二日目 -『精神の願望』-
「やあ、初めまして。エレイシアさん」
その人は私にいきなり挨拶をしてきた。
この場には誰もいない。
いるのは、今挨拶をしてきた男の人と、前髪がとても長くて顔を隠している人。
男の人はとても高そうだけど見たことがないスッキリとした服を着ていて、少しでも汚したら怒られそうな服をしていた。
対してもう一人の前髪の人は、赤黒い服を着た人だった。
この場所は見たことがない空間だ。
床と天井は真白い部屋で窓があるけど、お外は夜空のお星様のようなきらきらと光るものが漂っている空間。
「ああ、ここが気になるかな。
ここは僕たちと、エレイシアさんが対話出来るように用意された空間でね」
「…………、」
「おっと、要点を言わないとね」
ごほんと一咳した、男の人。
なんとなく、お兄さんっぽい仕草だ。
「エレイシア、きみのことが気に入ったんだ。
僕と彼女はね」
彼女?
ああ、隣の前髪の人は女の人かな。
どちらにせよ。
「私にはお兄ちゃんがいるので、間に合ってます。駄目です」
「……え、」
「怪しい人には付いていかないように、と。
お兄ちゃんから、聞いています。怪しい人だから、嫌です」
「ええっと、誰が……?」
「そこの前髪の女性の人」
「プッ」
そう言ったら、男の人は笑い女の人はニヤっと嗤った。
そうして私は気付いたら、寝台の上にいた。
きっと夢だったのだろう。
二度寝したけども、その夢は見なかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――力が欲しい。
何度、そう願ったか。
お兄ちゃんが私を頼ってくれてもいいように。
強くなりたい。強くなりたいと願っていても、私は弱い。
願っても願っても、私には歌しか無い。
――もう、守られるだけの『家族』は嫌だ。
『あるばいと』であの怖い人族に蹴られてしまった私も、恨みこそすれその恨みを晴らす力を持ちあわせていなかった。
人族と獣人族が憎い?
あの、体たらくで?
何も出来ない自分が、何をほざく。
おかあさんを奪った人族と獣人族への恨みを、お兄ちゃんを使って晴らす……?
――ふざけるな。
私の力がないばかりにお兄ちゃんを使って恨みを晴らすなんて。
お兄ちゃんは人族だ。
そのお兄ちゃんに同族を殺せ、というのか。
――人に手をあげる度に哀しそうな顔をする、お兄ちゃんに『殺せ』なんて絶対に言えない、言わない。
お兄ちゃんが人を殺す度にお兄ちゃんの鮮やかな色が、黒く濁るんだよ。
――人族なんかに。
お兄ちゃんを奪わせない。
殺してやる。お兄ちゃんは私、いやこの『家族』のものだ。手を出す奴は絶対に許さない。
――だから。
――全てを惨たらしく殺して壊してやる!
――全てを滅ぼし、全てが畏怖を以って頭を垂らすようなそんな力を。
「今、ここに……!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そう呟いて気付いたら、昨日の夢で見た空間が目の前に広がっていた。
床と天井が真白く、お外はきらきらと輝く空間。
力を願ったけど、こんなところにいる暇なんてない。
ただ、私は――。
すると、声が後ろから聞こえた。
「やぁ、さっきぶりだね」
その声は夢の中で会った声と変わらない。
暖かくもなく冷たくもなく。
「また、貴方達ですか。ここにいる暇なんてないのです、今すぐ帰して下さい!」
こんなところにいていいものではない。
早くしないとセリスお姉ちゃんが犯されて、エルリ姉も……!
