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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第2章-歴史の分岐点- 姫
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一日目朝 III

 外行き用の服装に着替えて、改めてセシルを見れば……。

 パツキンの美天使がいた。

 いや、本当に天使ですわ。

 女の子が女性になっていく姿は、こうまで垢が抜けるというべきか。

 洗練されていくというべきか。


 世辞なんてなく本当に美人です。

 そして、その隣には"日本人"然とした黒髪の天使、いや大和撫子のエレイシア。

 そして女神のエルリネ。

 この家には美人しかいない。


 この後更に、メティアと姉さんが控えている訳だ。

 俺は幸せ者だね。


 女神と天使と大和撫子を引き連れて、ネコ顔のおっさんの元に出向く。

 時間にして数分だっただろうが、嫌な顔一つせずに「早かったですね」と一言言って、馬車の扉を開けた。

 罠なんて仕込まれているはずなどは当然なく、それでも念のために俺から先に乗る。

 その次に、セシル、エレイシア、エルリネの順だ。

 理由は戦闘慣れしているのを、一番最後にすれば馬車から出るときに対処しやすくなるだろうという予測。

 当然、そんなことが起きなければただの杞憂で終わるが、警戒はしていて損ではない。


 "生前"の世界では、魔法なんてものはなかった。

 だが、この世界は魔法なんてものがある。

 遠距離魔法でスナイプされる危険性もある。

 ただ流石に『弾道ミサイル』のような惑星の裏側から、大陸を飛び越える超々遠距離魔法とか、超々高高度から槍のような弾を墜とす『神の杖』のようなものなんてものを警戒するのは色々間違っているだろうが、でもありえる『かも』しれないのが、この世界の怖いところでもあるんだが。


 とにかくエルリネを最後にして仲良く乗り込む。

 スラっとしたスリムな細身のエルリネに、子供体型の俺とセシル、エレイシアとはいえ横に四人並べば狭いかと思えば、そうでもなく中々に広い。

 四人仲良く座ったところで、ネコ顔のおっさんと別の人族の男の子が向かいに座った。

 男の子は俺と同い年ぐらいだろうか。

 男の子と判断した材料は、髪が短く服装も半袖に短パンだからだ。

 

 ちなみにこの世界、男は男らしい格好。女は女らしい格好を美徳としているようである。

 よって蓋を開けてみれば実は男の娘とか、男女はいないようだ。

 それはそれで残念である。


 とにかく、目の前の男の子は見た目通りの男だろう。

 あわよくば貴重な男友達になって欲しい。

 だが、初対面の相手に仲良くしてくれなんて言えるほど、コミュニティ能力が高くはない。

 なのでちらっと見ただけで、自分の横の天使たちを見やる。


 天使(セシル)女神(エルリネ)の方は馬車に慣れているのか非常に落ち着いている様子だが、撫子(エレイシア)の方も落ち着いていた。

 いつもなら、キョロキョロと辺りを見回して、落ち着きがなく「あれはなに?」、「これはなに?」と聞いてくるのにだ。

 その様子は、正に借りてきた猫のようで、いつもとの違いのギャップに、思わずにほっこり。


 そんなほっこりしている中で、馬車が動き出した。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ネコ顔のおっさん曰く、向かう場所は式典会場らしい。

