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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第3章-歴史の分岐点- または-世界の分岐点-
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竹馬の友

 基本学校生という身分もあともう少しだ。

 特記すべきイベントは特になかった。

 というのも、生前で言うと小学生時代に何かイベントがあったかと聞かれたら、胸を張って「無い!」と言えるほどに、小学生時代に何もなかった。

 運動会が六回と仮装大会一回、職業体験学習が一回、修学旅行あとはプールとかそんな程度。


 あとはひたすら遊ぶだけ。

 竹馬とか一輪車とか縄跳びに始まり鬼ごっこが多くて、あとは某携帯モノクロテレビゲームが多かった。

 チャンバラは既に卒業していたか。

 某巨大怪獣と殴りあう某巨大宇宙星人の真似とか、悪い改造人間に飛び蹴りして爆発させるバッタ顔のヒーローの真似ももちろん卒業していた。


 では、こういった微妙に中世欧州要素がある異世界では、小学校時代になにをやるか。

 当然携帯テレビゲームのようなデジタル系はない。

 この世界は電力というよりも魔力が主のようだから、魔力で動くテレビゲームはありそうではある。

 だが、ないだろう。


 あとはアナログな遊びだ。

 鬼ごっことか竹馬とか、あとチャンバラか。

 竹馬は自作出来なくもないが、正直あれの面白みが分からない。

 あれは「お前より背が高いぞ」と楽しむものなのか、どうなのか。

 と、童心に帰って危険と言われている森の中に入って、竹馬になりそうな木を切って作った。


 作っている間はとっても楽しかった……が、完成しても特段面白いとは思わなかった。

 だが、生前の幼少時にはなかった体格と思考回路でというべきか、バランス感覚というか。

 それのお陰で、竹馬で階段の昇り降りに始まり、ジャンプや走ることも出来たので満足はした。

 ただ、当時であればヒーローというか、「スゲー!」と羨望の的だったが、今やそんな声はなく。


 来るのは、「ウェリエさん、こんにちは」とかそういう挨拶。

 誰か見てよ! この技術! なんて思っても、竹馬なんて見てても面白くもないのかもしれない。

 いや、事実やっている本人も詰まらない。

 と、思ったらティータが食いついてくれた。


「"バランス感覚"いいんだな、ウェリエって」

「だろ?! これ結構難しいのに、誰も気にしてくんねーんだ!」

「だろうなぁ。俺も剣合わせぐらいしかやらないけど、たまにそういう遊びもやりたくなる」


「お、じゃあやってみるか。ティータも」

「貸してくれんのか?」

「ここで貸さない、なんて言うわけないだろ」

「それもそうか」

 と言って竹馬を渡した。


 最近ティータは、俺よりも早く成長期が来たようで一回りほど身体がでかい。

 俺よりもでかい竹馬だが、ティータが乗るとちょうどいい大きさだ。

「お、ほっ……と」

 難なく竹馬に乗るティータ。

「お、ティータも感覚いいな」

「だろ。俺は割りとこういう、身体を動かす関連のものはなんでも出来るんだよ」


 ほうほう。

「体術はティータのほうが上だもんなぁ」

「おいおい、止せよ。俺なんかよりもウェリエはともかく、エルリネさんが凄いわ」

「それ、エルリネに言ってやってくれ。喜ぶから」

「言ったけど、いやいやと謙遜してお前ヨイショが凄いぞ」


 既に言ったことあるのか。

「凄すぎて、師事したいぐらいだ」

 へぇ、ティータにそこまで言わせるのか。

「どう凄いんだ?」

「あぁ知らないのか。以前、剣合わせを願ったことがあってね。付き合ってもらったんだけど、歳上だからとかそういうのを抜きにしてもえらい強かったんだよ」

 ほほう。

「もうね、冒険者とかと殴り合ったこととかあるけど、そんなのとは比じゃない」

「へぇ」

「隠れる、隠れないとかそういうのじゃない。腕掴んで空中に投げても、空中で受け身取るし、掴んでも直ぐに(ほど)くし。

っていうか、掴んでも直ぐ解くとかなにもんなんだよ。服を握っているのに、一瞬後には握っている中身が無くて離れた先にエルリネさんいるし」

「…………、」

「空中で受け身どころか、空中に足場があるのか立体的に動くし。地面に落としても直ぐに受け身とって、離れたと思ったら模造短剣で首狙ってくるし。ホントなにもんだよ」

「……」

「ウェリエも早いが、目がまだ追いつく。が、エルリネさんは追いつかん」


 家族が他人に認められると、本当に嬉しい。

「っと。竹馬返すわ。元々ウェリエのだしな」

「ん、あ、いいよ。持ってけよ」

「え、なんでだよ」

「俺一人で遊んでてもつまんないし」


「だったらなおさら」

「それをティータにあげて、もう一つ作ろうかなと」

 ティータは驚いた顔をして

「これ、自作?」

 そう聞いてきた。

 当然、自作であるので、

「うん、自作」

「"マジ"?」

「うん、"マジ"」


「そんな簡単に作れるものなのか?」

「簡単だよ。ちょっと森に入るけど」

「森って……おい。危険なところに入るんじゃねーか!」

 嫌そうな顔をするティータ。


 だが、

「いや、そうでもないぞ。俺が旅していたときなんか、平地を歩くんじゃなくて森を歩いていたからな。むしろ森のほうが歩きやすいと思う」

「いやいや、いやいや。それは無いわ。だって森の中って毒蛇がたくさんいるんだろ。無理だろ」

「いや、エルリネに聞けば分かるけど、旅の大半は森の中だったよ」

「えー?」


 まぁそういうわけで。

「森の中は俺にとって、危険なところではないから。別に木を切ってくるぐらい、訳もない」

「ふーん……、そんなんだったら宮廷魔術師じゃなくて、冒険者になればいいんじゃね」


「なんで」

「冒険者は長時間、森の中にいたりするから、ちょうどいいんじゃないの」

「やめてくれ、あんな連中なんかになりたくない」

 あんな下衆どもなんかが、仲間面してきたらぶっ殺す自信ある。


 ……何考えているか分からん奴らは怖い。いきなり剣抜いてきたら殺すわ。


 風呂ン中ではお互い丸腰だったので、そうでもなかったが。


 結局その日はティータと一緒に森の中に入って、竹馬用の木を切り出して一緒に作った。

 やっぱり作っているときが楽しい。


 因みに、余った竹馬はカクトに進呈した。

 バランス感覚がある俺とティータに比べて、カクトはない。

 貰った彼は物凄く困った顔をしていた。



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