エンディング:滅びの地と魔族 Normal End【F? Another】
そして、この地は滅んだ。
今日までに文献に残っているのは『竜炎の魔王』、あの国風に言うならば『炎熱焔の紅緋なる暴毒の魂』と勇者が激戦を繰り広げたという。
この地に入ることが出来れば、研究が出来るものだが、前述した通り、この地は滅んでいる。
どういうことか。
まず街とその境目と思われる部分に壁か何かが出来たかのように、お互いを押しこむように、人々が折り重なり氷漬けになっているのだ。
何があったのかは想像に難くない。
隣り合わせの死。
その氷漬けの死体を解凍させればよいと誰もが思ったが、火魔法をぶつけても解凍出来ず、あの国の魔法使いにお願いをして来て貰っても、あの国の神様の魔法だということで、解凍をして貰えなかった。
寧ろ、溶かすことは許さないと逆に宣言された。
で、あればつまり、あの氷漬けの死体は『竜炎の魔王』の所業だ。
何が起きたかは分からない。
だが『竜炎の魔王』の何かが癪に触ったお陰で、滅ぼされたと我ら研究所員は考えている。
あの国の神様と呼ばれる『魔王』たちは、基本的に温厚なのだという。
発生当初は"荒れ狂う神々"だったようだが、神がいなくなるその日までずうっと温厚で、あの国を守り通し、例の観光都市『カッカル』の守り神だったという。
その温厚であったはずの神、『竜炎の魔王』の何の癪に触れてしまったのか。
それは誰にも解けていない。
あの国の歴史書では、人族、獣人族が手を取り、魔族を滅ぼした。
その魔族たちの生き残りが集まった国があの国だという、眉唾ものの歴史書であった。
妄想の物語と言えるぐらいだ。
なにせ、魔族はどこにもいない。
あの国以外の大陸全土が滅んだとしても、あの国ですらも滅んでしまったという。
これでは、魔族がいたという理由がない。
さらに言えば、その魔族も滅んだという割には、滅んだ理由を示す文献がない。
人族と獣人族が手を取り合ったのは良しとして、理由がなく滅ぼされている。
必ず戦争があれば、戦争のきっかけがある。
だが、それがない。
どこを探しても見つからない。
建国の父と呼ばれる『聖域の魔王』は人族だという。
人族であれば、あの国以外の国にも文献があるかと思えば、それもない。
それっぽいものもあるにはあったが、次巻からはすっぽり抜け落ちているものも少なくはない。
魔族のことも、同時に無くなる。
そして最後にはしれっと、魔族と『聖域の魔王』と呼ばれていた人族らしき描写は全て消え、当り障りのない内容しか読めない。
まるで、何かの間違いがあってその証拠を消すかのように、全て回収され焚書されたかのように、すっぱりと消える。
数千年前に戻ることが出来れば、この謎が解けるのに、と何度も思ったが無理なものは無理である。
なお、滅んだ地についてだが、氷漬けだけが原因で足を運ぶことが出来ない訳ではない。
氷漬けの境目からどうにか抜けた後は、火山かと見紛うばかりのマグマが流れており、ところどころで有毒な蒸気が噴出する。
更に魔力汚染によって、空気が腐っており、その地で呼吸をすれば瞬く間に体内に腐った空気が入り、身体が内部から腐り落ちる。
そんな地を誰が研究しに入り込むか。
だが、私は研究したい。
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