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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第3章-登校日初日-
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潜在属性検査

  

 結論から言えば編入イベントは大成功とは言わないが、特に突っかかれることもなく、普通に終わった。

 いわゆる、貴族や平民が混在しているクラスだったが、『ツペェアの宮廷魔術師であるウェリエとその家族です』という感じで自己紹介。

 セシルもクオセリスも俺の嫁であることをアピールし、『精神の願望』が張られ組も俺の"奴隷"ですと言い切る始末。

 その光景に子どもたちからは羨望の目で、貴族の子たちに就いている護衛たちからは、信じられないものを見ているような目で見られる。


 まぁ普通なら身分を隠すものだろうが、折角ツペェアで『宮廷魔術師』という兵器という役職をくれたのだ。

 これを使わない理由はない。

 ガチの兵器、ちょっとでも気に障らなければ周辺に破壊を(もたら)す。

 っていうつもりで紹介したのに、男女の違いなく「スッゲー」って言ってそうなぐらいに目がキラキラしている。

 対して護衛たちもホントヤバい。


 魔力検知にひたすら引っかかる。

 ほぼ全員敵意ありかよ。

 ……魔力を精製して脅してやろうか。

 などと危険なことを考えながらも、子どもたちの笑顔を見ていればそんな危険なことをここですることではない。



――あとで、闇討ち程度で済ませておこう。



 それ程度で済ませるなんて、俺はなんて優しいんだろうか。

 おっとぉ何故か分からないけど、こんなところに博物館でしか使ってない仮面があるぞぉ。

 今宵は魔力素の雨が降るかのう。

 フォッフォッフォッ。


 自己紹介のHR(ホームルーム)も無事終わり、いくら精神年齢がバカ高かろうが、身体年齢が同い年の子どもたちに囲まれてキャッキャワイワイするのは凄い楽しい。

 うん、この世界に生まれて良かった。


 まだまだ話し足りないが授業開始の鐘だ。

 さて、この世界の小学校? の初授業だ。

 どうなることやら。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「潜在属性については……」


 と教鞭を執っているのは、半魚人A。

 名前はヤークさん。

 なんとなく、"(シャーク)"から取ってる疑惑。

 授業は皆、高価なノートと鉛筆で板書。

 高価なはずなのに、ここでは生前の頃のようにモリモリ使っているのは、ここだけご都合主義的なものだろうか。

 色々突っ込みたいが、それのお陰で学べるので文句は言えない。


 最終手段として『十全の理』で記憶領域に突っ込むという荒業があるが、そんなことをしてもウチの子たちは結局ノートを使わざるを得ないので意味が無い。

 そんな益体もないことを考えながらも、潜在属性について引き続き聞く。


「潜在属性については、その属性に合わせた魔法を使うことによって、身体が慣れていきます。

逆に属性と違う魔法を使うと、魔力が多く消費され倒れてしまい、最悪死ぬ危険があります」


 ……なるほど。

 だから、あのとき魔力水を作ってぶっ倒れたのはそういう理由か。

 無属性なのに、水属性の魔法を使おうとした。

 潜在属性とは違うので、当然魔力を多く持ってかれてぶっ倒れた訳か。

 というよりも、潜在に合わせないと最悪死ぬのか、そっちの方に驚きだよ。

 よく死ななかったな俺。


 そんな水属性を毎日やってりゃ、そら魔力容量増えるわ。

 そういえば、疲れない疲れないから寝れないとかいって、火属性魔法を使って魔力燃焼続けまくったこともあったな。

 常に死ぬ危険性が隣合わせじゃないか。

 で、『十全の理』が初起動して『属性王』との魔力パスが接続されて、基本属性へのアクセス可能になったので死ぬ危険性は零になったけども。

 白が強い『虹』だし、黒歴史ノート通りの設定なら唱えてるのはあくまで『属性王』だし。

 魔力は俺のだけど。


