表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第1章-学校-
14/503

魔族③(メティア視点)


 自己紹介をした仲とはいえ、お互い話しかけたりしなかった。

 私自身授業中は無駄口を叩けるような、余裕のある授業ではなかったし、

 彼、ミルも授業中は凄い汗を流しながら、魔法を使ってて話しかけられる雰囲気ではない。

 きっと火属性が強いとはいえ、使うための魔力がないのだろう。


 そういう意味では私と同じ種類の人なんだろう。

 ただ、違うのは努力した結果、出せるようになったミルと、努力しても全く出ない私。

 似ているようで天と地のほどの差がある。


 お母さんは仲良くしておきなさいと言っていた。それでも私はミルに取って見合わない、友だち甲斐のない奴だと思う。

 なにせ、社会的地位に必要な魔法を、それも生活魔法が使えないのだ。

 そんな奴を友だちにしたって、ハブられるに決まっている。


 私のせいで孤立させてしまうのも嫌だ。だから話しかけない。

 ミルの傍に立てるように、あのお姉さんほどにはなりたくはないけど、一日だけお姉さんだもの。少しでもお姉さんらしいところを見せたい。

 だから休み時間も使って生活魔法の発現に取り組む。


 唸っても当然出るはずはない。それでも唸って水を出そうとする。

 ミルは無属性だと言っていたけども、実際は火と水の魔力の色が出ていた。

 つまり、私も水だけではなく他の色、他の属性も試せばきっと出来ると考えた。

 だから、早速火の生活魔法を使ってみた。



 気づけば保養室だった。

 聞けば慣れていない反属性の魔法を使うと、急激に魔力が尽きて倒れるとのことであった。

 この現象が起きるのであれば、私は魔力があることが確定した。

 ただそれでも、水が出なかった。


 私が保養室から出たときにちょうど、お昼の鐘が鳴った。

 れっきとした理由があるとはいえ、授業を休んでしまったのにご飯を食べる。

 なんだかイケナイことをしたようで、心が苦しくなった。

 だから、お弁当を教室で食べずに外の森の近くで食べることにした。


 家政婦さんが作ってくれた、目玉焼きは好物なのでいつも一番最後に食べる。

 今日のご飯は黒パンのようだ。

 硬くて歯ごたえがあって、昔住んでいた街の白パンより美味しくないけど、目玉焼きに合うから大好きだ。

 この食感が癖になる。

 一頻(ひとしき)り、食事を堪能したところで、お昼の授業開始の予鈴が鳴る。

 急いで教室に戻らないと、午後の授業も欠席になってしまう、だから学校に向かって走った。


 そのときに何故かお母さんの魔力のような、ピリピリとした痛痒感を感じた。

 ……え、お母さん?

 と思わず振り向いたとき、目の前が朱に染まり、一瞬遅れて轟音が聞こえた。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 音と衝撃で私は吹き飛ばされた。

 雷の轟音のような音だった。

 頭がグラグラと揺れて、耳がキーンといっている。

 森の入口は破壊されていて、爆心地と思われるところは大きく円形に凹んでいた。


 その周辺はえぐれた地面の分が山盛りになっていた。

 森の木々は倒れているとかそういった生易しい表現ではなく、千切れていた。

 好奇心が勝ってしまい予鈴が鳴ったことを忘れて、ついその惨状を見てしまった。


 ピリピリとした痛痒感を感じた。だから、この現象は間違いなく魔法による一撃。

 でも、桁違いだった。

 お父さんの本気の魔法を一度だけ見たことがあった。

 それと比べると、雲泥の差があるほどにこちらの魔法は威力があった。

 魔法のあの痛痒感も一瞬だけだった。


 つまり、即時発動した訳だ。

 桁違いだった。

 そして、この魔法の属性が分からないのも理由だった。

 こんなに綺麗に円形の凹みを作るということは、地属性魔法かと思えば、あの轟音と朱色の光の説明が付かない。では火属性かと言えば、火属性にしては精密な円形だ。

 だから、分からない。


 結局、分からない尽くしであったところで、予鈴の存在を思い出した。

 急いで帰ったところ既に授業をしていて、物凄く入りにくかった。

 でも、逃げることはできない。

 だから教室に入り、遅刻したことを詫びると、お爺さん先生は私を抱きしめた。

「無事で良かった」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「……無事?」

 私が固まっているとお爺さん先生は話を続ける。

「先ほどメティアくんが、お昼休みに森の近くに行ったのを知っておる。

そしてその森の近くで、謎の爆発音が聞こえたのも知っておる」

 だから、

「メティアくんが、巻き込まれたのではないか」と、心配していたとお爺さん先生は言っていた。


「心配を掛けてごめんなさい」と先生と一緒に授業を受けていた学校の人たちに謝る。

 学校の人たちを見ると、一様に心配してそうな顔をしていた。

 ……私みたいな属性だけの無能でも、心配してくれるのか。

 などと考えていると、ミルが心配とはまた違った青い顔をしていた。

 ……あの顔は恐怖を感じているときの顔色に見えるし。ミルもあの朱の光を間近でみたのかな。



 私とミルの二人で秘密裏に謎の魔法を見たと思うと、私は何故か嬉しくなった。

 たしかにひとつ間違えると、死んでいたかもしれないけど。


 その日の午後の授業は実践魔法ではなく、座学になった。

 座学は村の出来事と、この国の歴史とえらーい人の言ったことを覚えるというもの。

 私にとって歴史とえらい人の言っていることは、今ひとつ理解出来なかった。

 けれども、この不便な村、ミルがいるこの村が、とても好きになった。

 その日の授業はずっとミルの気配を感じながら座学に集中した。



ルビの使い方を変えます。ルビのほうがこの世界の言い方になります。

変わってないのでちょっとテストでもう一度編集します。(10/2 10:45現在)

まだ変わらないのでもう一度編集します。(10:47)

ルビの方を日本語にします。重ね重ね申し訳ございません。(10:48)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