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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第?章-炎竜と踊る「Dead End」-
162/503

F17 A I

※警告※


R-15 兼 胸糞がそこそこ。

嫌いな方はお戻りください。

また第三章後の内容が散見しています。

こういったものも嫌いな方はお戻りください。

「雑魚ね」


 正直に言えば、非常に幻滅した。

 これが冒険者か。

 これが人族、または獣人族の荒くれ共か。


 あの娘たちの無尽蔵さや規模、特殊性、理不尽さを魅せつけられて、焦りを覚え。

 覚えただけで何も出来ず、兄上から下賜された力でどうにかしてて。それでも焦りだけが先行して。

 兄上が壊れたとき、強く強く力を願ったあの日。


 帰るべき故郷を亡くさせ、恨みと理不尽と責任を押し付けられて追撃される日々。

 同族からは武器を持たれ、故郷から追われ、仲よき心を許したはずの者たちからも手の平を返され、殺意・害意を以って接される。

 甘い声を掛ける者からは闇討ちされた。

 行く先々で石を投げられた。

 中には子どもを使って搦め手を使う奴もいた。


 私たちを悪として当然のことをしたとばかりに、手段を選ばない人族、獣人族。

 人族と獣人族からの迫害され、奴隷となり、それらの原因として八つ当たり気味に私たちに悪意を持つ魔族。

 人族のように子どもを使って、あの手この手で殺そうとしてくる。

 子どもごと殺したことなんて、家族全員の両の手と足を使っても足りないぐらいに殺した。


 当然の殺したことを糾弾するとばかりに、更に攻撃され。

 その度に殺してきた。

 なかには、森の中に私たちがいるという、それだけの理由だけに山狩りをされたこともある。

 何度、泣いたか。

 何度、家族と共に泣いたか。

 何度、諦めようとしたか。


 終わりの見えない地獄に、何度心が折れそうになったか。

 私たちなどどうでもいい。

 兄上は人族だ。

 人族が魔族に恨まれ、獣人族に殺されかけ、人族に殺意の的になる。

 力が少しだけ強いだけの、ただの人族なのに。


 故郷を守れず、全てを滅ぼしてしまった。

 たった一人の男の子。

 たった一人の義兄。

 たった一人の私が好いた(ひと)

 兄上が何をした。


 兄上が誰にも出来ないことをして、故郷を守ったのに。

 約束を果たしに行ったのに。

 守れなかったと恨むのはお門違いだ。

 なのに、なんで。


 ……たすけて。

――最後の私がずっとずっと一緒にいたいと思った人を壊さないで。


 でも、現実はこの通り。

 血肉族の民は、反乱する気力も牙も抜かれたにも関わらず起き得ない魔族の反乱を恐れ、冒険者と呼ばれる荒くれ共を崇め、魔族を狩り続ける。荒くれになりきれない者はのほほんと暮らし続ける。

 魔族は残らず総奴隷化し、戦うための牙を失い、ただ搾取され、女は犯され、男は魔石となり。

 いくつもの氏族が全滅した。

 サイエツ系森人種や、セトア系山岳巨人族などは絶滅したと聞く。


 どれも大人子ども問わず女性は全て囚われ、男だけで集落を維持する。

 当然不可能だ。

 男だけで次世代の子は生まれず、絶滅する。

 絶滅に抗うため、近くの村や街へ赴けば、魔族が攻めてきたとばかりに騎士団などがやってきて殲滅される。

 結果、過去の魔族と人族・獣人族で手を取り合っていた秩序ある世界ではなくなり、荒廃した世界となってしまった。


 血肉族に狩られた魔族は魔石化される。

 一人二人ではなく、多人数が囚われて、ついでに原因の根絶とばかりに魔族の集落も襲われて、滅んでいったと聞く。

 というのも、完全に見た目が人族の"天使"と"歌姫"が街に侵入して聞いてきたって程度だけれど。

 兄上一人に多数の女性で構築されている我々など、当然何度も襲われた。

 中には「女の人がいっぱいいるんだから、一人ぐらい恵んでくれてもいいだろ」と言われたこともある。

 もちろん、断って殺し合いになりそういった男性を殺してきた。


 結果、幼い男の子三人を残して集落を全滅させてしまったこともある。

 それも、集落を人の住めない大地に汚染もしてしまった。

 そんな大地に残された、いや残されてしまった光を映さない男の子の目を、私は一生忘れないだろう。


 生きるか死ぬか、絶滅するか否かの瀬戸際で抗っている魔族がいるなかで、血肉族は何をしていたか。

 魔族を狩猟し続けた。おかしいと思って誰一人当然のこととばかりに、魔族狩りに精を出しているだけだ。

 

