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ウェリエの聖域:滅びゆく魔族たちの王  作者: 加賀良 景
第2章-暴毒の魂-
128/503

姦し三人娘

※警告※


R15と思われる内容があります。

「エルリネ、セシル。

貴方達に、いっつも思っていて言いたいことがあります

夜中貴方達は兄上にくっつきすぎです。


あんな狭い寝台の上で三本並びで就寝とか何考えてるのですか!

兄上は寝返り打てなくて毎朝痛いって愚痴るのですよ!


一緒に寝てはいけないとは言わないけど、せめてもっと大きい寝台を買い換えるか、交代制にしなさい!」


「……あうあう、ご主人様ごめんなさい……」

「私は貴方のご主人様じゃないから、謝るなら兄上にいいなさい!」

「あううう……」


 ぷんすこと怒る女性。

 年の頃はエルリネと変わらない十七、八頃に見え、肌は子ども特有のタマゴ肌ではないが、ガサついた様子もなく至って見た目どおりの肌をしている女性だ。

 髪の色は朱色。

 瞳は赤。

 つまりは全体的に赤い。


 ここまではエルリネに似ているが、決定的に違うところがある。

 それは、エルリネも豊乳だったが、この女性は巨乳である。

 もし手の平で持ち上げようとすれば、沈みこぼれ落ちるほどである。

 下腹部も安産型のように大きく、それでいて腰はくびれている。

 少なくともこの場におけば、一番女性らしい身体つきをしている。



「そ、そんなこと、ミル様仰ってないので……」

 セシルが彼女に言い訳をするが、それに対してその女性はフンと鼻で嘲笑った。

「へ~、セシルは相手が『嫌だ』って言わないと、止めないんだ……。

……へ~」

「!」

「べっつにいいけど~、私が言うことじゃないし。

ただ、兄上が"日本語"講座で『堪忍袋の緒が切れる』ということを私にちょうど言ってたし、実はそう思って……いるのかもしれないね~。

ま、私は兄上じゃないから本当はどう思っているかなんてわからないけど」


 女性がもう一度鼻で嘲笑う。


「兄上は優しいから、そんなことはしないし溜め込むかもしれないけど。

『甲斐甲斐しく世話を~』と言ってたのに、甲斐甲斐しく世話『されちゃう』側なんだねぇ」

「……ッ」

「ああ、勘違いしないで欲しいけども。

別に私はセシル、エルリネと兄上の仲を引き裂きたい訳じゃない。

ただ……、兄上のことちゃんと見てるの?」

 

 女性の言葉にセシルも、エルリネも反論が出来ない。

 事実、彼女二人は自分のことしか考えていなかった。

「私は兄上のことをずっと離れずに見てたし、離れなかったお陰で力を持って貴方達を助けること出来たけど。

もしかしたら、今後『あんなに手の掛かる女要らない。切り捨てるか』なんて考えることがあるかもしれない。

貴方達は、現状手の掛からない女になってると思っている?」


「「…………、」」

 褐色肌の森人と獣魔族の女二人は押し黙る。


「私はまぁ現状、長距離の移動は自力では出来ないぐらいに手の掛かる生物だけど、女以下だし。

その辺りを踏まえれば人のことは言えないよ。

でもね。

この姿を常に維持して大好きな兄上から『名前』を貰って、エルリネみたいにずっと隣にいるって目標があるから、魔力循環日を隔日制にして、兄上の身体の負担を考えてる。


でも貴方達は何なの。

毎夜毎夜魔力循環して、更に言えば服とか着ていれば循環効率が悪くなるからという理由で全裸になって抱き合って寝るとか、羨ま……じゃなくて馬鹿じゃないの……!」


「あうあう……」

 褐色肌の森人の顔が真っ赤な茹で蛸のような状態だ。

 それもそうだろう。

 完全に愛玩動物だと思っていた、生物がまさか自分たちのような姿取り、更に自分たちの痴情を口に出して朗読される。

 これを恥と思わずに、何を恥だというのか。

 事実、褐色肌の森人の心中は「世間的に年端もいかない男の子に劣情を抱いてごめんなさい……」と後悔に彩られていた。


「あと、エルリネ!」

 女性が森人へ点呼するように声を荒げる。

「はひっ」

 その点呼に対し、森人は後悔から即座に現実に引き戻され、更なる自分の主人に対する劣情行為について指摘を受けることになった。

「全裸になって抱き合うのはよしとしましょう。

ええ、私も是非ともしたいからね。

だからってとっても大事だからといってもね。


いくらなんでも全裸で寝ているときに……『自慰』は止めなさい」


 エルリネの身体が赤くなり、心と頭が『恥』の一つで爆発した。

 褐色肌の顔と身体が赤く熟した実のようになったところで、『自慰』という単語が分からないセシルは右人差し指を口の近くに起き、首を傾げる。

 その姿に女性は敢えてぼかして、人に知られたら恥ずかしいものと教えておく。


 結果、口から魂の抜けた褐色肌の森人を見る評価の目、微妙に下がったのはご愛嬌だろう。

「あと、セシル。

貴方も人のこと言えないから」

「嫌ですわ、わたくしはそんなはしたないこ――」

「洗濯時、兄上の下着を――」

「うわあああああああ」

 突然叫びだす獣魔族のお嬢様。

 その叫びだした姿に、ニヤニヤと嗤う女性。


「ううん、どうしちゃったのかなぁ?

