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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第2章-人生の分岐点- II
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三日目 -体験談-

 酔い覚ましにセンさんから、薬を貰った。

 なんであるのと聞けば、ニルさんが酒飲み(且つザル)らしくそれに付き合うセンさん用のものらしい。

 なお当のニルさんは照れ隠しなのか、ガッポガッポと酒瓶を空けていた。

 見ている内に三本も、いやドン引きですわ。


 折角お世話になった、三人が揃っているので明日になったら出る旨を伝える。

 センさん、ニルさん、リコリスと共に、反応は様々だったが、三人と共通して言ってきたことは、「楽しんできてね」と「無事に帰ってきて」の二点だった。

 三人とも学園卒業者らしく、辛く苦しいこともあったけども何よりも楽しかったという。

 実力テストと称して中の良い者同士で森の中に置き去り試験とか、使い魔獲得試験などそういった試験ものが少々辛かったらしいが、お互い初対面なので友達作りは簡単だし、本当に楽しかった空間で「出来ることなら卒業なんてしたくなかった」というのはニルさんの弁。


 無事に帰ってきてという部分に関しては、やはり虐めというのはあるようで、虐めを苦に自身の命を断つということもあるようだ。

 センさんの仲の良い友達もそれで喪ったという。

 この世界の就職も中々ハードらしく、卒業したからといって就職が楽になるなんてことはなく、滑り込みで学芸員になったというリコリスの涙混じりの声が世知辛さを感じる。

 それをよしよしと慰めるセンさんとニルさん。

 錦を飾ると故郷に約束して学園に入学するも、錦を飾れず逃げ帰るようにして故郷に帰る。

 ということが出来ずに、自殺する者も多いという。


 女は最終手段として、男と結婚すればどうにかなるが、男が悲惨である。

 基本的にヒモになるのも、難しいし男娼も中々なれない。

 男娼を選ぶぐらいなら死んでやると思うらしい。

 まぁ俺も男娼になるぐらいなら、山賊を選ぶ。

 で、冒険者とかそういう類になろうかと思えば、体力仕事が多いし、人道に反している仕事も請け負うことが多い。

 子供を誘拐とかもすることがあるという。


 金貰ってなんでもする、傭兵みたいな者か。

 昨日みたいな連中だ。

 そういうのになったとしても、一年後にはごく僅かにしか生き残らず、更に三年後にはほんの一握りしかいないという。

 それも仕事を選んでいるとそうなり易いという。

 つまりプライドを捨て、あくまで傭兵として依頼をクリアする機械にならないとやっていけないようだ。

 そう考えるとゼルは凄いところだが、アレはコネが凄いらしい。


 まぁそら分かる。

 うっかり子供を誘拐してバレれば、王子がやってたなんて国家間戦争になる。

 上級下級の枠組みについては、依頼達成率と純粋な戦闘能力などで検査されるようなので、きっとゼルは戦闘能力で上級になったのだろう。

 なにせ、ウチの『戦熾天使の祝福』の攻撃受けて五体満足で、いるんだからな。

 冗談抜きで凄いわ、アレ。


 あんなのが沸いて出てくるなら、今度は『蠱毒街都』を使用するか。

 それはともかく。

 そういう訳で冒険者も世知辛く。

 就職も出来ず。

 山賊になれば、殺され。

 以下略。

 で、考えた先は自殺。

 世知辛いというかなんというか。

 ひどい話だ。


 その点、俺は卒業後の就職はど安定の"宮廷魔術師"で心配なし。

 有事に参加すればあとは遊んで暮らしてよし。

 俺と結婚さえすれば、特になにもやらず子供だけ作ればあとは遊んでいられる。

 ああ、優良物件。

 ま、クオセリスがいるので、そんな未来はもう無いが。


「ウェリエくんがもうちょっと年行ってればなー」

「……それは、どういう」

「ああ、アタシもその一夫多妻に――」

「駄目」

 会話に参加していなかった、エレイシアから即座に駄目だしを貰うセンさん。

 エレイシアの反応から嫉妬だろうか。

 幼いながらの嫉妬だろう。

 仲の良いお兄さんを取られたくないという類の。


 俺も"生前"の幼いときは近所のお姉さんに近づく、野郎に対して嫉妬したもんだ。

 年食っていくうちにそんなことを思わなくなっていったが。

 まぁエレイシアの嫉妬は可愛い嫉妬。

 醜い嫉妬ではない、ということにしておこう。


 必死に守ろうとする姿が可愛いので、エレイシアの頭を撫でる。

 関係ないかもしれないが、人魚だけあって体内水分量が高いらしく、髪がしっとりしている。

 撫でて気持ちいい。

 エレイシアを撫でているとエルリネが寄ってきた。


 言葉には出していないが「私も」ということらしい。

 彼女の青みがかった銀髪を撫でる。

 この娘もなかなかよい、髪質だ。

 うむ、撫で甲斐がある。


 リコリスら三人と別れ、しばらく食べ歩きをすれば目の前にゼックルス爺さんとメリア婆さんがいた。

 爺さんの方はあれもこれもとはっちゃけているが、婆さんはしずしずと着いていき、爺さんの反応を見て楽しみ、その婆さんの反応で一喜一憂している爺さん。

 長年連れ添ったからこそ出来るおしどり夫婦だ。

 夫婦水入らず。

 邪魔者は退散しようか。


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