表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第3章-登校日初日-
177/503

実力検査

 実力検査は教室に集まらずに、そのまま外に集まった。

 教師はあのサイクロプスのサイトさん。

 どこをどう見ても二つ目で、更に人サイズ。

 どこにも巨人成分もない。


「注意事項ねー。

魔法は許可無く人に対して使わないこと。

特に攻性魔法を使える子は、基本学校の間は許可無く使わないことね。

使ったら怒るからねー」

 はーいと元気な声が響く。

 懸念していたエレイシアも右腕を上げて元気に返事をしていたし、多分大丈夫だろう。


 俺も出来るだけ使わないようにするかな。

 吹っかけてこない限りは、な。


「それと、ウェリエくんとエレイシアさんはこの系統の授業は、ほぼ全て免除ですが……、やりますか~?」

 エレイシアはどうしよう? と言いたげで心配そうな顔でこちらを見る。

 やりたければ、彼女用の魔法を教えればいいだろう。

「氷柱の柱」とかあの辺り。


「俺はやりたいな。エレイシアはどっちでもいいよ。好きに選びな」

「じゃあ私もやりたい」

 どうやら、免除でもやりたがりらしい。

 難儀ね。


「分かりました。では二人共、出来るだけ攻性魔法は自分から使わないようにしてくださいね」

「はーい」

「わかりました」

 

「では、生活魔法しか出来ない子はこちらで見ますので、来てくださいね」

 サイトさんが声をあげると、先ほどのように子どもたちが「わー」っと(つど)っていく。

 セシルやクオセリスもあちらへ駆けていく。

 カクトも向こうだ。


「自衛と攻性使える子はそのまま待機しててくださいねー」

 と、サイトさんの声が聞こえるが、子どもたちの歓声に埋もれて聞き取りづらい。

 が、『十全の理』の聴力強化で以下略。


 今この場には、俺とエレイシアと暫定主人公くんと王子様とティータの五人しかいなかった。

 ティータは流石「虹」属性持ちなだけに、自衛以上が使えるようだ。

 ティータをちょっと弄りに行ってみれば、「うるせぇ、テメェには負けねぇ」と噛み付かれた。

 どうやら「カクトはああいう感じで、騙され易い奴なんだ。お前は絶対に黒い。絶対お前のことは認めない」ということらしい。

 認めて貰いたいところだが、一朝一夕でどうにかなるものでもない。

「ガルルル」と唸り声をあげる様は、まさに狼。いや、番犬か。

 騙す気などはないが、こうまで敵意バリバリを(かも)しだすのであれば、ちょっとだけティータに対する扱いを変える必要がある。


「へぇ、じゃあどうやれば認めてくれる?」

 web小説とかではよくあるシチュエーションだ。

「そうだなぁ」と呟きながらもニヤッと嗤う顔。

「そうだなぁ、今後俺から勝負事吹っ掛けるから。俺以上として勝てば認めてやるよ」

「ほう」

「一度でも負けたら絶対に認めない」

「ほほう」

「というわけで早速だが、勝負だ」

「いいよ」

「俺はカクトを守るために、攻性が使える。いや使えるまで努力した。

もちろん、自衛もいける」

 この歳で攻性か。

 カクトの反応、セシルの努力からみれば、自衛でも相当高位の筈だが、それを攻性まで扱うことが出来る時点で相当才能がある筈だ。

 エレイシアの攻性も『ガルガンチュア』の能力から来ている筈だし、俺の攻性も『十全の理』から来ているから、俺たち二人を基準にしてはいけない。


「お前みたいなぽっと出に絶対負けない。何が宮廷魔術師だ。お前の化けの皮剥がしてやる」

「…………、」

 ううん? ということは化け物と認めてない?

 でも、食堂で「化け物の人」とか言ってたな、どういうことだ?


