表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第3章-ある日の一日- II
199/503

風邪


 流石にこの九歳に近い年齢だと男性はまだまだだが、女性のほうはだいぶ成長期がきており、みな色艶出てくるようになるようだ。

 というのも、まだまだロリボディなエレイシアはともかく、セシルとクオセリスが寸胴体型から起伏が出てくるようになってきた。

 セシルは小さいながらも、ボンキュッボンの片鱗が見え隠れしており、対するクオセリスはセシル程でもないにせよ、こちらも兆候が見えている。

 この二人と、成人しているであろうエルリネとパイソ。

 そして四人、いやエレイシアも含めると五人とも、俺に好意がある。


 最早、据え膳だ。

 毎日一回は、モテない男性が持つ特有の「あれ、あの子俺に気があるんじゃね?」という思考をさせる仕草を、彼女たちが取るものだから、手を出したいと思ってしまう拷問。

 手を出したら最後、神聖な学び舎が酒池肉林の爛れた性活に突入するので、そういったことは絶対に出来ない。

 だから拷問。


 ほかにもそういう思考にさせる案件もある。

 それは何か。


「最近の夢がもうピンク過ぎる……」

 そう、非常にピンクなのだ。

「天狗じゃ、天狗の仕業じゃ!」ではなく、「夢魔(サキュバス)じゃ、夢魔(サキュバス)の仕業じゃ!」ってぐらいにピンクな夢を見る。

 この世界、夢魔がいるのか知らないけども。


 夢に出てくる夢魔が、揃いも揃ってエルリネとエレイシアとパイソの三人。

 やたら生々しいし、夢のなかなのに声が耳に、匂いが鼻腔に残っている。

 溜まっているのかと思うものの、そういうときは大抵下着が汚れるがそんなものもなく。

 本当に夢魔いるんじゃなかろうか。


 エルリネとパイソはこの一家の中でお姉さん枠なので、無意識に考えちゃっている可能性はあるにはある。

 最初期はパイソとエルリネのローテで、ピンクな夢を見ていたが、ここ最近になってエレイシアまで参戦してきた。

 サーベルタイガーとはいえ、基本が猫属性の彼女。

 夢の中で甘える姿は効果は抜群だ。

 チェリーボーイのはずなのに、なんで知ってるんだろ、俺……。


 とにかく、エレイシアが出てくるともう夢が止まらない。

 本物の夢かと思うぐらいに生々しい、本当に助けて欲しい。

 自分のクラスは元より、この女子寮という異空間で弾けそうになる。


 更に非常にローテを組まれており、大体二日に一回は見ている状態。

 ほんの稀に最後にピンクを見てから、五日めでまたやっている夢を見たりとかあるけども。

 体力が持たない、がこんな夢を見たなんてうっかり漏らせば、「頭大丈夫?」と逆に心配されそうであるし、同じ男性のカクトには言えない。

 ティータは「死ね」と冷めた目で言われそうだ。


 アークは考えたことがなさそうだ。


 そんなこんなことをやっていれば、体調は簡単に崩す。


 ここまでは前フリだ。

 こういうことがあったため、俺は今授業を受けずに部屋で寝ている。


 体調を崩したところで起きるのは、風邪。

 どうやら体調を崩した際に、風邪菌が体内に入ったようでとても身体が怠い。

 頭がぼうっとする中で、看病する者は。


「兄上、寒いとか熱いとかないか?」

 パイソが隣にいる。

「とくに、ない……かな」

「そうか。では、知識にあるものを作ってくるから、しばらく離れるがよいか?」


「お前……包丁持てるようになったのか……」

「包丁? ああ、料理剣のことか。

……この間教えてくれたであろう。あれ以来私も練習しているものだ」

 そう言ってたゆんたゆんな木の実をぶら下げた胸を反る彼女。

 

