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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第?章-炎竜と踊る「Dead End」-
164/503

F17 A III

※警告※


R-15 兼 胸糞がそこそこ。

嫌いな方はお戻りください。

また第三章後の内容が散見しています。

こういったものも嫌いな方はお戻りください。


『勇者』を生かしていたら、いつ魔族の街が襲われるか分かったものではない。

『勇者』を殺すことをしているのは、私の種族と兄上の事柄があっての怨恨の復讐ではない。

 ……魔族の街が襲われないための『剪定』だ。

 世界に四、五人程度の『勇者』がいて、そいつらを殺すだけならば私たち八人がぶちのめせばいいけども、現状何人もの『勇者』を殺してきた。

 つまり泉が湧くように、こんこんと湧き出る『勇者』をどうにかする。


 街の守護者である、私たちがひたすら『勇者』を潰す。

 "ローテーション"とかいうのを組んで、旅して殺していく。

 ついでに牙を抜かれた魔族と襲ってくる奴と、腐肉漁りの沸く魔族狩りと、非戦闘員を分け隔てなく殺す。

 非戦闘員を下手に残したりしたら、腐肉漁りの魔族狩りに"クラスチェンジ"しそうだからだ。

 とにかく有限実行とばかりに、『勇者』ヒロキとかいうのとガタイのいい奴に向けて、「獄炎(ヘルファイア)」いや、それ系統の上級魔法をぶつける。


「穿ち、焼き払え。「文明根源の厄災災禍(インフェルニティエンド)」。其は災禍の炎なり」

 その魔法は密閉空間であればあるほどに威力が上がる。

 よって、同時に起動するのは簡易式として兄上からお借りした『世界』。

『世界』が閉ざされた瞬間に、私の握り拳ほどの燃え盛る火の玉が、円を描くように周回する。

 周回をし続けている間に描かれるのは「炎」のイメージ。


 兄上はこの魔法を「文明根源の厄災災禍(ヘルファイア)」と名付けていたが、「"ヘルファイア"が二つあると皆が混乱するだろう」ということで、名称をわざわざ変更してくれた。

