魔族⑦(メティア視点)
そんなことがあってからしばらく平和だった。
相変わらず私は魔法が出ないし、ミルも実践魔法の授業の時は凄い汗を流していた。
ただ、ミルは実践授業の度に、聞き取れないなんかの言葉を発していて、以前よりまして近寄り難かった。
そのミルの姿を見ていると、唐突にお父さんとお母さんに言われたことが、思い出す。
それを「打算ではない」と否定する私の心。
その度に心がきゅっとするけど、ミルを見るとその鮮やかな魔力で今度はほんのりと暖かくなる。
私と同じく、そろそろ四歳のミルは、やっぱりお姉さんがべったりだった。
ミルのお姉さんは変わっていないけれど、ちょっとだけ女の人って感じに見えてきたとおもう。
ミルも相変わらず凄い汗を流し、聞き取れない言葉を発するようになったけど、変化があった。
でも、私はどうだ。変化がない。
ミルのお姉さんみたいな女性の身体になってきた訳じゃない。
魔法も相変わらず駄目。
運動も苦手。
最近はミル以外によく話して、放課後も一緒に遊ぶような友だちが出来た。
でも、ミルのような劇的な変化がない。
だから、怖い。
放課後になる度に、一日ずつ確実にミルたち、友だちとお別れするときがある。
皆が変化しているのに、私には変化がない。
怖い、私だけ幼かったら。
怖い。
怖いよ。
ミルが私じゃない女の子と話しているとモヤモヤする。
モヤモヤするけど、だからといってミルたちの話に割り込むなんて出来ない。
そうしている内に大人になったらどうしよう。
怖い。理由が分からないわけじゃないんだ。
理由は分かるんだ。
でも、これを言ったら怖くて、不安で。
だから、代わりに。
「私が『魔族』なのに魔法が全く使えないからでしょうか」
そう再確認するだけで、私は泣きそうになる。
視界がぼやけ、夕焼けどきの朱色の光が私の目をさす。
――魔法が使えるようになりたい。
魔法の扱いに長ける種族が魔法を使えないのは、欠陥があるにしかならない。
魔族らしく身体は弱く、ちょっと走っただけで足はガクガク震えるし、息切れする。
魔力だけあっても使えない。
自分だけ幼くて、守られるだけの存在だなんて嫌だ。
嫌だ。
とくにミルに手間の掛かる女だ、と思われるのがいちばん嫌だ。
ふと、背後に気配を感じた。
これで漸く繋がりました。
ちょっと短いですが、キリがいいので。