 あのじゃがいも似のマクネオロロを桂剥きにした日。

 これである程度、料理の基本は出来るな! と喜んだのも束の間。

 このトカゲは、我が家の包丁の柄を握り潰した。

「すまない、加減をし損ねた」というのは彼女の弁。


 更に言えば、まな板を寸断し包丁も折った。

 よって彼女は包丁を持って桂剥きしか出来ない娘になった……というのは、過去の情報のようだ。

 胸を反ってから、俺が何も言わなかったのを是と取ったのか、そのまま物置(マイルーム)から出て行った。

 彼女の潜在属性はどうやら「火」のようで、姉さんのように近くにいるとぽかぽかと温まってくる。


 なので、寒い日は暖房になるけども、このようなときにいられると暑くてしょうがない。

 かといって「お前、熱いからあっちに行って欲しい」なんてことは言えない。

 彼女だって心配して来てくれているのだ。

 邪険なんて出来ない。


 体温の暖かさはともかく、人化しているからこそなのか。

 なんというか、非常に女性の匂いがする。

 安心できるというかそんな感じの。

 だから、とにかくこのように弱っているときにパイソがいるのは、非常に嬉しい。


「…………、」

 ……パイソはエルリネよりしっかりしてそうで、実は……な娘のようだ。

 今、耳を傾けていたところ、木皿が滑って落ちたような音と彼女の「うわぁ」という声が聞こえた。

 エルリネ並におっちょこちょいだ。


 彼女の扉越しの声を聞きながら、気怠い身体は瞼を閉じさせてくれた。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 目が覚めて横を向けばパイソが同じ布団の中で寝ていた。

 正直ギョッとするが特に何もされていないようだ。


 枕元には彼女が作ったであろう、底が深い鍋があった。

 寝たことにより気怠い身体がだいぶマシになっており、ちょっとだけ口に含むと……まさかの甘生姜のスープだった。

 冷めているが、冷めているからこその美味しさ。


 蜂蜜と混じった生姜の味はとても美味しく、のどごしがとても気持ち良い。

 底が深いスープ用の木皿に何度もよそった。

 結構量が多かったが、生前に飲んだ懐かしい味を思い出してしまった。

 だから、夢中になってしまった。


 残ったのは、パイソ一人分しかなかった。

「ごめん、勝手に飲んじゃった」と書き置きを残して、眠くなったのでまた寝た。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 口に違和感があったので起きた。

