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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第2章-歴史の分岐点- 殺戮の魔王(Lord of NecroExecutioner)
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二日目 -日常-



 昨日は帰宅するのが遅かったため、クオセリスの寝室を用意するのが出来なかったのがひとつの理由。

 その理由から、今更用意しても一週間も経たない内にこの家から出るので、用意しても意味が無いと考えて、一緒に寝よっかなどと言った結果。


 翌日起きたら、クオセリスに半裸で抱き付かれていました。

 お互いの特定部位が粘液でドロドロしてたりとか、やたらと疲れてたりはしないので、婚約した男女が夜半にヤることはしていないようだが、心臓に悪い。

 

 更に言えばその抱きつき方が、『俺の腰に足を絡めて腰を押し付けてる」というあっさりに言えば、破廉恥な抱きつき方。

 しかも、俺が寝返りか何かでクオセリスと向き合ったところで、抱き付かれたようでお互い向き合っている形である。

 つまりいわゆる、だいしゅきホールドである。

 お互い十二歳以上で出来る行為で、十五歳以上だとまずやるだろうという行為の体位をこの場でやっている。

 狙っていたのか、素なのかは判断付かないが、どちらにせよ恐ろしい子だ。


 エルリネも足を絡めて、あの胸に押し付けるようにしたりしてくるが、ここまでガッチリホールドはしてこない。

 エルリネ以上の肉食かもしれない。

 夜は気をつけよう。


 ちなみにセシルは、割りと常識的なようでパジャマの裾を掴む程度はするけども、それ以上にホールドはしてこない。

 対して、エレイシアは泣きながら「おかあさんおかあさん」と寝言で言われれば、そんな気持ちなど吹っ飛ぶ。

 まだまだ甘えたがりの時期なのにいなくなってしまったのだろう。

 腰に頭を押し付けてすんすんと匂いを嗅ぎながら、しくしくと「おかあさん」と呼ぶ。

 そういうときは逆に俺から胸元に抱き寄せて、下手くそながらも母が歌ってくれたあの子守唄を謡う。

 そうすると決まって、彼女(エレイシア)の母呼ぶ声が穏やかな寝息となる。


 その姿を愛しく感じるのは、きっと彼女を娘だと思ってしまっているからだろうか。

 ……彼女の「おかあさん」にはなれないけれども、一人で立てるようになるまで支えよう、そう思う。


 さて、エルリネの森人特有臭の例の薄荷の匂いだが、この家に彼女の匂いがないところは無いってぐらいに漂う。

 匂いに慣れすぎて我が家の匂いは薄荷臭になった。

 ということが、異常だということに気付かされたのはクオセリスが我が家に来てからの一言目だった。


「なんですか、この喉元がスーっとする匂いは」

 聞かれた当初はなんのこと? とみなで首を傾げたが、詳しく特徴を聞けばエルリネの匂いということを指しているのだと判明した。

 エルリネのことだと分かったら、すぐにクオセリスあエルリネに謝る。

 森人特有の「親愛の証明」という匂いは、森人種を種族として愛している人からすれば羨ましがられる事象だ。

 そうではなくても、親愛の証として匂いを出しているのだ。

 それについて文句など言えるはずがない。


 腰の近くで頭ぐりぐりをすると、その人の匂いが嗅げる。

 それによって精神安定を図るというのは、以前に考えたものだ。

 では、森人種ではない筈の俺に何故やってくるのか。


 それについて割りと悩んだ。

 悩んだ結果、ちょっとだけエレイシアにもやってみたところ。

 ……匂いがあった。

 それも結構いい匂い。

 具体例を出すとミントブルー臭。


 この娘もスースーするタイプの匂いだった。

 思わずぐりぐりぐりぐりとやり過ぎて、起こしてしまった。

 そのときは「あまえんぼさんですね、お兄ちゃん」とか言われて頭を撫でられてしまった。

 ちょっとだけ、あかんと思ったのは内緒。

 

 さて、そんなわけなのでクオセリスの匂いについて確認してみようとか、(よこしま)な気持ちになったところで、彼女から自然と漂った匂いがあった。

 バニラミルクというべきか、いやソフトクリームと言うべきか。

 とにかく、甘い匂いだ。

 しかも、腰からの匂いであり、それが全体的な体臭としてなっている。

 石鹸などで後天的につけられた匂いかと思うが、森人種の血が混じっていれば、この匂いも納得出来るであろう。


 匂いから旦那を攻めるとは。

 我が大家族の嫁達はデキる者達だ。


 ちなみにセシルの匂いは嗅いだことがない花の匂いが一割、残るは花石鹸の匂いだ。

 みなには無い匂いで、当然この娘も最高である。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 さて、クオセリスにガッチリホールドされているため、崩すのも出来ず布団のなかで待つこと体感三十分。

