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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第3章-休養日-
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注意書き



 パイソを初紹介したとき、クオセリスとエレイシアの反応は凄かった。

 というのも別に『竜種』だからとかではなく、意外にも胸のことで凄い反応だった。

 主に揉みしだくという意味で。

 二人から揉まれ、嬌声あげるパイソ。


 女の子同士でナチュラルにセクハラするんだね。

 おいちゃんびっくりだよ。

 そういえば、胸が大きい女性がエルリネとパイソと二人になった訳だ。

 おまけに言えば二人ともぱっと見、成人済み。


 つまり手を出しても合法だ。

 そして、エルリネはともかく今後はパイソが添い寝してくる。

 据え膳である。

 いや、違うか。

 どちらにせよ、女性率が半端なく高い。

 これで五人目だ。


 一年ほど前に『NO! ハーレム』とか言っていたころが懐かしい。

 下手したら『魔草』のニルティナオヴエも♀の可能性がある。

 そうすると六人。とにかく、大所帯だ。

 これに故郷の二人を加えると八人。


 web小説もびっくりなハーレム度合い。

「例の"トカゲくん"は実は雌でした。で、この娘になりました。

名前は、ええと」


「初めての者は初めまして、久し振りの者は久し振りだ。

私の名前は"トカゲくん"改め『パイソ・フォルティーネ』。

特技はこの通り……っと」

 そう言って出すのは『最終騎士』の短槍(ショートスピア)片手剣(フットマンズソード)

 それと、『前衛要塞』の内膜の部分だ。

「この通り、近距離であれば戦える。というわけだ、宜しく頼む」

 頭を垂らして礼をする、パイソ。


 対して「ええ、宜しく。パイソ」とセシルらが応えた。

 どうやら、輪に入れたようだ。

 良かった良かった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 部屋の鍵を閉める前に「遠隔(リモート)常時探査(スキャニングソナー)」を起動する。

 忍び込むバカはいないだろうが、忍び込む阿呆は出てくる可能性は当然ある。

 だからその阿呆のため、設定して起動しておく。

 忍び込んだ阿呆に襲いかかる魔法は、今も昔も変わらず「電磁衝撃(エレクトリックショッカー)」だ。


 念のため「電磁衝撃」を仕掛けたことを、目に見えるように分かるようにしておく。

 何故ならば、そんなものを仕掛けている俺が悪いということになる可能性がある。

 だから、先手を打つ。


「何を書いていらっしゃるのですか、ウェリエさま」

「うん? ああ、勝手に入ったら死ぬよっていう注意書き」

「……死ぬ?」

 眉毛を上げ下げして歪ませる。

 どうやら疑問符が沸いているようだ。


「うん、死ぬ。

忍び込む泥棒相手に、何もしないなんて考えたくないからさ。

殺す気でやるんだけど、当然ここ女子寮、つまり他人が来るわけじゃん?