 パイソからキス、というよりも舌を入れられていた。

 エロいとかそういうのを抜きにして、ただただ驚くばかり。


「ムカついた」とかそういう訳じゃないけども、寝ている相手にこういうことはするな、とばかりに「がぶっ」と噛んでやった。

 声なき絶叫が聞こえたあと「兄上が起きちゃったぁ」と情けない声を出してきたので、理由を聞いてみればなんでも「蜂蜜入り生姜スープ飲まれたから」だそうだ。

 更に詳しく問い(ただ)すと、生姜――よう分からん名前だった――はともかく、蜂蜜が彼女に取ってちょっとした理由になるようで、飲ませたあと思わず……らしい。


 俺が噛んだ舌、歯と歯の間から先の舌先が諦めていないとばかりに上歯茎を舐めてくる。

 舌出しっぱなしなのに、器用に話せるリザードマンもとい『竜種』って凄いなと思った。うん。

「勝手に何かするのは絶対やらないこと!」と彼女に伝え、舌を右手でむんずと掴み引きぬいた。

「次やったらパイソの舌、ちょん切るからね」とちゃんと釘を刺しておく。

 じゃないともう一度やりかねない。


「"ちょん切る"って……」

「そのままの意味だよ、舌が侵入しているのを見たら、風属性の魔法で真ん中辺りからこう……ズパン、と」

 ジェスチャーで人差し指と中指でハサミを作り、ズパンという発言の際にハサミを閉じる。

 そのジェスチャーに「ヒッ」と短く悲鳴をあげるパイソ。


「……ごめんなさい」

 蚊の鳴くような声で謝罪が聞こえ、「ごめんなさい。うぇああああん」と泣き始める彼女。

 思いの外効きすぎたようだ。

 猫のヒゲのように、トカゲに舌がないのは死活問題となる。


 生前の世界のトカゲの舌は匂いを検知するものだった。

 つまり舌が無いと餌となるものがどこにあるか分からないし、危険も察知できない。

 この世界のトカゲもとい『竜種』はどうだかは分からないが、似たような状態になる。

 舌をちょん切ってその後の生活は出来るかもしれない。

 ……切った張本人が彼女を介護できれば。


 餌となるご飯を彼女に用意し、彼女の代わりに危険を教えるなどそういったことができれば、きっと可能かもしれない。

 でも、彼女自ら、エルリネに言った千年は生きるという発言。

 俺は千年生きるような種族ではない。

 千年も彼女の狩りの代わりになるようなことはできない。


 目の前のトカゲくんは今までに無いぐらいに「びぇえええええ」と大泣きだ。

 舌をちょんぎられた自分の未来を想像してしまったのであろう。

「こら、パイソ。もっと音量下げなさい」

 と伝えるも、ギャン泣き。


 いくら(しつけ)といえども、彼女の今後にも掛かるようなことである。

 そんなものを脅迫(しつけ)に使った俺が悪い。

 目の前のトカゲがギャンギャン泣く。

 そういえば見た目成人しているとはいえ、生まれてから間もないとかなんとか言ってたような……。

 というぐらいにギャンギャン泣く。

 いくら日中とはいえ、女子寮内に響くので俺が取った行動は、お互いの口と口で塞ぐこと。


 生前、少女漫画だかレディースコミックで、ギャン泣きしている女性にこう口を塞ぐにはこうするのがベストとかそんな奴を読んだ。

「んなアホな」と考えたし、「こんな知識を知ってどうすんだ、俺。使う相手いないのに」とか言っちゃったりしたものだが、それを今とっさにやっていることから、あの知識は割りと心に残っていたようだ。

 口が塞がれたことにより、ギャン泣きモードから一気にクールダウンしたパイソ。

 確かその漫画でもそんな感じのことが起きた。

 で、この後漫画では舌を入れて、エロゲの世界に旅立っていった。

 あ、今考えると少女漫画じゃなくて、レディースコミックかな、あれ。

 やたらと表現が生々しかったし。


 お互いの唇を離したとき、間に残るは銀に見える透明なアーチ。

 名残惜しそうになりながらもアーチは途切れ、残るは女の(かお)

 その女の貌に更に拍車をかけるように、ちょっとだけ残っていた生姜スープを口に含み口移す。


 ……こういうことをするから、度を超え過ぎた甘え方をしてくるんだろうな。


 とか考えるけども、今は病人で正直に言って何を言っているのか全然分からない。


「どうしてもやりたかったのであれば、こうすればいいんだよパイソ」

「…………、」

「わかったのなら、寝ようか。自分でも何やっているのか分からないし」

「うん、」


 いつもの男性らしい声音ではなく、見た目の年齢通りの声音であった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 次に起きたときには、見たことのない白い女の子が膝枕してくれていた。

 パイソと二言三言話しているようだったが、眠気が勝り、そのまま寝た。

 意識を失う瞬間に、(ひたい)が温かく感じ……「おやすみ、よいゆめを」とこれも一家で聞いたことがない声を聞いた……気がした。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 次に起きたときには体力はともかく、思考はクリアになっていた。

