちらりと上目遣いになるパイソ。

 普通なら「仕方がないなァ」と言っちゃうところだが、こちらとしても他人の楽しみを奪う気はない。

「だったらエルリネらが参加したら?」


「そう言われたら……そうなんですけど……正直私も嫌なんですよね」

 殴りあうのが……と、小さな声で呟かれる。

 確かに痛いのは嫌だろうし、何より俺が知っている彼女(エルリネ)は心優しい女性だ。

 こういうのを見る分にはいいだろうが、戦るのは駄目な分類だろう。


「じゃあ、エレイ――」

「私はやってもいいんだけど……加減が出来なさそうだし。"パス"」

 さっと日本語が出てきた、エレイシア。

 先日聞いた通り、どうやら『ガルガンチュア』が日本語を教えているようで、だいぶ日本語を覚えてきたようだ。


「まぁ、エレイシアは……ね、」

 殺戮系魔法の使い手である。

 "剣山"ともかくとして、"処刑者の剣"に"万力"とか魅せ技というよりも、コロシに特化したものだ。

 魅せ系の闘技大会には全く向かないだろう。


「わたくしも余り参加は……剣技部ですが」

 戦闘向けというか内政向けの能力のセシルに参加を頼むのは中々酷だろう。


「セリスも多分駄目……ということで、ご主人様に……」

「ああ、なるほど……ねぇ」

「残るは……イニネスと黒白柴たちですが……、イニネスは幼いですし、黒白柴たちはどうだか分かりませんが……少なくとも黒柴はご主人様に何かないと動かなさそうですし……」