「おっとっと、帰したいところだけどちょっと落ち着いて話を聞いてほしい」
「なにをですか、早く早く帰らなければ、セリスお姉ちゃんが――ッ」
「テメェは要件をさっさと言わないから、エレイシアが焦ってるだろう……がッ」
「おべぇあッ」
目の前で前髪が長い女の人が、男の人に飛び回し蹴りで蹴り出て後ろに吹っ飛んでいった。
その光景に思わず目を丸くする。
「あぁ、済まないね。あれ面倒な奴だから、ほっといて本題ね。
アタシの名前は『心なき改造台』、管理者、いやエレイシアの言う"お兄ちゃん"からは"ハートレスアルター"って呼ばれてる。
聞いたことある?」
聞いたことはない。
だから、首を横に振る。
「ううん、聞いたことは」
「そう、アタシの特徴は殺戮系魔法。
生活に使えそうな魔法など、刃物を呼び出してお野菜をみじん切りにするぐらいしかない。
オーケー?」
「……おーけー?」
「あー、分かった? ってこと」
……なるほど。
「うん、分かった」
「オーケィ。で、だ。アンタの願いはいわゆる殺戮系……。
どう、アタシを使わない?
アンタの望む殺戮出来るよ」
「望む、殺戮……?」
「……うーむ、無意識系の類かしら。
ま、とにかく"お兄ちゃん"を人族か獣人族に取られたくない、出来ることであれば二度と寄ってこないで欲しいと願うなら、そういうことに近いことが出来るってこと」
「ホントに……?」
「ホントのホントよ、但しアタシは自分でも言うけど残酷だからね。それだけは覚悟して欲しい」
"はあとれすあるたあ"さんは何も出来ない私を認めた上で、私に手を差し伸べる。
それに伴う不利益は、この際一先ず置いといて今この場は確かに力が欲しい。
全てを壊して、全てを殺す力が――「欲し――」
「自分から売っといて、残酷云々とか笑えますね」
私の声に被せるように、男の人の声が響いた。
「あ、生きてたの? 結構本気で蹴り飛ばしたのだけど」
「顕在化してないでしょう、お互い。
あぁエレイシアさん、僕の名前は『永久不滅の誓文』と書いて、"インペリシャブル・エコー"と言います。
他にも幾つかありますが、基本能力は「音の保存」と「音の多重増幅」になります」
「おうおう、じゃあアタシの能力については殺害を目的とした能力でね。これは多分見たほうが早いね」
「見たほうが早い?」
そう言うと"はあとれすあるたあ"さんは、犬歯をむき出しにしながら笑んだ。
私の問いかけに"はあとれすあるたあ"さんではなく"いんぺりしゃぶるえこお"さんが答えた。
「ええ、『心なき改造台』の管理者による初期イメージは、黒く暗い殺戮と怨嗟の呪いで出来た大巨人ですから。それに準じた姿で顕在化するでしょう」
「ああ、『永久不滅の誓文』が言うとおりで、アタシの力は殺害と呪いと怨嗟だ。
この場の"敵"を殺し回った上でお釣りもあるほどに、過剰な滅びを齎す」
アタシの知っている魔法陣でもここまでトんでいる奴はいないねと、嘲笑する"はあとれすあるたあ"さん。
――そう、なんだ。
じゃあ。
「……お願いします。お兄ちゃんとエルリ姉さんの負担にはなりたくないです。だから今直ぐにでも力が欲しいのです」
「"思い立ったが吉日"といいますしね」
「そうだねぇ、さてアタシの魔法陣は赤黒いこんな魔法陣だ」
「僕は青みがかった緑色のこれですね」
二人は魔法陣を私に魅せつける。
とても、綺麗だ。
「さ、契約だ。エレイシアさんの『精神の願望』を見せて」
見せ方は分からない。
だから、左腕を見せる。
「うむうむ、やっぱり独自に描かれているね。
エレイシアさん。きみのイメージをこの場で見せて。
自分はここにいるというイメージを」
そう言われて改めて想像する。
内容は、ザイエニアでお父さんとお母さんと私がいたあの日だ。
そして、今もしザイエニアにある生家に帰れたら。
帰ってみれば、お父さんもお母さんも、実はいて出迎えてくれたら。
そう、想像した。
「……オーケィ。ザイエニアってどこだろう」
「管理者も、『ザイエニアってどこ』って言ってましたね」
「その解答は?」
「海国だとか」
「なるほど……じゃあアタシ"ゴンズイ"で行こうかな」
「こりゃまた、ニッチな生き物を想像しましたね。
ウナギじゃなくて、ゴンズイですか。第一、アレナマズですよ」
「いいじゃん、ナマズ。愛嬌ある顔しているし」
「ウナギのほうがいいと思いますけど、身体が長めになるのですよね。
寸胴体型のナマズよりウナギの方が長いですよ」
「突っかかるなお前、いいんだよゴンズイは毒あるだろ」
「ウナギは生食限定ですが、毒ありますよ。ああ、凶暴性でいうならウツボがいいのでは」
「やだよ、ウツボは怖い顔してるじゃん」
……なんの話をしているのだろうか。想像は止めていいのかな?