「やぁやぁ君たち。とても楽しそうなことをしているねぇ」

「アンタは?」

「あぁすまない。ウェリエ君は僕のことを知らないだったよね。僕はウェックナーの第三王子、サイア・ウェックナー。

サイアと呼んで欲しい」

「ふーん、サイアね」

「うん、ありがとう。皆、僕に対して気が引けているのか。頼んでも"君"付けなんだ。それなのに、君は呼び捨てだ。

まぁなんというか宜しく頼むね、今後も」

「あぁこちらこそ」

 ……こいつまんま王子様かよ。


「ウィーッス、俺はアークス! アークス・トリン。アークと呼んでくれ!」

「ああ、宜しくアーク」

「おうともよ」

 歯をキランと輝かせるように感じさせる彼は、学園モノのマンガだと超体育会系だろうか。

 マッチョで日に焼けた身体をしてそうだ。


 それぞれの彼らの特徴を簡単に述べれば、サイアは細碧眼の金髪で体型も細く、格好もいかにも高そうな服装をしている。

 対してアークはくっきりとした目に紅眼で更に紅髪、格好はよく言えばワイルド。悪く言えば、野生児。

「俺とサイアも攻性出来るんだ。だから」

「僕たちも、その勝負やらせてくれないかな」

「ほほう」

「なぁに、宮廷魔術師が何だ。俺たちはな、そういう宮廷魔術師とかそういったものを目指してるんだ。

目の前に目標がいて、その目標に勝てれば、俺たちも宮廷魔術師に勝てる部分、つまり宮廷魔術師になれる部分があるってことなんだよ」

「そういうことなので、勝手ながら勝負させてくれないかな、ウェリエ君」

 理由が中々にアツい。


「いいよ、掛かってきな。桁違いっていうのを見せてやろう」

「あのー……熱くなっているところを悪いけど、お兄ちゃん」

「うん?」

「お兄ちゃん? って誰のこと?」

「ん、どうしたエレイシア」

「私も参加するべきなの? ……その勝負事」


「ウェリエ君は彼女のお兄ちゃんなのかい?」

「いや、厳密には違うが、でも家ではそう呼ばれている。

エレイシアは好きにやっていいよ。

ただ、あれらは使うなよ」

「それは流石に分かるよ」

「……フォートラズムさん相手には、分かってなかったような……」

「アレは……なんとなくムカついたから」


 つまり、ムカついたらやると。

 そういえば。

「エレイシアって攻性、使えたっけ」

「使えるよ、「凍結の棺」と「氷柱の柱」」

「あれ……、教えたっけ」

「ううん、『永久不滅の誓文』が教えてくれた」

 自我があるのは知っているが、他人にモノを教えるほどの自我はあっただろうか。

 どちらにせよ。

「使えるならいいのかなー?」

「なんで疑問形なの、お兄ちゃん」

「そ、そんなことないぞお」

 ないぞお。


「なぁ」

「うん?」

「今の「aasdflk」とか言うのは魔法か?」

「ん、ああ」

 そういえば"日本語"はこの世界だと、異次元語になるんだっけ。

「ま、そうなるかな」

「へぇじゃあ「aasdflk」を唱えることが出来れば、僕たちも宮廷魔術師になれるのかい?」

「いやーどうだろう」

「というと?」


「まず「aasdflk(とうけつのひつぎ)」だけど、水属性の魔法だし。下級魔法だからね」

「水属性なのか! では僕たちでは使えないな」

「ああ、そうだな! ところで下級ということは上級もあるのか?」

 それに対して。

「あるよ、上級魔法。ね、お兄ちゃん」

「あれ、見せたことあったっけ」

「「雪山の吹雪」ってそうじゃないの?」

「あれは中級だよ」

「えっ」


「えっ、てなんだよ。えっ、て」

「だってあんなに凄いのが中級しかないって信じられない」

「あのー、全く話が読めないんだが」

「なんとなく、ウェリエ君がとんでもないのが分かった気がするけども。

具体的にどう凄いのか分からない」

 普通ならこういう反応だわな。

 見せてあげたいところだが、教師が見ていないところで出せるものでもない。


「先生が見ていないところで出せるものでもないので、検査が開始されたら見せるよ……」

 多分、この手の勝負事だと諦めるレベルだろうと思うけども。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 生活魔法の検査が終わったところで、漸く俺たちの自衛は全員出来るので攻性魔法組の検査となった。