 男を殺して魔石にするだけ。それだけを多数の冒険者がやってきた。

 兄上が言った「消費に事欠かないエネルギー資源」と呼ばれる、魔石。

 魔族の体内で魔力が圧縮された結果の魔石。

 炭鉱などで発掘される、魔力が散乱した魔石とは言えない、魔鉱石。

 今更、魔鉱石など使える訳がない。


 戦争にだって、一般生活にだって圧縮された高濃度の魔石が一般化されてしまった。

 男性魔族を見つければ、封印処理して殺せば高濃度の魔石という名のお金が手に入る。


 私たちと旅で出会った魔族を夫に持っていた女性は、こう言っていた。

 国にも家庭にも売れるお金。

 隣人が金貨になった。

 村に隠れ住んでいた、魔族は皆金貨にされたと。

 魔族の血が混じっているという理由で、息子も目の前で金貨にされた。

 娘は奴隷商に強制徴収、そして自身は穢らわしき魔族の血を高貴な人族または獣人族に混ぜたという理由で、粛清という名の元に殺されかけた、と。

 今は娘を探していると言っていたが、ほぼ諦めていると言っていた。


 女は魔族だろうが精を受ければ孕む。

 性奴隷となった女は、大方精を受けて妊娠し子どもが男であれば魔石にされ、女であれば孕める年齢まで育てられ、あとはまた産まされる。

 それの繰り返し。

 外に出されることなどない。

 出す理由もない。

 だから見つからない、だろうとその女性は諦めていた。

 "断腸の思い"で語る女性は、痩せこけており、聞いた実年齢と見た目の年齢が違っていた。

 子を想う一心の母がいるのに、血肉(ちにく)族は何もしない。

 自身の生活の潤いでしか、魔族を見ていない。


 魔族が死に絶えていく中で、血肉で動く人族と獣人族の生活の潤いのために殺されていく。

 我ら魔族は家畜ではない。れっきとした人間(にんげん)だ。

 

 そんな魔族狩りの"エキスパート"が、私相手に殺されていく。

 最初に魔族狩りと呼ばれる冒険者以上の存在と呼ばれる『勇者』という者に対して、ニルの砂と私の属性を使った「粉塵爆発(サンドブラスト)」を至近距離からブチ込んだ。

 結果、死んだのは『勇者』ではなく、残念ながら血肉族の女。

 酒場で、依頼受付と魔石購入、奴隷商人との渡り、そして飲食販売を行う"ギルド受付嬢"とかいう女。


 あくまで一つの威嚇だ。

 こんなもので死ぬ奴はありえない。

 何せ低級起動の魔法だ。

 大事なことだから二回言うが、死ぬ奴はありえない。

 だが、実際に死んだ。

 "ギルド受付嬢"とかいう、冒険者という荒くれに色目を使う売女が。


 死に方は爆発の衝撃で建物の壁に強打され、魔力検知に対して自動迎撃能力を持つニルの砂が、売女の鼻と口から内部に入り込み窒息させ、私の熱で内部から焼き切った。

 色目を使うしか出来ない売女だからといって、自衛の一つも満足に出来ないとかあり得なさ過ぎる。


 学生のときですら、ニルの砂を初見で対処する者が多かったというのにだ。

 建物内に張った簡易『世界』で、粉塵爆発の衝撃で外に飛ばなかったドン臭い雑魚相手を『焼灼焔の言霊(ムスペルヘイム)』の最低駆動の燃焼能力で"酸素"とか呼ばれるものを即消費させてみた。

 結果は、苦しみながら死んでいった者多数。

 残った者は、高温に晒され皮膚がズルズルに熔けての焼死。

 素晴らしき焼肉の匂い。


 兄上謹製のタレを掛けて食べたくなった。


続きは2/2か2/3を予定。

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