 そして、隣には。


「なんで、カクト……とティータいるのさ」

「俺は……、カクトの……付き添いだ」

 ティータはそう言って不機嫌そうにぶつくさ垂れる。

「いや、ティータには聞いてないんだが」

「な!?」


「あははは、そう邪険に扱わないであげて欲しいな。ウェリエくん」

 中性的な声のカクトの笑い声が部屋に響く。

「ウェリエくんが倒れたと聞いて、ティータが一番動揺したぐらいなんだからね」

 ほう。

「なっ、しれっと嘘を言うな嘘を」

「あはは、そうだっけ。ティータ、顔が赤いよ?」

「それはカクトが――」

「じゃ、そういうことにしてあげるよ」


 二人で話していて何を言っているのか、本当に追いつかない。

「えーと、何を話しているんだ?」

「んー、心配だねっていう話」

「そうか、心配を掛けたようで済まなかったな。ありがとう」

 布団から起き上がって(こうべ)を垂らして礼を伝える。


「いいよいいよ、じっとしてて。

病人からお礼が聞きたくて来た訳じゃないから」

「いや、しかし」

「しかし、じゃねーよ。病人。

さっさと治ってくんねーと、張り合う相手いなくてよ。

つまんねーんだよ」

「張り合うって……誰と誰が?」

「俺とテメーだよ、病人!」

「俺と、お前(ティータ)が?」


 張り合うほど均衡してたっけ、いや、というかカクトとはちょくちょく話すけども、ティータとよく話すっけ。

「誰がいると思うんだ、誰が」

「いや、普通に分からねーんだが、張り合ってるっけ。俺とお前……」

 均衡しているというか、実力差がはっきりしている時点で張り合うも云々もない。


「テメーが出てこないと、あの勝負が出来ねーだろ!」

「勝負?」

「……忘れたのか、テメー」

 ごめん、何言っているのか分からないや。

「テメーが来てからの初の攻性魔法のときの!」

「ああ……あれ!」

「やっと思い出したか、この味噌っかす!」


 味噌っかすは酷い言われようだ。

「いや、あれはもう。だいぶ差が付いているし……ねぇ。

攻性魔法の腕、俺に追いついたの?」

 自分で言うのも難だけども、俺と張り合うのにはこの世界は少々力不足だ。


「ぐっ……、言ってくれるじゃねぇか……」

「うん、で。追いついた?」

「半年でどうにかなるわけねーだろ!」

 知らんがなそんなこと。


「黙って聞いていれば……勝負が勝負にならないし、なしにしたら……?」

「うぐぐぐぐ」

 カクトからの援護射撃で苦しげなティータ。

「第一、攻性魔法だけじゃなくて、座学でもげっぽだよな。お前」

「…………、」

「誰がビリじゃ、このクソ病人!」


「ほほう、自覚ある上でげっぽですか……こりゃもう救いようないですねぇ」

「言わせておけば、テメー……」

「ほぅら、ほぅら。クラス内で座学は何位だったかなぁ?

うぅーん聞きたいなぁ、ティータくぅうん?」

「ぐっ……て、テメー……」

「ううん……? 聞こえないなぁー?」


 いやぁ楽しいなぁ。

 成績いい奴が悪い奴に対して弄るのは、こんなに楽しいとは。

 生前はもうちょっと本気でやるべきだった。


「…………、」

「うん? なに、聞こえない」

「二十二人中、二十二位って言ったんだよ! このウスラトンカチのハゲ!」

 ハゲは酷いなぁ。

 同じ男だろう?


