見た目にだまされるな!ショートストーリー
「ありがとうございました!」
玄関の前で一礼し、去ろうとする男性。
スーツ姿に黒いかばん。いわゆるセールスマンだ。
彼は笑顔だった。契約が取れたのか、訪問先の奥さんが美人だったのか、とにかく彼は笑顔だった。
そして歩き出した。その時、
「ちょっと、そこのきみ」
「はい?」
警察官が男を呼び止めた。
「君は…何かのセールスマンかな?」
「え?はい…化粧品の会社に勤めていますが…」
「なるほど…」
警察官は男を、何やら怪しい人物でも見る目で見ていた。
「あの…何か…?」
「今きみはこの家から出てきたよね?」
「はい」
「誰かいたかね?」
「え…はい。この家の奥様がいらっしゃいましたが…」
「ほう…。それで契約でも取れたのかな?」
「ええ、おかげさまで」
「なるほど…」
警察官はいかにも疑っているようだった。
「あの…何か…」
「いやね、私はここのご主人とは知り合いなんだが」
「そ、そうなんですか?」
「二週間ほど前に会った時、再来週は妻と旅行に出かけると行ってたんだ」
「…」
「だから…今は留守のはずなんだが…」
「…」
男は焦った。実は男はセールスマンの格好をした空き巣泥棒だったのだ。
「そのかばんの中を、ちょっとみせてもらってもいいかな?」
「え?」
かばんの中は盗んだお金や宝石が入っている。これはやばい。かなりやばい。栽培マンと戦ってるヤムチャくらいやばかった。
「どうしたのかね?」
「え…えとですね…この中には書類がたくさんあって、中にはお客様のプライベートな情報が記載してあるものもありまして…ちょっとお見せするわけには…」
「では見せることが可能な書類だけでもいいから、見せてくれないかな?」
「え…いや…その…」
男はますます焦った。あと2回変身すると言ったフリーザにびびるべジータくらい焦った。
「しかし…会社の書類をあまり他人に見せるというのは…」
「きみ…怪しいな。何か後ろめたいことでもあるんじゃないのか?」
「いえいえ、私どもはまっとうな仕事をしておりますよ」
「とにかく!見せなさい!」
警察官はかばんを取り上げた。
「ちょ、ちょっと!」
男は焦った。焦りまくった。
「まったく…」
警察官はかばんを開けた。すると、
「これは…!」
中には現金数万円と宝石が数点、入っていた。
「…」
男はかんねんした。
「やはりな。最近、多いんだよ。セールスマンの格好した空き巣が。手の込んだやり方だな」
「…」
男は手錠をかけられた。
「じゃあ、ちょっとパトカーまわしてくるから。逃げるんじゃないよ。逃げたらもっと不利になるよ」
「分かりました…」
警察官はかばんを持って、去った。
しかし…10分たっても20分たってもパトカーはやってこない。
「どうしたんだ…」
30分が過ぎた。依然、パトカーは来ない。
「おかしいな…」
男は少し考えた。
「ま、まさか…」
そう。さっきの警察官は実は警察官の格好をした新手の泥棒だったのだ。
「やられた…」
男はうなだれた。
というわけで皆さん、人の見た目には充分ご注意を。あと栽培マンの自爆にもご注意を。
★おしまい
ありがとうございました。またよろしくっす!