 それも私が初めて使う段階になってからだ。

 つまり、私専用の魔法。

――だから、"ヘルファイア"と"インフェルニティエンド"は私のお気に入りの魔法。


 みるみるうちに火の玉が描き終わった魔法陣から、赤白い光が滲み出る。

 その赤白い光に、今更動き出す『勇者』ども。

「あははは、遅い! 遅いよ『勇者』!」

 私の声と共に発生するのは、描かれた魔法陣から発生するのは広範囲の爆圧と、全てを燃やし尽くすほどの高熱と。

 地面から『世界』の天井へ向けて直上に立ち昇る火柱、いや光。

 その姿はさながら雷雲の中を踊り狂う竜のよう。


 元となった"ヘルファイア"のように生命の呼吸は許されない。

 穴という穴から熱は入り込み、炭ではなく一瞬にして灰にする。

 それだけではない。

 この魔法は兄上がいう"エフェクト"が激しい魔法だという。

 つまりは、ある程度離れていても、遠目から見えるということ。

 よって、起きることは非戦闘員にのしかかるのは、死と隣り合わせであるという言葉を発しない無言の脅迫。

 それによって起きるのは恐慌。

 慌てて逃げようとする有象無象。


 魔族狩りどもも逃げ出そうとしている魔力反応。

 だが。

「あはははは、無駄無駄。何のために『世界』を張っていると思ってるの」

 そう『世界』を既に張っている。

 簡易式とはいえ、私と獣魔組の"魔術師"の魔法でどうにか天井を破壊できるものだ。

 天井ではなく、しっかり張られた根元の破壊など今のところ誰にも出来ていない。


 しかし、諦めきれないのか至るところで『世界』が殴られている感触がある。

 全くの無駄なのに、だ。 

 薄っすら怒号と悲鳴が聞こえる。

 血肉族の赤ん坊の声が聞こえるが……、肉が潰れた音が聞こえた。

 大方踏まれたのだろう。

 肉が潰れたということであれば、死んだようだ。

 可哀想に。


「へっ、何が無駄だ、女ァ」

 私としたことが、殺しきれなかったらしい。

 いやはや、今回の『勇者』は大当たりか。

 振り向けば、ヒロキとかいう板金鎧とガタイがいいのが、立っていた。

 ところどころが焦げているが、普通に動けそうだ。


「あはははは、意外と死んでないのね。本気では無かったけども」

 事実、本気ではない。

 本気だったら兄上の「天空から墜つ焼灼の槍」か「偽りなき、無垢なる太陽」辺りを撃つ。

「こんな程度の魔法、俺たちからすりゃ焚き火だぜ」

 焚き火か。

 芋を焼こうとしても、灰にする焚き火とか価値はあるのだろうか。

「あはははは、強がっちゃって。

ところどころが焦げてたり炭になっているようだけど?」

「こんなものは傷にもなんねぇな」


 強がりを言っているようにしか聞こえない。

「あはははは」

「てめえ、何がおかしい」

「だって、あはははは」

「…………、」

「だって、無理しているんでしょ。あはははは」

「…………、」

「まぁいいや、あははは。

さっさとやろゲホッ。あ、ごめん。まだ笑い過ぎてお腹が」

 目尻から涙が出てきてしまう。


 身体のところどころから、煙が出ているのに"傷にもならない"とか。

 回復魔法使っているのかな?

『勇者』は割りと回復魔法使えていたりするけども、これもそういう類かな?

「どこまで続くかなァ、その余裕」

「てめえは絶対に許さない」

「ああ、俺もだ。お前は絶対に許さない」


 ちょっとだけ興味が沸いた。

「許さないとどうなるの?」

「てめえのことは犯して、ほかの男どもにも輪姦(まわ)させてから、封印処理して殺してやる」

「俺もだ。普段絶対に魔族には手を出さないが、今お前には手を出して殺す」


「あはははは、えーとなんだっけ。

ああそういうのって"取らぬ狸の皮算用"っていうんだっけ。

出来るだけの実力を備えてから(うそぶ)くようにね。

ま、次の人生で人族に生まれるといいね。

ほら、魂ごと灰にしてあげるからさぁ」

「へっ、てめえの顔が恥辱に歪み、そのでかい胸を好き勝手に出来ることを考えるぐらいに、俺の未来は確実だ」

「あははは、悪いけどこの胸は兄上だけのものだから。

あと恥辱に歪む顔も兄上にだけしか見せてないから、ね。

まぁそのなんだ。"人の夢は儚い"って書くんだっけ。よく分からないけど」


 ところで良いのだろうか。

――私の能力と魔法は戦闘態勢に入ってから順々に、強化されていくものなのだけど。

 最初からフルパワーの"魔術師"には私は勝てないし、"闇月"と"銀月"姉妹のあの切断にも勝てない。

 それぐらい、私は後半になっていくに連れて強くなるのだけども、本当にいいのだろうか。

 こんなに話していて。

 私としては後半になるにつれて、死んだり犯される危険性が零になるからいいのだけど。


「ハッ、吐いた唾飲むなよ……?」

「あはははは、『勇者』たちが悲鳴と断末魔と世を恨む言葉が聞けると思うと、楽しみで仕方がないよ。

ぐっちゃぐちゃにしてあげる。

貴方達、血肉族が魔族の女に対してやった"ぐっちゃぐちゃ"という擬音語。

分かるでしょ、私は違った意味を持たせてぐっちゃぐちゃにしてあげるけど」

「言っていることが最低だな、このおっぱい魔族は」


「あはははは、ありがとう。褒めてくれて。この胸を兄上に見せて触って貰おうにも、なかなか触ってくれないからねぇ。

いつでも、どんなときでも触るどころか、揉んでもいいって言ってるのだけど」

「へぇ、羨ましいな。まぁ俺達があとで揉んでやるからなァ」

「実力が伴ってから、嘯くように。

……さて、楽しもうよ。殺し合いを、刺し合いを」

「…………、」


「私が負ければ貴方たち、血肉族は私の身体を愉しみ、民草は死なない」

 だけど。

「貴方たち、血肉族の戦闘員が全滅すればこの地を灰にする。

これ以上にないってぐらいの"シチュエーション"でしょ。さ、殺ろう殺ろう」

「…………、」

「それと考えたりして、騎士団の到着を待っているのかどうかしていると思うけど。

それ、悪手だから」

「…………なに?」


「兄上が言ってたことを口に出すね。

"閉じられた空間内で、常に燃焼し続ける火炎相手に、時間を掛けたらどうなる?" だってさ。

どういう原理かは知らないけど、『勇者』ならその答えは知っているとかなんとか。

……知ってる?」

「流石、魔族最低だな。非戦闘員まで殺すとは」

「あはははは、非戦闘員の魔族を捕らえて殺しお金にし、または捕らえて犯して子どもを生ませて男児であれば魔石。

女児であれば育ててまた孕ませる、最低の血肉族が何をほざく」

「…………なんだと」


「ああ、なぜ知っているかというとね。一つ農場を壊したからさ。

いっぱいいたよ魔族の女の子。哭きながら……ね。

逃げられないように手足を折って、さ。

涙混じりのあの顔。

まとめて殺すときのあの顔。


……好きなんでしょ、そういう"シチュエーション"。

反吐が出るね、これだから血肉族は」


「……まて、それは聞い――」


「あははははははははははははははははははは!

