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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第?章-炎竜と踊る「Dead End」-
165/503

F17 A IV

※警告※


R-15 兼 胸糞がそこそこ。

嫌いな方はお戻りください。

また第三章後の内容が散見しています。

こういったものも嫌いな方はお戻りください。



 どうやらヒロキという板金鎧が、力と魔力の全力を以って一つの斬撃を放ったようで外盾と内盾を貫通した上で、私の左腕に当たりズタズタに引き裂いた。

 最早、普通血肉族であれば左手は動かないだろう。

 私自身が魔族なだけあって、溢れ、垂れ流れるのは血肉ではなく、魔力素。


「フッ、左手切り裂いてやったぜ。今度は身体に当ててやる」

 息も絶え絶えで肩で呼吸している板金鎧。

 次は最早ない、とは思うが、通常の魔族であれば、ここまでされたら恐怖を覚えるだろう。

 ましてや「次は身体だ」と宣言された。

 稀に当たったものを狙って"当てた"ものとして、宣言するのは一つの交渉能力だ。

 これ一つで慄く。


 だが、私は魔族で。

 兄上から魔法陣を頂いた者だ。

 それに痛いが致命傷には程遠い。

 身体をズタズタにされても、致命傷ではない。

 だからこそ。

「だから?」

 と答えてやった。


「だから、なに?

生きたいなら、身体を明け渡せって?」

「…………、それ以外に何がある?」

 本当にそう思っていたのか。

 甘いなぁ。

 兄上謹製のツペェア焼きの"クリーム"並に甘い。

 

 ……そういえば、ツペェア焼きの"クリーム"は十一年前に舐めたっきりだ。

 魔族の街に帰ったらヤギの乳を絞って作ってもらおう。

 とにかく。

 致命傷でもなんでもないのに、身体を明け渡すなんて、どういうことなんだろうか。


「……致命傷でもなんでもないのに、なんで?」

「……痛くないのか?」

「いやぁ、痛いけど。気にしないなぁ、別に」

 まぁでも。

「痛いけど、致命傷でもなんでもないけど。

兄上曰く『舐めプレイをしていると足元を掬われて、本当に死に得る』とか言っていたし」


「まて、お前の"兄上"ってどういう奴だ」

「そうだ、てめえの言動、ところどころがおかしい。

なぜてめえは"日本語"が使える!

この国の連中は"日本語"の言い回しが理解出来ないが、てめえは理解している。

何故だ!」


 答える義理はない。

 だが。

「血肉族によって事実をねじ曲げられた人族ですけど?」

「事実ゥ? いやそれよりも、お前、いや"兄上"というのは"日本人"か?!」


「……貴様ごときが"兄上"と呼ぶな穢らわしい」

 ほんのすこしトサカにきた。

 そう、ほんのちょっぴり。


 話が進まないので、自分の左腕を引き千切る。

 激痛が走って涙目になるが、しかし致命傷ではない。

 繊維が千切れるようなブチブチという音が聞こえるが、漏れ出るのはきらきらと輝く魔力素と魔石の欠片。

 引き千切った左腕を板金鎧の前に投げ出す。

「ほら、持ってけよ。今封印すれば、魔石になるんじゃない」

 私が板金鎧に言えば「あ、ああ」と呆けた顔で、封印処理を施す。

 なるほど、ああやって即座に出来るのか。

 ああ、恐ろしや。


「で、私自身超高濃度の魔力持ちだからね。国が買えば高いんじゃない?

この場から逃げ出せれば、ね」

「ああ、簡単だとも。お前の身体を――」

「ああ、それ無理だから」

「何……?」

「さっきも言った通り、"舐めプレイ"止めるって言ったでしょ?

最初のうちは仕方がないのだけども、魔力素が必要以上に満ちているから、順当に行ってれば力を出している筈だったんだよね」


「…………何を……、言っている」

「まぁなんというか、羽虫をプチプチ潰している感覚がとても楽しくてさ。思わず」

「だから、何の話を――」

「だから、『勇者』とこの街が滅ぶんだよ、今から」


「なん……だ、と」

「寝言は寝てから言え。

第一どうやって滅ぼすんだ、てめえは左腕ねーだろ」

「ああ、これ?

別に、こう出来るし」

 といってやったのは、左肩に火を当てて爆発させること。

 普通ならば消し飛ぶだろうが。


「私の身体は色々特殊でねぇ。火があれば、復活するのです。このように」

 そして見せたのは私も左腕。

 ズタズタに引き裂かれた左腕ではなく、何年も付き合っている自分の左腕。

「火属性の魔力の再構築……か?」

「詳しいことは分からないけど、そういうことにしておくよ」

 兄上は"リザレクション"が云々って言ってたけども。


「さて、そういう訳なので痛みがあっても致命傷でもなんでもないので。

だからその脅しは屈する阿呆はいないってのと」

「…………、」

「ここまで魔力素を満たしてお膳立てしてくれたのだから、全力を出すのが礼儀でしょ」

 だから。


「くすくす、この地よ。我が声は風へ、涙は土へ、想いは水へ、そして言葉は火へ。

そして私は」

 そういって私は、とある魔法陣を展開した。

 その魔法陣は私を最終段階へ進ませるための魔法陣。


「滅べ、我が敵となりうる者は死となれ」

 私の身体を猛火が焼き尽くす感覚ある。

 痛いとか熱いではなく、ただひたすら温かい。

 そう兄上の胸ポケットの中で寝ていた、あの微睡みのように。

 ずっと寝ていたくなる、この感覚。

 愛する(ひと)の元で、ずっと一緒に。


――目覚めよ、――。


 その思いを断ち切られ、強制覚醒され私の視点は高くなり。

――ああ『勇者』どもの顔が、驚愕に塗り潰されていて心地よい。

『最終騎士』に命令を飛ばす。

――得物をよこせ、と。

 即座の返答として、この状態の私が扱う炎を纏った、いや炎が燃え盛り続ける大剣と、氷の冷気を常に発生させる大剣の二刀流。

 それを受け取り、今度は『前衛要塞』に命じた結果は。

 私の不安定な身体を覆う鱗の形状をした盾、いや鱗形の鎧(スケイルメイル)だ。

 背中にも鱗形の鎧が装着され、さらにお尻から伸びる紐いや縄のようなものも覆われる。


 口からは涎、いや"燃素"が落ちる。


 ガタイのいい『勇者』が何かを呟く、大方遺言だろう。

 対して板金鎧の方は、「二足歩行のドラゴン……だと」とか何とか。

 "ドラゴン"という単語がよく分からないが、竜種のことだろうか。

 そう、私は『勇者』に狩られ続けた『竜種』だ。

 そして魔族でもある。

『勇者』が嫌いで、『血肉族』も嫌いで、兄上を壊した全てが嫌いだ。


「来い! 『焼灼焔の言霊(ムスペルヘイム)』!

奪熱凍結の言霊(ニブルヘイム)』!」

 通常駆動で両方を召喚する。

 双大剣を構える姿は、兄上の二刀流の構え。


 正眼に二刀を合わせ構える。

「滅べ」


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