エンディング-建国神話-
あるところにちいさなちいさなふたごで、くろとしろのおおかみのしまいがいました。
とてもやさしくてかっこよくて、いもうとのことがだいすきなくろいおねえちゃん。
とてもあまえんぼうで、おねえちゃんからはなれないしろいいもうと。
まいにちおとうさんとおかあさんといっしょにくらしていました。
あるときこわいひとが、おおかみのおとうさんとおかあさんをつかまえてしまいました。
ふたごのくろいおねえちゃんは、しろいいもうととこわいひとからにげてにげて、にげていくうちにおもいました。
にげるためにだれにもおいつけないあしがほしい。
こわいひとをおいはらえるような、とてもこわいきばがほしい。
おいつめられてもたたかえる、すべてをきりさくつめがほしい。
たとえいもうととはなればなれになってもわかるように、どんなときでもひびくこえがほしい。
ずっといもうととあんしんしてねていられるようにしたい。
そのおねがいをしているくろいおおかみのおねえちゃんをしっている、しろいおおかみのいもうとはおもいました。
むずかしいことをかんがえなくても、くろいおおかみのおねえちゃんといっしょにいられればいい。
あるとき、くろいおおかみのおねえちゃんとしろいおおかみのいもうとが、はなればなれになりそうなときがありました。
それをふびんにおもったかみさまが、くろとしろのちいさなおおかみをひろってちからをあげました。
くろいおねえちゃんおおかみには、すべてのこわいことをかみくだくことができるおおきなきばとつめ、そしてどこにでもひびくこえを。
しろいいもうとおおかみには、たいせつなものとずっといっしょにいられるように、そのねがいをあんでむすべる、ちいさなてを。
おおきなおおきなつめのくろいおおかみが、おおきなこえでないて。
ちいさなちいさなてのしろいおおかみが、ちいさなこえでないて。
なかよくいっしょになれたふたごしまいのおおかみは、ひとりさびしくしているかみさまといっしょにいようとおねがいをしました。
「かみさま、ぼくたちはもうぜったいにはなれないから。かみさまもいっしょにいよう」
けれど、かみさまはくびをよこにふっていいました。
「きみたちとはちがうそんざいだから、いっしょにはいられない」
そのことばに、にひきのちいさなちいさなくろとしろのおおかみはなきました。
まいにち、まいにちなきました。
ずっとしまいでいっしょにいられるようにしてくれた、かみさまといっしょにいられないなんて。
けれど、とかみさまはいいました。
「このきみたちににているくろとしろのおつきさまがいるあいだは、ぼくときみたちがいっしょにいられるじかん」
だから。
「そのときは、いっしょにいよう」
こうしてくろとしろのふたごのおつきさまがみえているあいだは、国のかみさまとふたごのおつきさまのかみさまがかぞくとなり、ふたごのおつきさまのかみさまのつかいであるおおかみが、かなしそうでうれしそうになくのです。
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聖域ウェリエの建国神話『ちいさなちいさな双月の狼神』の絵本より抜粋。
蒼紅の方で投稿予定でしたが、こっちに投稿します。




