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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第1章-関係-
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弟への想い(シス・フロリア視点)

R15って難しいですね。

 弟が5歳に差し掛かったとき、雰囲気が変わった。

 いつからかあの怖い気配は鳴りを潜め、残るは火属性の強い気配と水属性の気配。

 そして、なんとなくだけどかっこいい雰囲気を醸し出していた。


 雰囲気を説明しろと言われても難しくて説明出来ない。

 でも、ただあの赤い身体の不細工がこんなにかっこいい雰囲気を纏うだなんて、男の子は卑怯だと思った。

 それに比べて最近の私は、「女の子らしくなってきた」という。


 ◇◆◇◆◇◆


 私はお父さんの言う『騎士』になりたかった。

『騎士』は身体を鍛えて、戦闘の要となる『魔法使い』を守ることだと言った。

 お父さんは、私を見て「俺の娘だから騎士になれる」と言ってくれた。

 その言葉を励みに身体を鍛えた。


 朝起きたら必ず家の周りを走るようにしていたし、お父さんに作ってもらった木剣を振ってから、朝食を食べるようにしていた。

 最初の内は、弟も一緒にやらせるようにしていたが、弟は『騎士』を目指さない。

 弟に『騎士』を目指せるような体力づくりを仕向けるのは、彼に悪いと思って最近は一人でやっている。


 毎日走り込み、火属性の魔法を使い自衛魔法を練習する。

 私は『騎士』を目指す以前に『女』だ。

『女』は、『男』に比べて基本的には力が弱い。

 実際、昔は強引に弟を組み伏して一緒に寝ていたが、今だと簡単に抜けられる。

 そんな『女』だから、襲われても逃げられるように自衛魔法をひたすら練習する。


 私は『女』として産まれたくはなかった。

 弟は『男』って感じがするようになった。雰囲気もそうだし、彼の匂いを嗅ぐだけで心と頭がクラクラするようになった。

 羨ましかった。

 悔しかった。

 私も『男』として産まれたかった。


 別に騎士などを目指さない、年上の女の人は村の農作業をしながら、ここかどこかの村の男の人と結婚する予定だと言っていた。

 そんな女の人と私は体型が似てきた。

 性的象徴の胸が膨らんできた。

 私の胸が膨らんだことで、アクトとかテトは私の胸を見るようになった。

 見られることで私は『女』なんだ、と嬉しいと思う反面、私は『騎士』になるのには障害となる『女』なんだと自覚させられる。


 私は『男』に守られる『女』なのだ。

 私は大好きな『(おとこ)』を守れない『(おんな)』なんだ。

 そう考えると私は涙が止まらなくなった。


――姉さんは、僕が守るから。

 といった弟の台詞も思い出される。

 あの時から、弟にとって私は『女』だと思われていた。

 そう思われていたことが悔しい。


――弟を守りたい。ずっと守りたい。弟が結婚するまでずっと守りたい。

 と私が願っていても、『女』が結婚するのは成人してすぐだという。

 私は弟を守ることが出来ないまま、『女』になる。


 そんなのは嫌だ。

 だから、別の学校に行けるようになったとしても、弟と一緒にいたいと思った。


 そう思ったことを、女の人として先輩であるお母さんに相談した。

「騎士として守りたい人がいて、でも『女』だから守られる存在で。

でも、そういうのは嫌だ」と言った。

 お母さんは、その人の成りとか「誰?」とかは聞かないで、そのひとの近くにいるとどうなる? と聞いてきた。


 私は。

「ずっと嗅いでいたい匂いで、心臓がどきどき言って頭がくらくらしてる」と、即答した。


 お母さんは私が弟にべったりしているのは知っている。

 だから、「弟のことが」とは言わずに、自分の気持ちを伝えた。

 するとお母さんは。

「好きなのね。その人のことが」

「好きってなに?」

「ずっと一生その人といたいってこと。そうなのでしょう?」

 お母さんに聞かれた。

 少なくとも今は、それこそ一生傍にいてくれるのなら嬉しい。

 でも、弟の人生を縛るのは姉としてやってはいけないことだ。




 それでも、私は。


「一生、ずっといたい」


 ……私の想いは変わらない。

 姉としてはやってはいけない選択だろう。

 それでもどうせ『女』として強要されるのであれば、私は『弟』とずっといたい。


 ◇◆◇◆◇◆


 私は『女』らしく身体に丸みを帯びてきた。

 そんな私と弟は寝る度に逃げるようになった。

 丸みを帯びて『女』らしくなったから、恥ずかしいのだろう。

 私は気にしない。

 弟が好きだから、襲われても気にしない。

 むしろ歓迎したい。


 だから寝るときはいつも以上に身体全体で抱擁するように弟を抱く。

 彼の顔が私の胸に来る。

 寝息が私の胸に当たり、くすぐったい。

 そして、お返しとばかりに弟の耳を甘咬みする。


 ふにふにコリコリとした耳の軟骨がとても愛おしい。

 唇ではむはむと甘咬みし、舌で耳の軟骨周辺を水音立てながら愛撫する。

 弟の匂いがする口も、嗅いでいたい。

 だから私は口づけをする。

 舌も這わせる。


 弟が起きたらなんて言われるだろうか。

 はしたないと言われるだろうか。

 それでも、それでも弟が好きなのだ。

 弟を見ている内に「大人になりたくない」と思ったその気持ちが、今は霧散して「早く大人になりたい」と思った。

 大人になったら思う存分に、昔お母さんとお父さんがよくやってたことを、弟とやろう。


 みんなから異常だと言われるかもしれない、この想いは危険だと。

 それでも弟を守りたい。

『騎士』として『(あね)』として『(おとうと)』を守りたい。



 ◇◆◇◆◇◆




 私は貴方が好き。


 貴方が私を想わなくても、私は変わらない。


 誰がなんと言おうとも、この想いは色褪せさせることはさせない。


 願わくば、貴方と共に(削れて読めない)


 古代の歌詞の碑文:(削れて読めない)-シス・フロリア-

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