さあ!

殺ろう!


さあ!

殺し合おう!

血肉族がこれ以上の滅びがないようにこの私を殺す!

そして、私自身が滅ぼされないように!

私が死んだことで兄上が、これ以上壊れないように!

滅び! 滅べ! 世界の血肉族!

我が種族の牙を! 爪を! 皮を! 肉を!

食した『勇者』に滅びを!」


 さぁ。


「死ね」


 私の言葉を皮切りに、発生するのは自身の身長と同等の高さを持つ"タワーシールド"と呼ばれる分厚い長方形の金属製の光沢を持つ盾。

 それが縦横に幾重にも連なる。

「あはははははは。これを貫いて私を殺してみせろ『勇者』!」

 煽っておきながら、動作させるのは防御の構えではなく、攻撃。

「振り下ろし、潰せ」


 その号令に従い、"タワーシールド"と呼ばれる盾が五枚だけ『勇者』に向かって振り下ろされる。

 潰されたその音は骨が砕ける音ではなく、肉が潰れる音。

 しかし潰されたのは『勇者』ではなく、魔族狩りの男。

 どうやら、逃げずに襲いかかってきたようだ。

 だが。

「あはははははは、羽虫ごときが貫けるか!」

 だから。

「肉を削ぎ、肉を砕け」

 盾が"タワーシールド"の形状から、縁が刃になるように自動で変化する。

 形はいわゆる"カイトシールド"か。

 私自身の腕の動きに沿って、盾たちが蠢動する。

 羽虫程度の動きであれば、鎧ごと身体を削ぐ。

 

 ガツンという金属同士がぶつかった音に、鎧を引き千切る音。

 その結果は羽がもがれた羽虫のように、鎧が強引に身体の肉ごともがれ、半死半生の羽虫ども。

 胸の肋骨が見えているところから、最早死に体。

『歌姫』のような趣味は持ち合わせていないので、力尽きからの死はさせない。

 問答無用で"カイトシールド"の一部を"タワーシールド"化させて、押し潰す。

 肋骨がへし折れる音。

 自分に呼吸の乱れなどはない。


 最早慣れた。

 作業でしかない。

 事実、血肉沸き踊る戦闘など街に襲いかかってきた戦争以来だ。

 だが、今回は「文明根源の厄災災禍」を耐えた『勇者』が二人いる。

 だから楽しい。


「あはははははは、楽しいなぁ!

とっても楽しいよ! 『勇者』まだまだだよね!」

「羽虫、羽虫と舐めるんじゃねぇえええええ」

 と叫び、特攻してきた羽虫が来たが、なんてことはない。

焼灼焔の言霊(ムスペルヘイム)』の自動迎撃の「瞬炎」を射出。

 一瞬にして即焼死。


 本体である私を直接狙うのは、よい判断だ。

 だが、既に『前衛要塞』は起動している。

 よって盾を避けてその隙間を狙って私を即死させる一撃を当てる。

 または、盾を物ともしない一撃を当てるか。

 二つに一つ。

『前衛要塞』の外盾と内盾は発生させるのに、時間を少々要する。

 つまり、私に勝つには速攻を掛ける必要がある。

 だが『勇者』どもは何故か時間を掛けた。


 それにより『前衛要塞』は完成し、『最終騎士』も起動しきっている。

 もしかしたら。

 ……ヒロキとかいう"『正義』と『悪』論"であれば、『悪』はまだ『正義』を待つ側なのだろうか。

 馬鹿としか言いようがないが、事実そうとしか見えないので仕方がない。

 とにかく、完成した『前衛要塞』の合間を縫って叩くのか。

 外盾で、私自身の周囲を円状に周回させているため、全方位から攻められても対処出来るようにしている。

 であれば、刀剣で隙間を突くのは非常に難しい。

 では、魔法かと言えば全く以ってその通りだ。


 が。


 その魔法にも『前衛要塞』が対応し始める。

 というのも内盾の存在だ。

 内盾の効果として魔法反射(マジックリフレクト)増幅(アンプ)と呼ばれる効果を持つ盾がある。

 その名の通り、魔法をあてたとしても反射される。

 それも、何倍かに増幅された状態で。

 時間をかけると私の弱点が、潰されていく。


 だから、私相手に時間を掛けるのは愚策。

 分かっていても潰せないという、『歌姫』と『薬術士』は言っていたけども。

 魔法耐性も得た。

 最早敵はない。


 しかし。



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