「検査の仕方はあそこに見えます、石で出来た人型の的三つに貴方たちの最高の魔法を使って下さい。

ただ、ウェリエ君とエレイシアさんの最高は止めてください」


 最高と聞いてワクワクしたが、しっかり釘を刺された。

 チッ。


「では、まず……そうですね。アークス君、貴方からお願い致します」


「よっしゃあ! 行くぜぇ!」

 そう吼えて唱えるのは、「我が敵を焦がし、我が敵を焼け! 火球(かきゅう)!」

 彼の掛け声と共に、右手に魔力が集まり(ほう)(はな)たれるのは、人の頭ほどの大きさのいわゆるファイアボール。

 放たれるファイアボールは的に向かって一直線に走り、石を砕き、息をつく間もなく更にもう一個の的に、最後の一個もという感じで直ぐに終わった。

「アークス君は中々ですね~、直ぐに唱えられるなんて」

「へへへっ、街だとこうじゃないと夢は見れないからな!」

 彼の鼻の下を擦る姿は、自慢したげなガキ大将か。


「では、次にティータ君ですね。ささっどうぞ~」

「…………風よ、吹け。風よ、貫け。敵を、潰せ。風縮(ふうしゅく)


 あんまり気にしなかったが『殺せ』ワードが多いな。

 世界観柄仕方がないことなのかな。


 風縮が起こした現象は簡単にいえば圧縮による圧潰だ。

 ただ、当然圧潰は出来ず起きるのは、ただの砕き。

 それでも圧潰を目指しているんだろうな、というのは分かる。

 とか言っている内に――バキン、と砕いて潰した音が聞こえた。

 どちらにせよ、時間が掛かり過ぎているが、八歳ならこんなもんだろう。


「ティータ君も中々ですねぇ。石を砕くなんてそうそう出来ることではありませんよ」

「…………ありがとうございます」

 軽くサイトさんにお辞儀をして、こちらに戻ってくれば「絶対俺のほうが凄いんだからな」と敵対心を見せつけてくる。

 フハハハ、俺のほうが凄いに決まっているだろ……属性選び放題だぜ。

吸襲風吼(フロギストンエアー)』で本物の圧潰を見せてやろうか。

 それとも「焼灼の槍」を装填して一本……いやこれは駄目だ。リコリス相手に撃ったあの試験会場のようになる。


「では、次に……そうですね。エレイシアさん行ってみましょうか」

「はいはーい」

 元気なエレイシアの声。

 声だけを聞けばただの子猫ちゃんなんだが、サーベルタイガーなんだよな。彼女。

 あの冒険者がいなければ、彼女は子猫のまま……いや、「if」なんて考えてもしょうがない。

 なんて考えている矢先に、三つの的全てを粉砕しきって終わっていた。


 サイトさんも講評出来ないようだ。

 普通に考えればそらそうだ。

 魔力素の状況とエレイシアの"精神の願望(どれいもん)"の発光具合からして『ガルガンチュア』を起動していた。

「凍結の棺」と「氷柱の柱」はほぼ確定。残る一個は『ガルガンチュア』の何かを使ったと思われる。

 基本的にイメージで現象を引き起こすのが「魔王系魔法」だ。

 詠唱なんて必要ない。

 そして、そんなものを授業の実践に出す。

 桁違いっぷりを見せつけるだけの、発表会だ。


「え、ええと。最初の魔法はなんて魔法なの……かな?」

「えっとぉ、相手を内部を凍結させる魔法です!」

「つ、次は……、」

「おっきな氷柱(つらら)、えっと氷で出来た槍で貫いてみました! ちょっと太かったみたいですけど!」

 お、おう。この世界の人たちになんて的確な回答だ。


「えっとぉ、最後は……」

「黒くて極薄の刃で寸断と貫通してみました、どうでしょう! ところで本当に石ですか? 斬った感触しませんでしたよ」

 うん、なんだろうね。この娘、ホントにサーベルタイガーだわ。

「……文句なしですね。ただちょっと、やっぱり抑えて下さい」

「うん、そのために来たんだから。ゆっくり加減を覚えます!」

 加減をしたいとかそんな気配が全く見えないのは、俺が鈍いからだろうか。


 ちらと、ティータとアークスを見れば真顔で固まっていた。

 何を考えているか分からないが、桁違いだということは分かってくれたかな?