だから勝手に開けないでね、と」


「開けたら…………死ぬと」

「うん、バチィッと感電して死ぬ」

 だから、こうやって。

「感電して死ぬっていうことを絵にしてる。もちろん宮廷魔術師謹製の攻性魔法だからね。

嫌でも避けてくれるでしょ……不届き者以外は」


 "不届き者"というワードを強調したところ、セシルの目が細く鋭くなる。

「あまり人の生き死には、慣れないので……。やり過ぎないでくださいね」

「考えておくよ」

 考えるだけで、別に自重はしないが。


 そして完成したのは、扉を触った棒人間の周りの空間をトゲトゲで囲んで、その場面から下矢印を書いて 黒く塗り潰された棒人間と魂っぽいものを書く。

 きっと、これで分かるはずだ。

 魂という概念が通じれば、だが。

 そこら辺は注意書きでしっかり書いておく。


「勝手に開けるな、『危険』と」

 設定した「遠隔常時探査」に、新しくパイソを加えた女性五人分と、自分の魔力を除外検査に設定する。

 先に除外対象者が入れば、自動的に解除され「常時探査」モードが解除され、除外対象者から魔力を検知出来なくなれば、自動的に「常時探査」モードに移行する。

 で、「常時探査」モードで除外対象者以外がいれば、「電磁衝撃」が発生し感電死を狙う。

 もちろん死ななければ、「凍結の棺」、「電磁熱(ヒーター)」が起動する。

「電磁熱」とは「瞬炎(インシネレート)」の一つ下の魔法だ。

 内容は「瞬炎」と同じ内部から焼く魔法だ。但し即効性は「瞬炎」より幾分か下がる。

 あとは。


「折角だし『蠱毒街都』も置いとくか」

 辺りを汚染する毒化魔法陣など、少なくともこの場では要らない。

 多分、卒業するまで要らない。

 だから、置いておく。

 我ながらいい理由だ。


 もちろん、他にも理由はある。

『蠱毒街都』は魔法の「常時探査」と違い自我がある。

 つまり、その場その場で最適な魔法が使えるのだ。

 これを使わない理由はない。

 だから置いていく。


 入り口の扉から見える食堂机の真ん中に、これみよがしにニルティナオヴエの鉢を置いて、真下に『蠱毒街都』を設置。

 ガラス細工が埋まった鉢の真下に複雑な文様の濃淡に明滅する紫色の魔法陣。

 なんの儀式だろうか。

 日が落ちた薄暗闇にぼうっと明滅する魔法陣と、紫色の魔法陣に当てられ反射するガラス細工。

 普通にビビるわー。


 と言っても当然止めない。


「何をされていたのですか、旦那様」

「うん、我が家の守護神の作成」

 俺の返しにクオセリスは疑問符を浮かべた顔をしている。


 さて、朝食行こうか。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 寮内の談話室にロルフェアラ達がいたので、軽く訳を話す。

 というのは、防犯上の理由により勝手に部屋を開けたりしたら、誇張でもなく死ぬということを説明した。

 ロルフェアラの取り巻き、というよりも、ザクリケルの国民たちは揃って「ヒッ」と短い悲鳴をあげた。

 そのことに、ロルフェアラは。

「要は立ち入らなければいいんですね?」

「うん、まぁそうだね」

「なら、よいのでは。

みなさん、近づくのは良しとして、扉の鍵を強引に壊して入らなければよいのです。

……それとも部屋主がいない空間に入りたがりがいるのですか?」


 彼女の優しく諭す声に、彼女たちは落ち着きを取り戻す。

 その様子に彼女(ロルフェアラ)は。

「これでザクリケルの者は入りたいと(よこしま)なことを考える者はいなくなったかと思います」

「ん、ありがとう」

「ええ、休養日を楽しんできて下さいな」

「あぁ、そうするよ」


 あと。と彼女は軽く呟き。

「戦闘訓練楽しみにしてますよ」

「ん、わかった。ま、楽しみにしておけ」


 何せ今日は。

 俺とエルリネと、エレイシアとパイソの四人立てだ。

 いつか大会のように総当り戦を組んでみたいところだ。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「お兄ちゃん、ごめんなさい」

 寮から食堂までの道すがら、いきなりエレイシアから謝られた。

「うん、何が?」

「起きれなかった」

 どうやら、起きれずにマラソンに参加出来なかった、と言いたいらしい。

 申し訳なさそうにうなだれるエレイシア。

 しっとりした彼女の髪を撫でる。

「気にすんな。ちょっと俺みたいな魔法使いタイプだから、さ。

俺のほうがちょっと無理を言ったんだ。

だから、気にすんなって」


「でも……」

「でも、じゃないってエレイシアには、そうだな水と氷の魔法を見せるから、それを鍛えようか」

「う、うん……」

「もちろん、歌うのが好きならそっちやろうか。

いや、魔法じゃないな。エレイシアの歌を久し振りに聞きたい」

 俺の提案にぱあっと笑顔が浮かんだエレイシア。

 うん、いい笑顔だ。


 殺戮系魔法を覚えたとはいえ、彼女の特徴は歌だ。

 だから、歌を伸ばす。

「ということで、今日からエレイシアは歌おう」

「本当?」

「うん、本当」

「本当の本当?」

「本当の本当の本当」


 彼女がぷるぷると震えだす。

 よっぽど嬉しいのだろう、喜色満面だ。

 輪に溶け込んだパイソもニコニコしている。

 キツ目の顔をした美人が、笑うとここまで安心出来るのだろうか。


 特に何事も無く食堂へ着いて、やることは朝食を頼むこと。

 基本的に無料だが、パイソ分は無料ではない。

 だから、お金を支払って頼むのは"イエ"だ。

 パイソの好物である。

 といっても昨日の昼に食べてからメロメロになったらしい。

 それでいいのか、魔法的肉食生物。とは思うものの、本人が良いのであれば野暮に突っ込まない。


 対して、俺が頼むのは"イエ"系列と思われる"タムエ"と読むものである。

 予想だと……、やはりミートソーススパゲティだった。

 "エ"と付くものはどうやらパスタ麺系に付く名称のようで、そして"タム"はミートソースに類似(るいじ)したもの。

 というのも、他人が頼んでいる"タムトゼ"とかいうモノが、ミートソースたっぷりなのである。

 "タム"か"トゼ"がミートソースを指すと想像して、"トゼエ"があればミートソーススパゲティになるが、そんなものはなくあるのは"タムエ"だ。

 だから頼んだ結果、これが出てきた。

 大正解のようだ。


 なお、お味の方は生前の頃に食べたミートソーススパゲティ、そのままの味である。

 この世界はどうやら、豚肉とトマトまたは、それに味が類似しているものがあるようだ。

 醤油も味噌も恋しくはないが、この調子だとありそうだ。

 死ぬまでには一度、この世界産の醤油と味噌を使って食べてみたいところだ。

 もちろん、食べなくても当然良いが。


 ちなみに、セシルらは思い思いのものを頼んで味比べをしていた。

 仲良し四人組で、ほっこりする。



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