 目の前にはトカゲくんが欠伸をしながら「ごはんまだ?」という顔でこっちを見る。

 きっと呆れているに違いない。

 主人の危機だぞ、助けてくれ。

 などと言えるはずもなく。


 また更に二十分ぐらい待ったところで、彼女のホールドが解かれ寝返りをうってくれた。

 パジャマという鎧があったとはいえ、ガッチリホールドされていただけあって、俺の寝汗と彼女の体温による汗と彼女自身の汗が移り、ベットベトだ。

 クオセリスのほうはぐっすり寝ているようなので、今のうちに下着から着替える。

 一度全裸になり、ベトベトした身体を生活魔法(笑)の水球でタオルを濡らして拭く。

 下半身、胸元を拭いたら下着を着て、二日目のお祭り用の服装に着替える。


 着替え終わったら、水球を庭に放り投げ新しい水球を作りトカゲくん食べさせる。

 相変わらず、スゴイ勢いで食べる。


 そんなトカゲくんだが最近好みが変わったのか、水も食べるようになった。

 というのも、以前までは炎の槍をスゴイ勢いで食べていたが、最近はそこまで食べずに氷柱(アイスピラー)を所望するようになった。

 どちらにせよ、美味しそうに食べてくれるのであれば、作った甲斐があり嬉しい限り。

 早くコモドドラゴンのような二、三メートルぐらいの体長にならないだろうか。

 魔法学園もので必ずあるイベントで『使い魔獲得』イベントがあるものだが、是非このトカゲくんを推したい。

 

 魔法を食べるということは、他人の魔法を食べるトカゲなんだろう。

 きっとスゴイ注目される。


 現状の注目ワードは、『ツペェアの宮廷魔術師』、『魔王』、『国墜とし』、『奴隷二名』、『王族の妻持ち』、『貴族・王族にコネ有り』、『魔力喰らいの使い魔』、『禁忌の魔草』。

 八個も注目ワードがある。

 どこの物語の主人公かな?


 ただで終わると思えないので、きっと学園を卒業したときには二、三個増えてそうだ、注目ワード。


 さて、いつもの日課でトカゲくんに食事をさせ、ニルティナには高濃度の魔力素を四、五滴垂らして苦しませる。

 きっとニルティナが人化したら、グレてそうだ。

 日課を終わらせ、しばらくしたところでクオセリスの服が無いことに気付き、起きていたセシルたちに相談すれば今日のお祭り観光はショッピングにしてくれるようだった。

 ショッピングで買うまでの服はセシルの服を着てもらうようだ。

 背丈が似ているから、きっと合うだろう。


 事情を話してから、廊下で待っているとセシルが可愛らしい服を見繕ったのか、服を二、三点持って俺の寝室に入って消えた。

 きっと今頃クオセリスを起こして、お着替えをしているのだろう。

 ラッキースケベばりに突撃したいところだが、両名とも泣きそうなのでやらない。

 ま、やるなら寸胴体型からもう少し大人っぽい凹凸体型になってからだな、うん。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 今日の朝食担当はセシルだったが、クオセリスに覚えて貰いたい我が家の味を、いきなり高水準なものを食べさせる訳にもいかない。

 というわけで、特別に俺が用意することになった。

 とはいえ、どうせお祭りで食べ歩きをするわけだから、と。

 軽い食事にする。


 やはり、この世界では珍しい目玉焼きだ。

 卵を溶いて作る玉子焼き、スクランブルエッグなどはあるが、目玉焼きが無い不思議。

 それとツペェア焼きと呼ばれる、例のホットケーキを早起きしているエルリネ、エレイシアに提供。

 ツペェア焼きのときのエルリネはとても大食いだ。

 いつもは小食なのに、だ。


 エルリネはいつもの嬉しいときのわんこの尻尾のように、耳をピコピコ上下に揺らしながら「幸せ~」って顔で食べる。

 エレイシアも似たようなもので、「幸せ~」って顔で逆に小食になる。

 初めてツペェアに来たときに入った喫茶店や『ツペェア焼き』をメインにしている屋台などを、足繁(しげ)(かよ)って研究した結果、市販で売れるようにはなったといったのはセシル談。

 とにかく売り物になっても、おかしくないものにクリームを掛ける。

 

 我が家のクリームは市販のヤギだか牛だかのミルクに、わざわざ外に出て森で採ってきた蜂っぽい生き物の蜜を混ぜたモノ。

 "生前"とは違い、保存料とかそういったものがないこの世界で、クリームを作る。

 どこの異世界料理小説だろうか。


 とにかく、そんなクリーミィなものを彼女らに出す。

 その結果がこの幸せそうな顔である。

 いやぁいいですね、笑顔は。


 使い切れないクリーム瓶は二瓶あるが、それらはセシルの祖父母とリコリスさんにあげようと思う。

 喜んでくれるだろうか。


 外行き用の服装に着替え終わったセシルとクオセリスが食堂にやってきて、共に仲良くツペェア焼きを食べる。

 これでもかとセシルのツペェア焼きに盛られるクリーム。

 それを見て、怪訝な顔をするクオセリス。

「騙されたと思って盛ってみなよ」と、エルリネに瓶ごと渡され更に困惑するクオセリス。

 盛り付け用のスプーンでエレイシアが掬って、クオセリスのホットケーキに盛り、女性三人が「どうぞどうぞ」と勧める姿。

 

 意を決してパクンと、クオセリスが口に入れれば、女性三人がワクワクとした顔つきでクオセリスを見て。

「……お、美味しい」とクオセリスが感想を漏らせば、「やったね!」とばかりに喜びあう三人娘。


 うん、『仲良き事は美しき哉』。

 仲良くなってくれて嬉しいことだ。


 結局、軽食のつもりだったがエレイシア以外の者が、大量に食べてしまったものでお昼まで食べ歩きをする必要がなくなってしまった。

 俺とエレイシアだけで食べ歩きでも敢行するかね。



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