「ああ、エレイシアさん。もう止めていいですよ、想像。
『ハートレスアルター』さんの姿形は、確定しました。腕のあるウナギ型です」
ウナギってなんだろう、食べられるのかな?
でも、毒あるって言ってたな。
「詳しい形状については、出現してからのお楽しみですね」
「あ、……うん」
「さて、僕の方ですが、エレイシアさんの歌声を保存、複数保存による多重起動、元ある魔法の時限起動などを持っています。
他にも幾つかありますが、一先ずこんな程度とお考え下さい」
「あ、はい」
ええと。
「ああ、そうそう」
なんだろう?
「エレイシアさんのいう"お兄ちゃん"、我々でいう"管理者"は同一の方です。
管理者から、よく言えば主悪く言えば宿主たるエレイシアさんに我々が仕える相手を変更する訳です」
「う、うん」
「エルリネさんより"奴隷"は、主が変われば名前を主から頂く聞いております故、名前を頂けますか」
…………えっ?
「わ、私は人様に名付けられるほど、立派では……ないです」
事実、私は人族に恋をして、人族に恨みを持つだけの魔族だ。
そんなお兄ちゃんのような立派な存在ではない。
例えるなら、お兄ちゃんのことが好きだけど表に出られない澱みみたいなもの。
なのに。
「そんなことありませんよ。我々が生まれた世界では、"名付け"など溢れていましたから」
そう、"いんぺりしゃぶるえこお"さんは、顔を綻ばせた。
なんとなく、そうなんとなくだけど。
顔の造りとか違うはずなのに。
その顔がお兄ちゃんの面影が映った。
目を閉じて"いめえじ"をする。
『殺戮と怨嗟で出来た呪いの大巨人』。
楽しい"ももたろう"や"にんぎょひめ"という物語の他にも色々な物語を教えてもらった。
その中の一つに"おおぐいのがるがんちゅあ"というのを教えて貰った。
だから、これ。
目を開けたら、"いんぺりしゃぶるえこお"さんがニコニコとしている。
やっぱり、お兄ちゃんにしか見えない。
「決めて頂きました?」
思わず"いんぺりしゃぶるえこお"さんをじっと見ててしまっていたようだ。
慌てて目だけではなく顔ごと逸らす。
「決まりました」
「ちょっとした独り言ですが、"管理者"は大事な方にしか名前を与えないと、我々をお作りになったときに、仰っておりました。
エレイシアさんも"管理者"からすれば大事な方です。同じ大事にされている者同士、仲良くしてくださいね」
「あ、はい。よろしくお願いし……ます」
「はい、よろしくお願いします」
「で、決まったの? アタシの名前」
「あ、……えっと」
「決まったようですよ」
「へぇ、じゃあなんて名前?」
それは。
「がるがんちゅあ……で」
お兄ちゃんが巨人といったらこれ、と言っていたものだ。
"はあとれすあるたあ"さんが、呪いで出来た大巨人というのであれば、語呂的にもこれしかない、と思う。
実際はどういうものかは分からない、でも。
「へぇ……、ガルガンティアか」
「ガルガンチュアですよ、『心なき改造台』」
「うるさいな、でもいいよ。
気に入った、お前も文句ないだろ『永久不滅の誓文』」
「ええ、ないですね」
「んじゃ、この限られた魔力で精一杯暴れてくるわ、あとでまた話そうぜ。エレイシア」
そう言って"はあとれすあるたあ"さん改め、"がるがんちゅあ"さんは輪郭を残しつつも消えていった。
「僕の方は多分まだまだ"イメージ"が沸かないと思いますので、今度でいいです。
それに名付けたら魔力奪ってしまって、ガルガンチュアの分がなくなりますからね」
どういうことだろうか?