 ちなみに、生活魔法組は検査が終わったことをいいことに、思い思いに遊びに行っていて誰一人として見ていなかった。


 良かった。見ていたらきっと彼女も俺みたいに孤立するところだった。


「ええと、気を取り直してサイアさ、いえ……(くん)。今、的を作りましたのでやってみてください」

「あんなに凄いのを見せつけられてから、僕だと凄い霞むなぁ……」

 ぶつくさ言いながらも使う魔法は、地属性なだけに石の槍、ではなく落とし穴。

 急に空いた落とし穴により、そのまま的がボッシュート。

 完全に落ちてから、臭いものに蓋をするとばかりに地面が埋まっていき、後に残るのは的があったという形跡もないただの地面。

 サイアも凄いものを持っているようだ。


「ふむふむ、サイア君も中々素晴らしい攻性魔法を持っていますね」

「ええ、ありがとうございます」

 サイアが戻ってくるので、「サイアってスゲーな。落とし穴ってそうそう作れるものじゃないよ」と褒める。

 もちろん事実だ。

 落とし穴を掘るには、まずイメージを作る。

 で、その後に掘るものだが、掘ったりせずにそのままぐわーっと落とし穴が空きボッシュート。

 ボッシュートした的をいないいないするかのように、埋まっていく。

 なかなか無い魔法ではないだろうか。

 対人で使ったら、いつの間にかボッシュートされ、そのまま窒息死。

 うーん、えげつない。


「あははは、そう?

ただ、どうしてもエレイシアさんと見比べると霞むと思うよ」

「いや、それでも凄いと思う」

 発想が中々ないとも思う。


「では、最後にウェリエ君ですが……、先に聞きますね。

どの属性使う予定ですか?」


 ……「惑星」と言いたいところだが、そんなユニーク属性なんて言っても言われた側は困る。

 ならば、何になるか。

 火属性でスゲーと言われそうなものの威力もそれなりなのは、「獄炎」ぐらいしかない。

 水属性というか氷属性であれば、既にエレイシアがやっているので除外。

 風属性であれば『吸襲風吼』があって、ある程度加減が出来る。

 地属性は「土石流」が派手って言えば派手だが、威力も派手なので禁止。

 火と混在している「火砕流」も駄目。


 うん、やっぱり。

「風で行きます」

「うん、分かりました。では、やってく――」

「あ、それなんですけど。近寄って一度当てるっていうのはいいですか?」

 久し振りに「魔力装填」をしたいのが本音。


「え、あ。もちろん……いいですけど、何故ですか?

魔法は基本的に遠距離からですよ?」


 ……あれ、装填なりしてドゴンドゴンするのって異端なのか?

 でも、魔法剣士っていう戦い方あるよな、父さん言ってたし。


「んー、宮廷魔術師になる前は元々近距離が多かったので。

初心に帰ってやろうかな、と」

「なる、ほど……?

とにかく、それでいいのであれば、それでお願いします」

「分かりました、では行きます」


 的は三つ。

 それぞれに『吸襲風吼』と「重力杭(グラビトネスバンカー)」、乱気流(タービュランス)を打ち込む予定。


 いつだってあのときのことをいつも想像する。

 エルリネ戦でも、だ。

 それはあの村の出来事。

 流石に昨日の夢は真っピンクな夢だったが、やはりあのときの出来事は覚えている。

 村を全滅させた日。

 母さんが壊れた日。

 姉さんが壊れかけた日。

 そして、俺が初めて明確に且つ殺意を以って殺人をした日。


 あのとき、こうすれば良かった。

 あのとき、こうしていればきっと村は。

 そう「if」を何度も夢見た。

 悪夢ではない、ただのずっと夢見てしまう後悔。

 それを繰り返さないためにも、戦闘訓練時は必ず夢で見た内容をなぞるようにしている。

 いつかまたどこかで、悪夢に苛まれないように。


「「魔力装填(エンチャントマジックス)爆縮(インパクトエクスプロージョン)」ッから、更にッ「「魔力装填(エンチャントマジックス)重力杭(グラビトネスバンカー)装填(そうてん)っ!」