『十全の理』経由で魔力を作成、精製して"作者(おれ)"が魔法の威力と範囲などをイメージしたものを『属性王』に魔力とセットで投げる。

 そしてそれを受けた『属性王』が魔法を起動する。

 というのが、設定上のモノ。

 なので、厳密には俺が魔法を使っている訳ではない。


『属性王』を経由しない魔法は「魔力装填」や、「流星(シューティングスター)」と「探知(ソナー)」などのものだ。

 これらは、『十全の理』のモノとウェリエの設定の『惑星』によるものなので、潜在に反していない。

 今、話している教師の話によれば、基本的に潜在属性というものは「火」「水」「風」「地」そして「無」と「虹」の六つ。

『惑星』といった潜在属性などどこにも属していない。


 敢えて属させるなら惑星の核にある「火」、惑星には欠かせない「水」、惑星の上に立つのであれば空気の「風」、惑星を形作る「地」の四属性を使う。

 ということで、自然と「虹」になる。

 でも、無属性が強いのは何故か。

 敢えて属性に振り分けると虹になるが、分けなければどこにも属さないので無属性。

 だから、俺は無属性の白色が強い。


 属性に関しては最早チートの塊である。

『勇者』と『魔王』になる属性の「虹」ではなく、『属性王』の全属性アクセス権限と、『十全の理』の魔法強化と魔法の使い方の発展形に、『蠱毒街都』の持つ毒から転じた回復魔法と併せて「惑星」が持つ無属性の隕石や重力・磁力系。

 魔法に関してはチートの塊を超えたチート。

 "作者"が夢を見たチートがここにある。

 これで体術も極めたら、どこのラスボスだろうか。

 

 そんなチートの塊が静々と授業を受ける。

 こういった授業は割りと退屈なものだというが、如何せんこの世界は俺の設定した世界とはまた違う。

 適当こいていると、どこかで致命的なミスを侵す可能性も無きにしも非ず。

 だからこそ、受けるのはそういったこと。


 授業妨害をする者もおらず、非常に平和なまま授業が終わり、立ち代わり教室に入ってきたのは半魚人B。

 名前はシークさん。

 前回同様、"(シャーク)"から今度は"ャ"を取ったようにしか聞こえない。

 違いが本当に分からない。

 名前で判断しろとか無理ゲーである。


 横で一緒に授業を受けている子たちに見分けつくか聞いてみたところ、ついているらしい。

 全く分からない。

 セシルなんかはカッコイイ顔立ちをしているとか言うが、全然見分けがつかない。

 殆ど覚えていないがスーパーで売っているサンマのような顔をしている二人というか、二尾。


「キミたち、お待ちかねの潜在属性検査だ。ほら、一列に並びなさい」

 半魚人Bの声は、渋いおじさん風味の声だった。

 サンマ顔の。


 そういって取り出すものは、やっぱり水晶球。

 で、想像通りに魔力の容量まで調べてくれる器具のようだ。

 男の子は皆「わぁあああ」と声を上げて水晶球に近づき、女の子は一様に恐る恐るといった具合。

 女の子であるセシルとクオセリスだが、彼女らは男の子と混ざって、水晶球に近づいていった。

 対するエルリネとエレイシアは席につきながらも、興味あり気な顔で俺をみた。


「行っていい? 行っていい?!」と目力で訴えてくる。

 別に急がなくても全員分やるのに、何故ああも我先にやりたがるのか。

 いや、小学生ってそんなものか。


「いいよ、行ってきな」とエルリネとエレイシアに伝えれば、彼女たちも飛んでいった。

 彼女たちも何だかんだ言って子どもだなぁと思った。

 八歳程度の子どもたちの塊に、ぱっと見十七歳ぐらいのエルリネがいることにちょっと違和感を感じながらも、彼らが()けるのを待つ。

 捌けそうだなーと思ったところで「護衛の方々もどうぞ」とシークさんが、護衛に向かって声を掛けるものだから、更に密集した。


 おじさん、おばさん、おにーさん、おねーさんの老若男女問わず群がる。

 何故ああも並びたがるのか。

 行列作ってたらとりあえず並ぶ民族と呼ばれる"日本人"なので、なんとなく理解は出来るけど異世界でもそうなのかな……?


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 各国の上澄み液というべきか、才能がある子どもたちが学びに来るだけあって「虹」持ちがやたらと多い印象だった。