「気にしなくてもいいですよ。現状、エレイシアさんに恨み事言っても詮無きことなので」
「恨み……ごと?」
「ええ、ちょっとした専用の魔力が必要なのですよ。我々は。
詳しいことについては大丈夫です……あとで『ガルガンチュア』から説明入るかと思うので」
正直、説明するのに不安しかないのですが……とかなんとか呟いていたけど、大丈夫なのかな?
「僕の使い勝手については……、おっと『心なき改造台』、いえ『ガルガンチュア』も中々ニクい演出しますね。
……エレイシアさんの心象風景を先出しですか」
「……え?」
「さ、目覚めてください。ここの空間は『精神の願望』を介した空間。
『精神の願望』は我々のような自我がある存在ではなく、我々と宿主との精神の繋がり合いを提供する場。
『精神の願望』をONして頂ければ、我々が出れます。もちろん、不要なときはOFFにしてください」
……おん? おふ?
「さて、今日の夜また会いましょう」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その言葉を聞いて私はあの空間から戻ってきた。
なぜなら目の前は海に包まれていたからだ。
あの博物館で見た、あの空間。
見たことのないお魚さんが、現れる空間。
きっとこれは、お兄ちゃんの知っている空間なんだと思う。
"ごんずい"、"うなぎ"と言っていたあの人たち。
お兄ちゃんを『管理者』と言っていて、そのお兄ちゃんがあの人たちを作った。
そしてあの人たちは『我々を作った"世界"』と言っていた。
よく分からないけど、きっとお兄ちゃんは世界を作れる人かもしれない。
世界を作れるから、こんな私が知っている海の空間でありながら、私が知らない動物たちを知っているんだ。
ああ、黒く長い影が泳いでいる。
なるほどあれが"うなぎ"の形状。
すごい……。
おかあさんから教えて貰ったおとぎ話の竜みたいに身体をくねらせて踊るように、周りを泳いでいる。
海を泳ぐ黒い竜は、段々とその形を明らかにしていく。
騎士が邪悪な竜を倒すための鎖と首輪が、この黒い竜にいくつも繋がっている。
竜の動きに合わせて、同じように踊る鎖。
竜から"嬉しい"と"楽しい"という感情が感じられた。
空間から水が引く。
水位が足の裏まで下がったとき、私の頭の中に竜のものと思われる知識が入り込んだ。
それは、"はあとれ"――いや、"がるがんちゅあ"の知識。
「うん、分かった」
"いめえじ"をする。
それは鉄の剣。
刺し貫き、刺さったところだけを"殺す"魔法。
確かにこんな魔法は、生活に使わない、使えない。
それでも、私にとってこの魔法は最高だ。
これで、お兄ちゃんに近づく人族を殺せる。
これで、お兄ちゃんは奪われないで済む。
ありがとう、"がるがんちゅあ"。
この力で殺す、完膚なきまでに。
「"来て、処刑者の剣"」
――ゴオッ。
という魔力の奔流が私を包む。
あの地獄の旅で味わった痛痒い足を擦るときのように、痛痒く感じさせる魔力が満ちる。
でも、心地よさを感じる。
気になったことがあった。
私の声が反響したのだ。
別に屋内ないはずなのに。
右手に青みがかった緑色の魔法陣が浮かぶ。
「ああ、そういえば」
――"いんぺりしゃぶるえこお"さんは、私の歌声を保存して、再生出来るとかなんとか言っていた。
つまり。
「私の声を保存して、何度も流した?」
その疑問の回答に、青みがかった緑色の魔法陣はぴかぴかと明滅する。
いかにも、"是"と言ったようだった。
その答え合わせの応えとして、処刑者の剣が何十本も現れる。
そのどれもが、剣先が長く全体の長さが私の両腕を伸ばしたぐらい。
