二日目 -走馬灯- I
※警告※
R-15描写
短いですが、ちょうどいいので。
「おい、なんなんだよ。
なんなんだよ、これはぁ!」
と、仲間が叫び。
「嫌だ、死にたくねぇ!」と腰から下を削り取られた、再生不能となった、いやなってしまった仲間たちが吼える。
簡単、そう簡単な依頼だったはずだ。
平和ボケをした、ザクリケルの宮廷魔術師を一人でも減らせという依頼だ。
一人でやるのではない。
数十人単位で一人を狙えという話しだ。
必然的に女子供を狙う話になる。
それが嫌な腰抜けどもは参加しなかった。
相手は例の宮廷魔術師。
国が信頼する最強火力。
それを俺たちが一人でも殺す。
女といえば『要塞のリコリス』、子供は『魔王のウェリエ』。
爺は『滅火のゼックルス」、婆は……爺より厄介なので対象外。
爺は全方位の兵器だ。
過去の戦争でも一人で敵国の精鋭を焼殺したという経歴がある。
よって爺の火力が使えない、祭りの日を狙うことにしたが、よく分からない理由で爺を狙うという案は却下となった。
残るは女と子供だが、女はその名の通り『要塞』だ。
俺たちが束になっても破れない。
破れない内に爺が参戦される危険性がある。
そこで目をつけたのは、子供だ。
いくら、『魔王』という名であっても、せいぜい魔法が全属性使えるといった程度だろう。
そして、宮廷魔術師の名に恥じない程度に、多くの嫁を引き連れているという。
俺たちの狙いは、子供に確定した。
まず、嫁たちを混乱させ、一人か二人は犠牲になって貰う。
頭に血が昇ったところで、囲んで殺す。
見事殺せば、残った嫁たちは俺たちの慰み者になる。
高額な賞金と泣き叫ぶ年若い女を愉しめる。
これは依頼。これは仕事だ。
仕事の内容は、いつもの弱者は蹂躙。
そして俺たちは強者だ。
明らかな負け戦には、参加しない。
人生一度きり、変に情を晒して死ぬ奴は冒険者ではない。
俺たちは強者だ。
強者は金で女を買い、男を買い、他国であれば泣き叫ぶ人間を犯し殺す。
それが許される唯一の職業。
だから、この依頼は目的が同じ仲間という他人を蹴落とし、盾にして死んだ奴の分まで、依頼主から金を貰い、ついでに愉しむ。
その予定だった。
だが、これはなんだ。
俺たちは強者の筈なのに。
俺たちは子供の『魔王』を狙った筈なのに。
仲間であった他人が、叫ぶ。
「死にたくねええええええあああああああああがががががが」
その叫びと共に、響くは頬骨が横に砕かれ、同時に頭蓋が縦に潰される。
中々にいいオンナだった他人が、首輪によって首を締められ、"首"が胴体と頭から別れの挨拶してしまった奴。
鉄の槍が口から入って串刺しにし、そのまま即死した奴に、同じく串刺しだが見るも無惨な剣山で出来た肉片の芸術。
「俺のもの、俺のもの」と言いながら頭からはみ出たものを必死に頭に戻そうとしている奴。
様々な死因。
なんだこれは。
聞いていない。
なぜ、『魔王』が二人いるんだ……。
「dsfgiplxcw」
子供の女がナニカを言った。
言っていることは分からない。
ただ、意味は通じる。
言ったことは「断罪の刃」。
その意味が聞こえたとき、俺は直ぐに伏せた。
嫌な予感がしたからだ。
事実、その予感は当たった。
仲間がみな、薄くも確実に命を奪う刃落ちたようにが「シャコン」という音と共に首または頭が寸断され、地に落ちた。
見たことがない綺麗な断面だ。
瑞々しい赤色。
一瞬遅れて弾ける赤の噴水。
目的は下衆なれど、共に笑い歌った連中が、奇怪な肉片の芸術になっていく。
子供の女の周辺に鉄の槍数十本が現れる。
「fegicvlkp」
槍が飛び、刺さるのは俺の傍にいた他人。
そいつは鉄の槍に数本に貫かれた。
衝撃で目がコロンと落ちたようで、俺の前に転がった。
「お前が死ねば、俺は生きていられたのに」そう言っているように思える目で睨まれる。
その逃げた目玉も逃さないとばかりに、鉄の槍に貫かれぷちんと弾ける。
目の中に入っていた水が、俺の顔に掛かる。
「あ、あ、あ」
喉がひりつく。
声が出ない。
本当は出したいのに。
叫べばなんと楽になることか。
俺が狙っていた高貴な生まれなれど、堕ちてこの世界に踏み込んだ女も災難なことに、拘束衣に固定され丸い刃によって寸切りにされていく。
断末魔が酷い。
ここは今地獄だ。
そんな中、女にこの周辺の魔力が作られていく。
身体が痛い。
身体の毛穴が広がっていき、体毛が全て抜け落ちそうだ。
何が起きるのか分からない。
思わず、へたり込む。
俺たちが強者から、弱者になったときのことを思い出してしまう。
「ああ、これが走馬灯……って」