突然叫びだして」

「くっ、卑怯な」

「……卑怯?

どこに卑怯なところが……?

ただ、セシルの日常を声に出しただけですよ……?」

「わたくしは、脅しなんか――」

「下着の上衣と下衣をくんく――」

「うわああああ」

「近所迷惑ですよ、セシル」

 と、心底迷惑そうに獣魔族のお嬢様を(たしな)める。


 それに対し、獣魔族のお嬢様は顔真っ赤の涙目で「じゃあ止めてよぅ。ほんの出来心だったんだよう」と泣き声だ。

 その割には「くんくん」というよりも鼻を当てて三呼吸ぐらいしており、出来心の割には常習犯だったが、別に口撃したくてやっている訳ではないので、黙る女性。


 えぐっえぐっと泣いている獣魔族のお嬢様と、口から魂が抜けている褐色肌の森人を睥睨(へいげい)し、一言。

(たわむ)れはここまでにしておきまして」の彼女の一言に、獣魔族のお嬢様と褐色肌の森人二人の脳内で「戯れだとこの女郎」と共通に思わせた。

「そのご様子だと、貴方達二人ともふざけんなって顔ですね。

ただまあ、『自慰』するのもお洗濯にそういうことをするのも別に構いませんが、人の目はあるのですから自重しましょうってことです。

私達、身内内でバレたから良かったものの、他人にバレていたら兄上に要らない面倒なことが降りかかっていたかもしれません。


……それとも、兄上にそんなご面倒なこと、おっ被せたいです……?」


 そんなことを問われれば答えは「否」と言うべきしかないのは、共通認識だ。


「それに兄上からここ最近、学園が楽しみで仕方がないということを、私に教えてくれます。

たくさんの人間と群れて生活し、学びそして就職? とかいうものをすると聞きます。

……セシル、貴方も学園に行きたいと言ってましたけど、兄上も非常に楽しみにしています。


……貴方達のその行動で、兄上が楽しみにしていた生活を泡にしたいのですか?」


「「…………、」」

 二人共無言だ。

 正直に言えば、二人とも自分は誰よりも学園はとても楽しみにしていると自負している者だ。

 だからこそ、無言。


「……とにかく、兄上と今まで通りに一緒に寝たいというのであれば、あと三人ぐらい余計に寝れるぐらいに大きい寝台を購入するか、隔日制にするかしましょう。

私は少なくともこのまま隔日制で通します。

あの姿は中々に便利ですし」


 女性が今後の方針を打ち出した。

 それに対して、特に反論はなかった。

 別に禁止もされていないし、あくまで楽しみにしている学園生活が待っているので、『自重』しましょうということだということは皆わかったのだ。


「それと、あと」と女性は口を開いた。

「先程まで皆さんを口撃したした私がいうのもおこがましいですが、私が人化(じんか)することを黙っていて欲しいです」

 険が取れきれていない声音で「理由は」と聞き返すお嬢様。


「兄上は、一夫多妻に嫌悪感を持っているご様子。

そんな方に女性を増やしてみてください。

心労が祟って倒れるのではないでしょうか」

「…………、」

「兄上から『人化』したら名前を頂けると約束をされています。

だから、早く人化出来たことを伝えて名前を貰いたい。

ですが、この家に女性三人になって男性一人だとお辛いのではないでしょうか。

ですから、黙っていて欲しいのです」

「……なるほど、理由は分かりました」

 この理由について両名とも納得した。

 当然だ。

 異性の友だちもいいが、同性の友だちも欲しいだろう。

 そんな中に、異性の友だちが増えたら、アンバランスだ。

 だからこそ、『妻』と『奴隷』は承知の意を告げる。


 だが。

「ああ、そうそう……うっかりバラしたら……どうなるか分かりますよね?」

 と、最後に両名ともに脅迫した。

 色々台無しだ。


『妻』がこの『小動物』に対して「このクソ(アマ)」と怒髪天を突き掛けるところで、唐突に『小動物』が声を出す。

「あら、兄上が帰ってきたようですね。

私は元の姿に戻ります。それでは、また」

 そう一方的に言い述べて、彼女は例の『小動物』になった。


 どうしてこうなったのか。

 事の発端は、この日の朝まで(さかのぼ)る。



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