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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第2章-歴史の分岐点- 姫
142/503

一日目朝 VI

※警告※

R-15表現有。

この世界の一夫多妻に対する回答になります。


説明回です。


「そうですか、あの場に」

「うむ、さて宮廷魔術師として飼い殺しするために、幾つか聞きたいことがある」

「いいですよ、ただお互い言葉には注意しましょうね」

「善処しよう、さて早速だが。

……結婚相手を増やそうか」


 予測していたことだ。

 だから、応える。

「結構です、五人でも多すぎるのですから」

「『魔王』は、故郷に二人いるのだったな」

「ええ」

「大抵の者であれば、喜ぶところだと思うが」

「僕は小市民ですので、不相応なことはしたくないので」

「それについては、ゼックルスから聞いている。

……ところで『魔王』は人族かね」


「少なくとも父母は人族ですが」

 最早慣れたな、この問答。


「子どもの魔族を相手に話をしているように、感じるのでな。

そうか純粋な人族か」

「祖父母まではわかりませんよ」

「よい、よい。

さて話を戻すが、強い魔力を宿す者など実力者が何故この国では一夫多妻を築くか、理由は分かるかな」


 考えたことなかったな。

 実力主義だというのは分かっていた気にはなっていたが、その裏は知らない。

 何故だろうか。

「…………、」

「分からないといった顔だな。

答えは簡単だ。親から子へ力は遺伝するからだ」


 へ、へぇ。

「だからこそ、強い力を持つ者は国を守る立場にある貴族に多い。

強い者の血を幾つも取り入れてきたからだ。

……中には強引に迫った者もいるようだがな。

これはこの国で考えられている常識だ。

王族はみな識っているし、学校で男はみな学ばされる。

だから、ここの騎士達はみな識っている」


 ほほう、で?

「だから、『魔王』にも教えよう。

親から子へ遺伝するに当たり、行う行為はなにかね」

「…………、えーっと」

「照れなくてよい、子作りだ」

 あー言っちゃった。

 オウネさんの横の女の子も赤面している。


 横の女の子の反応を知ってか知らずか、オウネさんは話を続ける。

「では、子作りに当たり男が女にすることは」

「…………、ええーっと」

「分かっているか、やはり『魔王』は魔族かね」

「いや、えっと……うん」

 こういった保健体育的なことは出来れば、女性がいないところでやりたいな!


「とにかく、そういったモノを男から出し、女の身体に入れる。

そのモノは魔族であれば、魔力を。

獣人族であれば、純粋な力を。

人族であれば、それぞれの調度良い配分で混ざり合っている」


 ええーっと、なにこの話。

「女はそれを混ざり合わせるための壷だ。

壷が良いものでなければ、混ざり合わせることが出来ない。

底が深く広い鍋でなく、食事用の皿では汁物など出来ぬだろう?

それと同じことだ。

そしてその壷には用途が決まっている。

例えば、汁物用、掃除の水桶用といったものだ。

それは女にも当て嵌めることができる。

ある女は獣人の子を孕むに向いているが、人族を孕みにくいといったものだ」


 ……超えげつねぇ。

 じゃあなんだ。

 こういった縛りがあるから、ひたすら嫁に取らせようとするのか。

 その強い魔力持ちの一族を絶やさないために、混ぜ合わせる壷を総当りで作らせ、それを宛てがう。

 お国のためならば、寝取りも寝取られもない。

 国の存続のために必要なことという大義。


 例えばセシルは獣魔族という血筋を持っている。

 壷的に考えれば、獣人または魔族向けの可能性が高い。

 だから、俺と契ったとしても孕まない可能性がある。

 流石に五人もいれば誰かが産むかもしれないが、五人中一人、またはゼロということもありうる訳だ。

 だから、ひたすら宛てがう。


「もちろん、汁物にも種類がある。

その汁物に合わせた壷、鍋が必要だ。

だから、その分も考慮した上で宛てがう。

その壷や鍋に法則性はなく、完全に手探りでな。

愛し合っている男女でも、その壷が合わず子を為すことが出来ない家族もある。

姉弟、兄妹と血の繋がった存在でも作れるときも作れない例もある。

中には誰とも孕まれず、他国の戦奴隷を宛てがったら、その者が孕んだ例まである」


 ……うっわぁ。キッツ。

 愛がない、この世界。

「ということで、一人の男に女が群がることを良しとする情勢は分かったかね」

「ええ、まあ。群がるというより群がらせるというのが正確なところですよね」

「そうなるな。

そして、男の方だが実力者というものは、大抵が力が強い者。

または魔力が高い者だ」

「…………、」

「人族は魔族よりも力が強く、人族は獣人族より魔力が強い。

よって、人族のは丁度良い均衡を保っている。

単純に子を為すだけであれば、誰でもよい。

が、亡国の姫などだと均衡が取れている人族の子を持ちたがるのはそれが理由だ」


 いや、知らねぇよ。そんなこと。

「ザクリケルの歴史上において、魔族や獣人族の宮廷魔術師は数多くいる。

それこそ、兵器という概念が無いときから、だ。

だが、人族の宮廷魔術師が現れたら、どうなるか」

「……、孕みたがる人多数でしょうね。

魔力的にも力的にも均衡が取れているのですから」

「そう、例え自身に能力がないかもしれなくとも、その可能性があるというだけで手を伸ばす。

そして子を孕みさえすれば、自身の未来も安泰だ」


 ええと、じゃあつまり……?

『魔王』として実力というか魔力が化け物の俺は超優良物件で、望めばそれこそ本当の意味で選り取りみどり。

 寝ている間に搾り取られることもありうるってことか?

 嫌だよ、そんなの。


「というわけだ。

多人数を宛てがわれたいかな、『魔王』」

「いや、小市民なので謹んでお断り申します」

 いやいや、無理ですからとキッパリ断る。


「……そうか」

 と非常に残念そうで且つ、よよよと目に涙を浮かべながら、オウネさんの隣に立つ女の子を前出して一言。


「では、我が娘を差し出そう」




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