 祭りの開会式だかなんだかを"さるお方"がやって、その後にご拝顔するようだ。

 こちらとしては、正直に言えば会いたくはない。

 理由としては、セシルが言っていた「誑し」という部分だ。

 なにせ、どう贔屓目に見ても天使と女神と大和撫子の三人がおり、なにかちょっかいを掛けられる可能性がある。

 高圧的に何か言われてプッチンしたら、何するか分からない。

 だから会いたくない。

 いや、謁見したくないというべきか。


 だからといって、お誘いを無下にするのは色々と宜しくない。

 国名を家名にする有力貴族――予想だと王族か何かだろうが――誘いを蹴ったなんて言ったら、味方よりも敵が多くなるだろう。

 非常に面倒なイベントだ。


 火力特化のチート持ちの俺としては、ズバァとドガガガガガドゴォオオオンで解決が一番ラクだ。

 つまりは真正面からの対戦争特化。

 今なら魔力汚染も付けちゃう。

 それぐらい火力特化なのに、こういった「誑し」といった搦め手には滅法弱い。


 どうにかしたいとは思うものの、そんな対策が出来るほどに俺は人生を生きていない。

 信じていない訳ではないが、奴隷組のエルリネとエレイシアの心が読めないので、どこまで信じてくれているのか分からない。

 その二人よりセシルも、だ。

 現状、自称『ミリエトラルの妻』だが、不倫、NTRだって可能性がある。


 彼女たちのために良かれと思ってやったことが、実はマイナスでした、とか"生前"の世界の離婚相談室スレでよく見たネタだ。

 子供のために、妻のために頑張ったら、実は家族サービスを疎かにしてて、不倫されてました。

 とか、口では歯の浮くような台詞吐いてたけど、心の中では嘲笑ってたとか。

 "生前"の世界と比べて、この世界は倫理がしっかりしているから、無いとは思うが、この(ツペェア)には一夫多妻(ハーレム)という制度がある。


 ギャルゲーでよくあるシチュエーションで、カップルの女性の方を奪う愛が描かれることもある。

 プレイヤーからすれば『寝取り』、相手からすれば『寝取られ』だ。

 ギャルゲー、エロゲー感覚で一夫多妻を形成する輩も、今後出てくる可能性。

 いや、ほぼ確実に出てくるだろう。

 俺の家族が対象ではないにしても、他人が他人のカップルを奪うってこともあるだろう。

 強引に奪うというのもある。


 例えば、王族が平民に対してする寝取り。

 先日のセシルが『誑し』で言った部分だ。

 寝取るだけ寝取って、あとはポイ。

 王族が、というのはかなり特殊だが、そうでなくても貴族が平民に迫るなんて、その手のweb小説やラノベで腐るほど出てくる。

 恥ずかしながら、そういった小説をよく"(さくしゃ)"も読んでいたので、その影響もこの世界に反映されている可能性がある。


 喜んで読んでいたとはいえ、よく考えなくても下衆な設定だ。

 自分の一夫多妻(ハーレム)を守るために、他人のカップルを『寝取る』。

 実力者ってだけで、相手の心を射止めることが出来るツペェア。

 更に"宮廷魔術師"という立場もあって、鬼畜系エロゲー主人公なら垂涎ものの設定だ。


 生活資金は国から出てて、毎日情欲に溺れ、選り取りみどりで孕ませ放題。

 緊急時は俺TUEEEEで、「流石ご主人様!」だ。


 だが、俺は元々小市民だし、そういうのには興味が無い。

 "生前"はモテなかったクチだが、能力と階級に惚れるのではなく、性格と心を見て惚れて欲しいと思う俺は、甘いのかもしれない。

 でも、本音だ。

 学園では、ツペェアの法律も絡み、一夫多妻制もあるという。

 この際、一夫多妻については最早何も言わない。

 だが、実力はなるべく隠す。


 そんな能力と階級に惚れて欲しくなんかない。

 ……性的な意味で、一度セシルとエルリネ、エレイシアと合体して、どれぐらいに大事に想っているか……。いや、それでは信じていないことへの証左になってしまう。

 だが、口ではなんとでも言える、だからこそ行動して彼女たちの心には俺がずっと居続けたい、と思うのは気持ち悪く女々しい男の言い訳か。


 俺の横では『妻』一人と形だけの『奴隷』二人がきゃっきゃっと姦しく世間話中だ。

 一人下衆いことをグジグジと悩んでいるのが馬鹿らしくなってきた。


 俺なりの想いとやり方で、彼女たちを愛せばいいんだよな。

 関係は俺が成人してからにしよう。

 それまで、精一杯愛せばいいんだ。


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