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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第1章-学校-
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魔族④(メティア視点)

説明回が2連続です。


 家に帰ると、珍しくお父さんがいた。

 久しぶりにお父さんとお母さんを交えて夕食を食べた。

 そして夕食後の休憩のときに、お父さんが話しかけてきた。

「メティア。学校はどうなんだ。虐められたりしてないか」と心配された。


 ……やはりお父さんは気になるのか。魔法使えないのに学校行けてるから。

「……虐められたりしてないよ」

「そうか」

 ここで話は止まってしまう。

 お父さんは口下手だ。もっと私のことを聞きたいのだと思う。

 お父さんを見れば、口をモゴモゴさせている。つまり、聞きたいのだけど聞けない。

 なんていう、感じが見て取れる。


 それを見ていられないとばかりにお母さんが、笑いながら口を挟んできた。

「お母さんは今日もミルくんの話を貴女から聞きたいな」

 お母さんがミルを強調して言うと、お父さんがその言葉に反応した。


「ミル? 誰だそいつは」

「うふふ、それはね……メティのお気に入りの子よねー」

 と聞いて私はビシっと石化した。

 お父さんも固まっていた。


「お気に入りなんて、そんなことは……」

「あら、お気に入りじゃないの? 夕食後の休憩の度に学校の話を聞くけど、いつもミルくんの話から始まるわよ?」

「え、いや、その……」


「思考が早熟しやすい、魔族でもこれは早いわねー。

いいこと、ミルくんは人族なのだから、彼の成長に合わせなさいよ」

 ……何を言っているのか分からないけど、なんだか顔が熱い。

 そんなときに思わず、ミルの顔を思い浮かべたとき更に熱くなった気がする。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ミル? 誰だそいつは」

 俺は、妻に聞き妻の言葉を待つ。

 すると、「うふふ、それはね……メティのお気に入りの子よねー」

 と、聞き俺は石化するようにして固まった。

 三歳の娘が人に恋をしたのだ。


 三歳と侮ることなかれ。

 魔族は種族的な特徴として、魔法を幼少時から扱えることが多い。

 そのため、魔法を使う倫理などが欠けないように、思考の仕方が直ぐに大人と同じようになる。

 だから、娘の思考の仕方は魔族らしく、立派に成長している。

 俺も、幼少時には似たような思考をしていた。


 ただ、(よわい)三歳にて恋などは考えたことはなかった。

 友人の子どもが五歳、六歳ぐらいになってから「あの子が好き」「この子が好き」といった話を聞くようになって親としては凄く嬉しい半面、中々クると言っていた。

 その時は笑って「諦めろや、お・父・さ・ん」と、友人らで哄笑(こうしょう)した。

 が、その友人の(てつ)を踏むことになろうとは。


 娘が産まれて、五年後、六年後にあの友人に哄笑されるのか……などと思っていた。

 娘が三歳になって、「あと三年後だろう」と思っていたが、まさか四歳を迎える前に「お気に入りの子」が出来るとは、これは中々クるな。


 と、固まっているところで妻が話しを進めている。

「ミルくんは人族なのだから、彼の成長に合わせなさいよ」

 そう、これは非常に大事なことだ。


 魔族は思考が早熟するが、人族は段階的に思考するようになる。

 つまり三歳の時点では、子ども相応な思考をしている筈なのだ。

 だからメティが彼に愛を持って接しても、彼はそう思わず、女友だちの一人と見るだろう。

 つまり、直ぐに想いをぶつけるのは危険だということだ。


 そして俺が漸く、思考出来るように復旧した。

「そうだぞ、メティ。四歳の子がだれこれを好きになりました。と想いをぶつけてもな、

相手はそれに応えられない。少なくとも、その子が七歳ぐらいになるまでは、想っているだけにしなさい」

 それに対して娘は、口をへの字に曲げて


「お父さんまでそう言うの。全然違うのに……」

「どう違うの?」と妻が乗っかかる。

「全然違うよ、お気に入りとかじゃない。ただ、話しかけられないけど、一緒にいると嬉しくなって、立ち上る魔力の色がいつも鮮やかで綺麗だから見ていると心臓がドキドキしてて……えっと、そのそんな感じだから

お気に入りとか、そんなのじゃないよ」

「……じゃあ、そういうことにしてあげる」

「うぅ……お母さんが信じていない」


 ……お気に入りとかではなく、これは好意ではないか。

 と俺は、感じた。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 それよりも娘が言ったことについて気になることがあった。

 それについて娘に聞く。

「メティ。メティが今言った、立ち上る魔力の色というのはなんだ?」

「あぁそれ、私も気になってた。度々言ってたけどどういうことなの?」と妻が合いの手を入れる。


 娘が驚いたような顔を見せる。

「お父さんもお母さんも見たことがないの?」見ているものだと思ってた、と話を続け、説明してくれた。

 内容は、その人の身体から色のついた煙のようなモノが身体を覆い尽くしており、基本的に属性が色として反映され、ある程度感情の色も見えるのだという。


 それを聞いて娘の魔法が使えないことに関して合点がいった。


――つまり、娘に『魔眼』が備わっている。



 魔力のほぼ全てが魔眼の維持に使われており、魔法が使えない。

 この目は素晴らしい。

 感情の色まである程度見えるということは、自分に仇なす者が分かる。

 そうじゃなくても相手の魔力が分かれば、なんでも出来る。

 対策も取れる。

 妻も娘の発言で気づいたようだ。


 妻が言った。

「いいこと、その事は私達以外に絶対に言わないようにしなさい。魔力の色についても駄目よ」

「……なんで?」と娘は首を傾げる。

 その答えに俺が応える。


「……メティをほぼ確実に不幸にしてしまう。だから、そのことは親しくなった者に対しても、絶対に言わないようにしなさい」

「…………」

「メティ、返事は」

「…………はい」


 娘は不服そうに返事をした。

 当然だ、自分が人とは違う特徴を拒否されたのだ。

 反感を買うのは当然だ。

 恨まれても仕方がない。

 だが、娘が、メティアがこの目が原因で不幸になることだけは許せない。


「その見えることに関しては、そうだな。

メティが成人したときに教えるから、それまでは絶対に黙っていなさい」

「…………わかった」



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