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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第3章-ある日の一日- I
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ツペェアの家庭料理


 旦那様が料理に苦手意識が無くなるように願いを込めて作りました、家庭料理が出来たころには既にお昼の鐘はなっておりました。

 シーク先生曰くこのまま本日の授業は解散になるとのこと。

 これで料理作りに専念出来ます。


 さて懸念していた料理で一日を潰してしまい、実践授業を受けられず遅刻となってしまうということの心配はなくなり、じっくりコトコトと煮込んだ味は、ツペェアで一般的なパルマーとメルトアの肉を出汁に煮込んだ汁物に専念出来るようになりました。

 一般的で且つ代表的なものです。

 料理長は当然のこと、お手伝いさんたちもみなが教えて下さったものです。


 街中で兄と共に食事に行ったときも、この汁物が一般的なものだという裏付けは取れています。

 妻でありますが、残念ながら旦那様は過去の話を中々教えて頂けません。

 なので旦那様の生家はもちろんのこと、お国も存じません。

 いえ、ザクリケルではないと宮廷魔術師の面談情報から話は聞いておりました、ですが旦那様ご本人から伺っておりません。

 ですから、私は知らないこと。


 知りたいと思いますが、余計なことまで詮索するのは悪しき妻がすること。

 信じ、そして旦那様に信頼して頂くことが何よりも先決。

 で、あれば。

 ツペェアの家庭料理を旦那様に召し上がって頂き、ツペェアの味を知ってほしい。そう思うのは仕方が無いこと。

 ですから作りました、この肉煮込み。


 味見をしながら味を整えた結果、美味しくて会心の出来です。

 エレイシアも食べたそうにしているので、味見して頂いたところ「すごく美味しい」と評価を頂きました。

 エレイシアと旦那様の好みが一致していれば、きっと旦那様も同じこと言って下さる筈です。

 もちろん旦那様には最高の出来をお出しするもの。


 沸騰しているものは出してはいけません。

 出していいのは、熱すぎず冷たすぎず。

 ですので、私とエレイシアは先に食べることにしました。

 私たちのものと一緒によそい、私たちが食べてちょうどよい熱さになったところで出すのが、出す者としての作法。


 ですのでエレイシアと隣合わせになり、二人でこの肉煮込みの改善案を述べながら食べました。

 結果、味は文句なしでしたが、肉の大きさが少々大きかったり小さすぎたりとまちまちであったりといろいろ改善点が見つかりました。

 すると、セシルさんたちが来ました。

 どうやらおすそ分けしに来られたようです。


 もちろん、料理はお代わり用にと余分に作るものなので旦那様の一杯分を残し、セシルさんとエルリネさんにお出ししました。

 お二人とも料理の腕前はとても高いです。

 ですが、お二人とも曰く「いや、ごめん味見じゃなくて、毒見してほしいんだ」と口を揃えます。

 なんでも、セシルさんがとてもお下手な方なようで。


 ですが、口に含み汁を飲むも美味しくないということはなく、大変失礼な言い方ですがとても可もなく不可もなくな印象です。

 ですから「美味しいですよ?」と正直に申し上げたところ「ありがとう」とセシルさんからお礼を言われました。


 さて、ほどほどに温かいツペェアの肉煮込み"コッテルセ"を旦那様の下へ伺ったところ、机に突っ伏して寝ていらっしゃっておりました。

 どうやら、待ちくたびれさせてしまった……かと思いきや、そうでもないようです。


 というのも、四人分の木皿の上に細切りにされた何かで丸く作られた謎のものと、卵と肉の炒め物が載っていました。

 木皿の前に「四人で食べて」と書置きがありました。

 謎のものもきっと食べ物なのでしょう。

 軽く口に含むと調味料は感じさせませんでしたが、中々に味は濃いもののようです。


 エレイシアとエルリネさん、セシルさんに「旦那様からのおすそ分けです」と食べて頂いたところ、とても美味しいと好評でした。

 旦那様は流石です。

 ですが、ではなぜ旦那様は泣いていられたのでしょう。

 嫌な思い出があるとは思えません。


 嫌な思い出があれば作れないと思います。

 では好き嫌いがあるのかと思えば、好き嫌いもなさそうです。


 ……なんででしょうか。

 私にはまだまだ旦那様のことを知りません。

 知りたいと思います。


 ですから、旦那様が起きるまでコッテルセを脇にずっと待ちました。

 旦那様が起きたときにコッテルセが冷たくなっていて、それを(すす)る旦那様は見たくないので。



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