 確かに。

 イニネスはそこまで好戦的じゃなく、俺の要請があって動くような性格だ。

 黒柴はやたらと高火力過ぎるきらいがあって、正直エレイシア並に闘技大会映えしないだろう。

 対して白柴は全くの未知だ。


 創神:クルカクルコが宿った――らしい――ことで、正直に言って黒柴に負けず劣らず強いだろう。

 少なくとも糸使いのお陰で相手を拘束からのみじん切りとか、糸使い対策していないと嬲り殺し請け合いである。

 俺だって糸使いというワードを知らなかったら、普通に殺されそうだ。

 そういう意味では大会映えはするだろうが……本人が余り動かない。


 元気に動くときは黒柴と遊んでいるとき。

 俺が黒柴をもっふもふと愛でていると、嫉妬したばかりに噛み付いて来るぐらいであとはずっと寝ている。

 俺が触ってもちょっとむずがるだけで、基本的に寝っぱなし。

 ティータが触ろうとすると、起きて俺の側または黒柴の側に寄って丸まって寝る。


 好かれているのか、単純にティータに触られたくないからの仕方なしに寄ってきているのか。

 多分きっと後者だけど、前者であって欲しいとは思う。


「…………あれ?」

「なにか」

「もう一人忘れてない?」

「………あー、それは――」


「我を忘れるとは酷いな、エルリネどの」

 そう、

「ニルティナ」

 が、忘れられていた。


「うむ、久し振りであるな。先日の休養日以来であるか」

「ああ、いつもイニネスありがとな」

「なに、主どのたってのお願いだ。気にせぬ」


「ふぉわぉう、で、出た!」

 変な悲鳴を出して仰け反るタニャベ。

「む、失礼な者だな。人の顔を見て驚くとは」

 もともとジト目のニルティナが殊更一層、ジト目でタニャベを睨む。


「いやいや、驚くよ! だって急に出てくる女の子だぜ?!」

「……それは、学校の中で励んでいたのが悪いのでは」


「……え?」

「うん?」

 お互い噛み合ってない会話のタニャベとニルティナ。


 この話についてはなんとなく分かる。


 別のクラスの男女が学校の中で……まぁ励むというか乳繰り合っていたところで、ニルティナが『眷属』率いて現れた。

 それだけだ。


 で、そういうことが多いので、神出鬼没のニルティナと呼ばれるようになった。

 なお、そういう乳繰り合いを目撃されるのが多いというかニルティナがよく出てくるので、色々と見つかりにくい乳繰り場での男女はいなくなったとか。

 行為に耽ってたらニルティナがいたとか、急激に冷めるだろう。

 間違いない。


 当然、そういう行為に耽っていることは黙らざるを得ないので……、神出鬼没のニルティナというのが噂になった。

 タニャベが知っているニルティナへの評価はこういうものである。

 対してニルティナは研究者肌しているし、噂はあまり気にしない性格のようで……まぁこんな感じである。


「話は聞いていた。我なら参加してもよいぞ」

 意外と良さそうな組み合わせだ。


 攻撃特化のパイソに、とにかくタフいらしいニルティナ。

 パイソが切り込みながら、ニルティナが守り固めるとかオーソドックスでありながら、昔ながらの戦術だ。

 草木ということなら幻覚といったものや、もちろん他にもデバフはあるだろう。

 パイソという攻撃役に場を荒らしてもらって、自身はデバフをばら撒く。


 それなのに、

「うぇー」と嫌そうな顔をするパイソ。

「なんじゃ、その顔は」とニルティナ。

「だってニルティナは、私のこと馬鹿にするし」


「馬鹿になんかしないが。……突っ込んでるだけで」

「馬鹿にしているし、事あるごとに"トカゲ"っていうし」

「そういうお前は我のこと"草"というだろう」

「"草"じゃん」

 さっきとは違った感じに、そっぽをぷいっと向いてのツーンとした顔である。


「そういうお前は、主どのが言ってた通りで言えば"トカゲ"じゃろう」

 とは、言っても日本語にしかない言葉らしいが"トカゲ"というものは。

「"トカゲ"は兄上だけに許された愛称なんだ。お前ごときが口にしていいモノじゃない」

「最初は名前で読んでいたが、我のことを"草"と呼んだじゃろう」


 その仕返しじゃ、らしい。

 対して「ぶうぶう」と可愛いこぶたのように鳴くパイソ。

「だから、嫌なんだよ。もう」


 事の発端はパイソの"草"発言のようだ。

「パイソ、止めなさい。反りが合わないのは分かったから」

「だって、兄上」

「だってもクソもないでしょ」


 第一、

「パイソがニルティナが嫌がることを言わなきゃいいんだから」

「ぶうぶう」

「ふっ、怒られて――」

「ニルもそういうこと言わない」


 しゅんと項垂れる二人。


「まったく」

 と瞬き後に、エルリネにも、


「で、ニルティナを忘れていた理由は」

 と、言っても大方、

「……不仲なんです。この二人」

「で、付き合いが長い。パイソ側に付いた……と」

 しゅんとテーブルの模様を見るように項垂れるエルリネ。


「はー、お前らなぁ……。……エレイシアは?」

「私もセシルも仲良くやってるよ?」

 ねえ? と小首をかしげながら、セシルに聞くエレイシア。

「ええ、わたくしも。もちろん、セリス様とも仲良くしてますね」


 ……余りこういうことは聞きたくないのだが、


「本当? ニル」

「ああ、エレイシアどのと、クオセリスどのにセシルどのにはよくして貰っている」


 完全に敵だけではないようだ。

 まあ反りが合わないなんてものは、人間なのだから当然ある。

 寧ろ今まで仲良くしていて表面化しなかったのが、奇跡とも言える。

 ならば、いっそのこと生活面はこういう状況でほっとくことにする。


 下手に仲良くしてもっと致命的なことが裏の裏に隠れてしまっては意味が無い。

 彼女たちには彼女たちなりの距離感がある。

 それを第三者たる俺が間に入ってはいけない。

 ただこんな異世界な世界で戦闘なんてものがある。


 戦闘時に不仲コンボでフレンドリーファイアされたら堪ったものではない。

 要は戦闘時には自身の感情を優先されては困るということ。

 その一環として、闘技大会に参加させるというのもありかもしれない。


――よし、


「……お前ら、二人に命令な」


 "青菜に塩"されたかのように項垂れるパイソとニルティナの二人。

 なんの反応も特に示さないが、是と取ろうか。


「闘技大会に二人一組で参加」

「……え?」

 と、聞き返すのはパイソ。


「もちろん、参加だけじゃない。そうだな代表決定戦ぐらいまでは頑張ってくれ」


 確か、一日目が予選、二日目が本選、三日目が本選の代表決定戦だった筈だ。

「三日目までやれたら今回の件は不問」

 わなわなと震える、パイソとニル。


「も、もし行かなければ……?」

 と、聞いてくるニルティナ。


「さぁ? それはどうかなぁ。何かやっちゃうかもねぇ」

 別にどうもしないが。

 ただそれを恐ろしいことと思ったらしい、二人は慄きながらも顔が決意に溢れており、成功かもしれない。

 これで戦闘時だけでもお互いを守り合う仲間だと、認識してくれたら万々歳である。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ところで、パイソはなんで参加を決めたんだ?」


 気になったことを聞いてみたところ、パイソは。


「ああ、剣技部がやたらと部長とかいう階級を狙う者が多くてな」

「……へぇ」

「私としてはどうでもいいから、そいつらにやりたいところだが……。わざと負けるのは嫌だ」

「……それが闘技大会の理由?」


 闘技大会の理由には全く被ってない。

「いや、……でな。中には弱い輩もいる」

「うん」

「弱い奴でも戦いに来るのは構わんのだが……面倒だから、一つ制限をつけようかなと」

「うん」


「闘技大会に参加した者だけが、『討伐に来い』と」

「…………、」

「これで私も余りの雑魚を相手に辟易することもなく、一定の強さの者が来る」

「…………、」

「対して相手は部長の座を奪えるし、奪えばその騎士とかいう役職に就けることが世間にしらしめることが出来る」


「負けがない……か」

「そう、お互いの目的に適っている。だから、参加だ」

「なるほど……ねぇ」


 それについて気になったことが一つ。


「武器とか防具どうすんの」

「それは私の自前がある」

「じ、自前……」

 大方、鱗だろう。

 とやかくを言わんや。


 本人自身の体重と本人自身の鱗という防御力に、鱗を加工しての刀剣。

 まだ見ぬ対戦者が不憫でならない。

 願わくば、怪我で済めばいいのだが。


「ああ、そうそう。パイソとニル」

「うむ」

「なに?」


 これだけは言っておく必要がある。

「魔法陣は使用禁止な」

「……えっ」


「えっ……ってなんだ」

「何故、魔法陣を使っては――」

「だって、ねえ。まあ、三日目は使用解禁してもいいし、命の危険感じての咄嗟ならいいけど」

 一日目と二日目は駄目、と念押し。

 理由としては、


「切り札的なものだし、切り札は常に切ってたら意味が無い」

「そ、それはそうだが……」

「だから、駄目」

「しかし……」

「駄目」


「わかった……」と、ニルティナ。

「ならば、よし」


 ということで二人の参加が確定した。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ところで、タナベ」

「な、なんだよ」

 先程まで全く会話に入ってこなくなった、タニャベを肘で突き、


「賭けるなら、彼女たち二人に賭けとけば間違いないんじゃない?」


 と、囁いておいた。




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