 ほぼ一歩で約十メートル離れた的の前に滑りこむ。

「――左、射出」

 太い杭打ち機の杭をイメージした、重力の波動で出来た物体が的のど真ん中を穿つ。

 術者から見ても分かる凶悪と言い切れる一撃。

 重力という「火」「水」「風」「地」ではない、特殊な属性で穿つ一撃は防御壁を貫通。

 石で出来た的を二つに折り、砕いた部分は粉々にする。


「次、右を射出」

 的の二つ目に関しては『吸襲風吼』の吸い込みを使って、擬似的な瞬間移動を行い、二つ目の的の頭上に移動する。

 直上から「魔力装填:乱気流」を纏った右手側を射出。

 発生するは、急激な風圧により、頭と首らしき部分をへし折り、地面に落とし更に渦巻く小型のハリケーンによって渦状に回転する暴風で砕く。

 音は工事現場でアスファルトを削るような、暴力的な音。


「最後、『吸襲風吼(フロギストンエアー)』」

 最後の的は最早一撃。

 一瞬で吸い込み、圧縮圧潰をして『吸襲風吼』が一瞬で解除される。


「はい、……終わり」

 ふう、と息を吐いて振り向けば、サイトさんはもとよりティータは当然、アークスとサイアも呆然としている。

 そういえば、彼らは宮廷魔術師志望だっけか。

 こんなのに呆然としている程度では、宮廷魔術師などにはなれない。

「…………、」

 彼らの反応からみれば、やり過ぎた感はある。

 あるが、勝負を吹っかけられたのであれば、それに対して本気を出して応えるってのは大人だろう。

 と、言うものの、別に本気でもないんだが。

 本気だったら「焼灼の槍」が以下略。


 エレイシアを見やれば、プルプル震えている。

 ちょっと怖かったかな、済まないことをした。

 そう声を掛けようと近づいたところで「やっぱり、お兄ちゃん凄い!」と称賛された。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 講評内容としては「やり過ぎ」の一言であった。

 だが、やり過ぎにも理由があるのは分かってくれた。

 というのも宮廷魔術師だから、荒れ狂う魔力で云々と勝手に納得されたというべきか。

 間違ってはいないが間違っているともいえる。

 黙って講評を聞き、戦闘訓練に加減を覚えるってことに期待しないことにした。


 戦闘訓練モノはどうしても、夢のなかでの動きをトレースしてしまう。

 下手したら相手を殺しかねない、だから。

「あー先生」

「ん、なにかな」

「基本学校の内は、実戦なしでお願いできますか」

「ん、分かった」

 ティータとは明らかな桁違いっぷりを示せたと思う。

 だから、彼との実戦授業における勝負事は全て、俺の不戦勝だ。

 彼が俺以上、または同等になったときにその勝負は受けることにしよう。


「お兄ちゃんがやらないなら、私もやりません」

「エレイシアさん。も、かい?」

「うん! 私の魔法もお兄ちゃんと同じぐらいに危ないみたいだから、ね。仕方ないよね」

「そうですね、確かに仕方がない……ですね」

 そう呟く、サイアはとても悔しそうだ。

 宮廷魔術師とその関係者の桁違いっぷりを見せられれば、心が折れるだろう。


「あ、でも先生」

「ん」

「授業中、俺たちだけで遊んでいる訳にもいかないので、ひたすら見てますけども。

そうではなくて、その俺たち宮廷魔術師関係者限定で攻性魔法の使用を許可して貰えませんか」

 以前まで日課にしていた、エルリネとの戦闘訓練をしたいからだ。


「ちなみに理由は」

「生活魔法組の中で茶色い肌の森人種さんいましたよね」

「ええ、いましたね」

「あの娘、魔法が並ですが。魔法耐性と体術が並以上なので、訓練に最適なんです。

ちなみに訓練自体は二年は経ってないですが、一年以上はやってます」

「たしか、"奴隷"よね。ウェリエ君の。

虐めとしてやっているのかしら?」


 ほんの初期は虐めみたいなものであった、記憶は確かにあるが。

 でも、最近は向こうから誘ってくる。


「いやだなぁ、虐めなんかしてませんよ。ただお互い守りたいものがあるので、やってます。

で、いいですかね」

「…………、まぁ宮廷魔術師だし、力の使い方は当然分かっているだろうし。いいでしょう。

但し彼女以外には振るわないこと、ね」

「ええ、もちろん。当然」


 これで戦闘訓練が再開出来る。

 あとは暴れることが出来るだけの空間と、エルリネの都合だけだ。



本日(2/19)分終了。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