「いやぁ座学げっぽ君で且つ魔法の腕前も俺以下のキミが、どう張り合うっていうんだい……?」

 ……自分で言うのもアレだけど、相当嫌な奴やってるな俺。

 ……自重しよう。


「うぐぐぐぐぐ」

「ティータ、諦めなって……、勝てないよウェリエくんに」

「でも!」

「でも……じゃないよ。魔法はしょうがないとしても、座学はティータの責任なんだから、それを疎かにしているティータが悪い」

 と、バッサリに切るカクト。


 この勝負のきっかけがカクトの友人として相応しいか否かの勝負であった。

 その勝負を振った本人が、駄目出しをされている。

 可哀想なティータくんは物置の部屋の隅に移動してしまった。

「全くもう。どうして仲良く出来ないかな……」

「まぁ、どうしても仲良く出来ないっていうのは。どんなところでもあるから」


 高校生時代にいわゆるオタクという枠組みであった俺だが、絶望的にとある不良的な人がどうしても合わなかった思い出がある。

 とはいえ、その人以外の不良的な人とはそれなりに付き合いは出来たし、その不良的な人の一人が生前も友人として付き合ってくれていたイケメンズの一人である。

 本当に『ワル』っていうものはファッションなんだな、と今更ながらに思う。

「えぇっ、でも仲良くしていたほうが、いいと思わない?」

「確かにそういうのはいいと思うし、それが理想的だけど。

現実はそんなこと出来ないから。むしろ合わないのに、無理に合わせて爆発されたほうが後々に悪影響出るし」


「そうなの……かな」

「そういうもんだよ」

「うん、分かった。

ティータじゃないけど、早く治してね身体」

「うん、おう」

 殆ど治っているんだけども。


「何だかんだ言ってみんな、ね。

ウェリエくんのこと認めているというか。ウェリエくんがいないと怖いんだ」

「…………、」

「ウェリエくんは宮廷魔術師という、ザクリケルの兵器……いや、守護神でしょ。

守護神が側にいれば、自分は敵から身を守って貰えていると思うんだ」


「実際、僕もそう思っているし、ウェリエくんの潜在って「虹」でしょ。

ティータも「虹」だからさ、他人が寄りかかってきても倒れないような柱になりたいと、ちょくちょく相談を受けたりするんだ。

どうやったら、ウェリエくんみたいになれるかな、とかいろいろ」

「…………、」

「だから、守護神たるウェリエくんがいないと怖いんだ。襲われたらどうしようとか。

そういうのが頭のなかでぐるぐると渦巻くんだ。だから先生の話も聞こえはするけど、内容が分からない。

もしかしたら、隣の人が僕を襲う人かもしれない。

そんなことはないってのは分かるんだ。それでも、怖いんだ」


 でも。

「ウェリエくんがいるとそんな心配はなくなる。

僕たちは見たことがないけど、休養日に女子寮の裏で魔法戦争するんでしょう?

その暴力を見たことがある女の子たちは、口を揃えて言うんだ」

 それは。

「この(まほう)で、私たちを守ってくれるんだ」って。


「昼食でよくウェリエくんとパイソさんが二人っきりで食べているけど、みんな、怖いとか言っていたんだ。

最初はね。正直僕も怖いと思ってた。

潜在属性のときのことがなければ、近づく理由もなかったし、宮廷魔術師という格好いい職業の人でも、何か気に食わなければ暴力を振るう人とか思ってたし。

僕はウェリエくんと話して、この人怖い人じゃないと気付いてからは、そんな先入観はなくなったけど。

みんなはやっぱり」


 なんか凄いこと言われてる気がする。


「でも、女の子たちがいう魔法戦争の内容を食堂で聞いたりすると、みんな思ったみたい。

「怖くない」って。でも、怖くないけど粗相があったら……と思ってやっぱり近づかないとか。いろいろ」

「…………、」

「そういうことだから、さ。みんなの心の支えっていうのかな。

ウェリエくんが欲しいんだ。だから治って、早く」


「うん、まぁうん。明日には出れるよ。うん」

「うん、ありがと。それだけ。

ずっと話しっぱなしは疲れるよね。だから僕たちは帰るよ。

あ、そうそう。僕たちがなんで女子寮にいられるかというと、みんなの代表としているんだ。

だから、入れた。それだけ」


 そう言ってカクトと元気がないティータは我が家の部屋から出て行った。

「じゃーねー」というカクトの声に何故か力が湧いてきた。



 頼りにされているのであれば、こんな風邪程度にへこたれている暇なんてないな、うん。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