剣というよりも槍。
でも、槍にしては返しがなく刺さって貫くだけしか出来なさそうなものだ。
これだったら確かに刺突剣にしか見えない。
だから納得して、穿つように指示をする。
「"穿ち殺せ、処刑者の剣"」
剣が相手の身体に向かって飛んでいった。
やっぱり槍だった。
抵抗なくブチブチと筋肉を断裂させる感覚が、手指に感じる。
貫き刺さるだけかと思ったが、魔力爆発を起こし、人族の身体が内部から弾け飛んだ。
それも大規模な爆発ではない。
あくまでギリギリ生かすことが出来うる魔力爆発。
上腕に刺し貫かれた人族は、一瞬だけ呆けた顔をして痛みにのたうち回って、その後に「処刑者の剣」が爆発して腕が千切れ飛んだ。
赤い液体が噴水のように飛び散る。
ちんどんやの悲鳴と怒号が心地よい。
もっといっぱい刺そう。
もっといっぱい刺せば、もっと気持ちよくなれるかもしれない。
"がるがんちゅあ"から知識が流れ込む。
「ええと、"汝、苦もなく痛みもなく、其は死を平等に与えるもの。刑を執行せよ。断罪の刃"」
知識通りに魔法の詠唱文を唱えると同時に、魔法の"いめえじ"も流れこむ。
――薄い刃で両断する"いめえじ"。
それと同時に発生するのは「シャコン」と空気が抜けるような音、と所々で聞こえる切断音と赤い噴水から勢い良く吹き出す水の音。
辺り一面に漂う新鮮な鉄錆の臭い。
"がるがんちゅあ"が動き出した。
じゃらじゃらという鎖の音。
ちんどんやたちが苦しそうに首を押さえながら空を舞う。
ゴキンという骨を折ったような、音が空を舞っている人たちから聞こえる。
一通り舞ったあと、周辺を泳ぐ"がるがんちゅあ"。
それと共に引き摺られるちんどんやたち。
ゴリゴリという鉄鎧と革鎧と地面を削る音。
最期はみな、へし折れた音がした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
魔法が使えるようになったし、お兄ちゃんは喜んでくれるかと思ったけども、喜び半分だった。
何がいけないのだろう。
何も出来ない私なんかを、慕ってくれた"がるがんちゅあ"がいけないのだろうか。
例えお兄ちゃんが"管理者"と言えども、得体の知れないものだ。
だから、紹介した。
それでも、口を"一文字"に閉じていた。
お兄ちゃん、何が不満なの……?
言ってくれないと、わからないよ。
一緒にお兄ちゃんの腕のなかにいた、セリスおねーちゃんが私にお礼を言ってくれた。
でも、あの魔法は使ってはいけないと言われてしまった。
誰もが認める殺戮をして、騎士に滅ぼされる『魔王』になってしまうということだった。
そんなの嫌だ。
お兄ちゃんと同じ『魔王』になりたいけど、お兄ちゃんと違う『魔王』は嫌だ。
自分が襲われたりしない限りは、この魔法は使わないようにしよう。
そう、心に決めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その後は特になかった。
エルリ姉たちからは特に言われたりすることもなく。
一緒に髪を切って貰った。
私はセリスおねーちゃんと同じ短めの髪だ。
髪を切ってみんなさっぱりしたところで、昨日と同じく料理を食べて家へ帰った。
セリスおねーちゃんが来たことで、私はお兄ちゃんと一緒に寝ることは出来なくなった。
それでも、おねーちゃんと一緒ならきっと大丈夫。
なんとなくだけど、おねーちゃんにはお兄ちゃんみたいな匂いがするから。
……おやすみなさい。
そして。
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