「「虹」だ! スゲー!」とか「鮮やかな色だねー」とか「ぼくも「虹」なんだ!」とかわいのわいのしている。

 ただなんというか、「虹」が出る度に護衛の皆さんが魔力を高めていく姿を見ていると、子どもたちよりもこいつらが嫉妬している感が強い。

 どこかで余計なところで、爆発しなければいいのだけれど。


「虹」でなくても何らかの属性が強いというのも当然おり、火と水の赤と青しか無いのとか、火の赤、地の緑しかない子、とか千差万別。

 セシルは以前に聞いて、実際にみた地属性の緑色で、対してクオセリスは風の黄色のようだった。

 彼女らにずっとわいわい出来るほど、気が合う友人を見つけたようで、嬉しく感じた。


 エレイシアは種族通りの水に風と地がちょっと混ざった色で、エルリネは地だった。

 森人種らしい属性だ。

 うん、中々イメージ通り。


 同時に(はか)られた容量については大抵、上・中・下級に分類される。

 世間一般的な子どもだと下級で、中には中級、当然更なる上級の子もいるようだ。

 なお、上級の子は「地」が強い「虹」属性で、どこぞの王子様のようだった。

 女の子達の見る目がちょっと変わってた気がした。


 その後にもやはり上級の子は当然出てきた。

「火」が強い「虹」属性の子だ。

 属性だけみれば、どう見ても主人公キャラだ。

「へんっ、こんなものどうってことねーぜ!」とかかなりゲームの主人公的発言である。

 この子のあだ名は暫定主人公にしておくか。


 もちろん「虹」が上級の門を叩いているわけではなく、「風」のみで上級、いや計測不可の子もいた。

 計測不可だった理由は、水晶球が割れたから。

――バキンッ。

 という音である。


 ピシッとかビキリッというヒビが入るような異音ではなく、バキンッと水晶球が半分に割れたるような音がして実際に割れた。

 それにより、計測のための魔力が奔流として荒れ狂う予兆を見せたので、席についていた自分の身体を即動かす。

 エルリネはセシル、エレイシアはクオセリスを既に確保、床に押し倒している。

 魔力の奔流が爆発する前に『最終騎士』の足腰強化を使い、計測不可を叩きだした子の前に踊り出る。


 瞬時に考えることは「"魔王系魔法"は使わない」という判断。

 魔力爆発を飲み干すことは可能でも、逆に教室が吹っ飛ぶ。

 それでは意味が無い。

 だからこそ、考えて出来ることは何か。

魔力破壊(ディスペル)」はちょっと違う。「魔力支配(マジックスナッチャー)」も普通に違う。

 ならば、と使うものはこれしかない。


「割れ、魔力撹乱(カウンタースペル)!」

 魔力が奔流する前の球体にピシっとヒビが入る。

「魔力撹乱」によって魔法を構成する文を強制的に(ほど)き、身体を分解され解かれた魔法は結果を生むことはなく、起きるのは分解されたところから漏れでる魔力。

 魔力が漏れでるエフェクトとして、この世界の文字がさらさらと砂のように舞い、消え行く。



「ふぅ、危ね危ねー」

 そう言って奔流球体の前に出していた右手を、横に振るう。

 イメージは何かを刺し殺した剣の血払い。

 これだけで簡単な魔力素落としができる。

「魔力素が手に付いていると、ゴワゴワするんだよな」

 

 そう言いながら教室を見渡せば、護衛対象を床に押し倒した護衛役は少なく、即倒れこんでいた子どもはほぼ皆無。

 下手をすれば多くの人間が死んでいた状況なのに、この無反応っぷり。

 護衛役が護衛役じゃないというべきか、荒事に慣れていないというか。

「虹」に対して嫉妬する前に、どうにかしろよとは思った。


 背後にいた、何が起きたのか分かってなさそうな子どもに「大丈夫?」と聞いてみたが、全くの無反応になっていた。

 死にかける場面にいれば、確かに思考回路がショートするものだ。

 しばらく待っても無反応だったので、顔の前に手を振っても反応なし。

 目を開けたまま気絶しているようだった。


 物凄く器用な子だ。

 この子の席が分からないので、一先ず自席の隣に座らせて、自分の腕を枕にする寝方をさせる。

 シークさんが「予備のも一応あるので、計測してください」の一言で、つい先程のことについて誰も激昂することなく、続きが行われた。

 結局、計測不可は彼のみで、残るは俺となった。

 で、べたーと手の平を水晶球に触れたところ、当然のごとく非常に鮮やかな虹色をバックに真ん中辺りに無属性を表す白の球体。


 球体は「惑星」を表すのだろう。

 虹は敢えて属性を当て嵌めたことか。

 それとも『属性王』の魔力まで検知しているのだろうか。


 次に容量だが、随分前に作った"精製された魔力"を持った状態で触れた瞬間に即割れた。

 それも粉々に。

 ぽんと触れた瞬間にパリンである。

 魔力爆発なんかはなく、割れた破片が顔に飛んだが『前衛要塞』でノーダメージ。

 非常に寂しい。


 学友たちの「スゲー!」はなく、ボソリと誰かが言った「スゲー……」という声が耳に痛い。

 学生生活を送る上で行き過ぎたチートは物凄く邪魔になることが、この身を持って分かった。


「ウェリエ、「虹」属性の計測不可な」

 シークさんの発言がやけにハッキリ聞こえる。

 平和で甘い学園生活は送れなさそうである。



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