暗がり
相変わらず書き溜めることが出来ません。
書き溜めることが出来る作者様を私は尊敬します。
今日の放課後の遊びはまた『どんかく』らしい。
このどんかく、結構バカにしていたが大人達から見ると魔法の訓練に素晴らしいらしい。
なんでも、
1.隠れるため、危険からの自身の隠蔽能力を上げられる。
2.探すための、検索能力が高められる。
3.見つかっても、鬼が守っているモノに触れればいいのだから、走る能力も上がる。
他にも色々あるらしい。
ここまで完成している遊びは無いと褒めちぎられるが、この世界の子どもって割りと『鬼ごっこ』と『かくれんぼ』と『剣の打ち合い(チャンバラ)』と『魔法の実践練習』しかやってないのかと、心配になるほど何もないのかね。
とにかく、遊びはどんかくに決まり、俺たち子どもたちはは鬼役の姉さんとアクトさんらを残して、皆隠れるように散った。
森の入口へ逃げる子どももいるし、外の学校の陰に隠れる子どももいる。
だが、俺は学校内に隠れることを選ぶ。
なにせ、俺が本気で隠れると無駄に『十全の理』が気を利かせて、『闇夜の影渡』という隠れることだけならオーバースペックの魔法陣を使用するからだ。
こいつは目の前に人がいようが、使用した瞬間に『視覚』『聴覚』『熱源』『魔力』の認識から外してくれる。
初めて『十全の理』に使われたとき、かくれんぼで目の前にいても気付かわれないで大人達に山狩りされたぐらいだ。
そんなモノを自動起動してくれるとても有り難いモノからな。
全くなんてオーバースペックなんだろうなこれは。アハハハハ。
あ、これ『十全の理』に対する嫌味です。
俺は学校内の使われていない部屋の陰に隠れる。
使われていないだけあって薄暗く、生活魔法の『光源』がないと探しにくいところだ。
この部屋の中には村には珍しいカーテンがあり、隠れるのは最適……ではない。
カーテンに隠れるのは愚の骨頂だ。
誰でも気になるからな、カーテンの中は。
だから俺は教卓傍の長机の中に隠れる。
ぱっと見、直ぐに見つかりそうだが意外と教室に入ったばかりで、さーっと警らするルートならば、他の長机や椅子に隠れて見えない。
つまり、灯台もと暗し大作戦。
と、一人でニマニマと盛り上がっていたところ、メティアがこの教室に入ってきた。
メティアは鬼ではない。
彼女は魔法が使えない。
この遊びは魔法が使えないと色々とキツい。
だから手加減として彼女を最初から鬼にしない、というローカルルールが出来たのだ。
俺は長机の陰から出て、メティアを誘った。
「メティア、一緒に隠れよう」
すると、彼女は一人で心細かったのであろう涙目で俺の傍に走ってきた。
アメフト部もびっくりな腰を使ったタックルを、俺の腰に向かって突っ込んできた。
思わず、蛙が潰れるような声を出してしまう。
彼女も最近、女の子らしく丸くなってきていい匂いをしてくるようになった。
姉さんは官能的な匂いがヤバかったが、彼女も最近はヤバい。
この世界はシャンプー、石鹸なんてものは無いはずなのに、女の子の匂いが薫ってきて俺の股間にクる。
そんな存在が俺の股間もとい腰にタックルしてくるのだ。
腰に対するダメージは二重の意味ででかい。
メティアが俺の腰にしがみついて、生前の世界にいた猫のように、ぐりぐりと顔を擦り付ける。
おぅふ、腰(≒股間)に大ダメージ。
こんなときに脳内に選択枝が現れる。
1.血縁関係はないぞ! さあお食べ。
2.彼女から襲ってきたんだ、ここで食べてあげないとな!
3.暗い教室のシチュエーションじゃないか。ここで『闇夜の影渡』使ってにゃんにゃんしてもいいのよ。
エロゲじゃねーか!
エロ以外ねーのかよ! と脳内で天使と悪魔に文句を言うが、悲しいかな悪魔しかいなかった。
とにかく、ぐりぐりと顔を擦ってくる彼女の顔を上げさせる。
妙に艶っぽく蕩けているように見えるが、大丈夫かこいつは。
遊ばずに帰ったほうがいいんじゃないかと、心配になるぐらいにメティアの顔は赤かった。
彼女を長机の隅っこに追いやり、蓋をするようにして俺も隠れる。
そういえば、メティアの顔が赤くなってチラチラ見てくる姿を見るのは、三歳ごろのあの夕焼けの教室イベント以来だなと、ぼんやりと思う。
あの時も、教室は薄暗かった。
そんなことをぼーっと考えていると彼女がじっと俺を見てきていた。
気付かない振りをしていたが、限界だった。
彼女に声を掛ける。
「なんだよメティア、俺の顔になにか付いてる?」
彼女は、無意識に俺の顔を見ていたようで、長机の狭い中でわたわたと慌てる。
「違くないけど違うの!」と強い口調で言われるが、じゃあどう違うんだ? と聞いても多分、答えは返ってこない訳だ。
「ふーん」と言って強引に話を切る。
慌てた彼女は可愛かった。
しばらくしても鬼はまだ来ず、暇だったのでメティアに話しかけた。
「顔赤いけど、メティア風邪?」と無難に聞く。
ここでにゃんにゃん的なことを言うと、俺の世界が終わる。
間違っても言えない。
勘違いだったら困るしね。
下手なこと言って「あの人と王国の学校行きたくない」なんて言われたら末代までの恥である。
俺が進学確定して安心している父さんと母さんに「ごめん行けなくなった」なんて、言えない。
そんな俺の気持ち悪い考えを知ってか知らずか、彼女は顔が赤いまま頭を振った。
「ううん、風邪じゃないよ」と、答えるがこの赤さはなんだろうか。
暗くても分かるほどのこの赤さ。
風邪じゃなかったら、なんなのか。
そんな彼女をイジるようにして、鬼が来るまでの間、俺とメティアは暗い教室の中で小声で話していた。




