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eighty-eight

作者: ムーミン

鞠花。

・・・その名は、鞠のような、花のような(ちょっと欲張りだけれど。)女性になるように・・・あるいは、花のように、手鞠のように・・・いずれにせよ、何とも意味不明な名前である。

手鞠とは、蹴鞠とか、そんな感じで、ボールのこと・・。ボールの花・・。こんな風に解釈されては名付けられた私の立場がない。

そんな、こんな名前を付けたのは、変わり者で有名な私の父方の祖父である。

「女の子だからなぁ・・・」と、困った父は、その挙句、祖父に相談をしに行ったらしい。すると祖父は、豪奢な肘掛椅子にどんと腰をすえ、チョコレートを口に放り込むと言ったらしい。

「鞠花だ。」と・・・。

名前についてからかわれたときには、決まって父と母はこの話をする。

この話を聞かされると、かえって心に大きな亀裂ができるのはいつものことで、逆に傷つき、すねる私だった。「名前を変えて欲しいってそう頼んでいるのにさっ・・・」こんな独り言を繰り返しながら。

だけど、楽しかった。すごく。

「からかわれて、またからかわれるというのに、楽しいなんて、こいつ、アタマどうかしてる。」そう思ってもらっちゃ困る。だけど、それでもたのしかったのだ。

今、振り返ってみれば・・・だけどね・・・。

でも、あのときの私も楽しかったのだろうと思う。

優しくて、きさくなお父さん。そして、そんなお父さんが大好きなお母さん。

家庭は、愛で満ち溢れていた。

「私は将来、お父さんのような人と結婚したいです。」

そんな小学生の低学年の子でも無理にでも書きたがらない作文を、小学校6年生のときは堂々と授業参観日に朗読する。

そんな朗読をすると、うしろの保護者席では、ジーンと目や鼻のあたりをハンカチでおさえ、すすり泣きまでする

親が後を絶たない。

どうしてって? 

だって・・・

だって・・・

そんなことは叶わないし、お父さんも・・・いないから。

「お父さんは、星になったのよ。」

よくドラマなんかである感動のシーン。だけど、私の心にはちっともその言葉は響かない。

だって、3年前・・・死んじゃったから。

突然の心臓発作だって。もともと気管支が弱かったから・・・突然でも仕方がないって・・・

あのお父さんが。何でも出来るお父さんが。心臓発作って何か分からなかったけれど、(いまだによく分からないけれど)お父さんがそんなすぐに・・・いなくなるなんて思わなかった。

「お父さんが、そんなことで死んだって聞かされたら、なんて言うだろうね。」

って、冗談交じりに、お母さんにそう話しかけてみたけれど、お母さんは黙って、星がきらめく夜空を見つめていた。

そりゃあ、お母さんもつらかったんだろうって思う。本当に突然だったもの。

あの日の朝は・・・

何故かお父さん、「じゃあ、行ってくるね」って私とお母さんを抱きしめたんだもの。

急に。いつもならそんなことしないのに・・・・。

そして、それから・・・

あんなぎゅって抱きしめた力強い腕も、手も、工作の宿題の時には、器用に部品を作ってくれた指も、楽しい、優しい言葉が飛び出す口も、優しい目も、笑った目も、乗ったらあったかいお腹も、何もかも動かなくなって、それどころか、冷たくなっていた。

だから、悲しいって言う感情よりも、不思議って言う感情の方が先に出てしまって、涙が出なかった。

お父さんと永遠にお別れしてしまったっていう実感がわかなかった。


そして、そしてだ。

無一文になりかけていた私たちのもとへ、ビッグニュースが飛び込んできたのだった。

父方の祖父がの経営する、日本でも、1、2を争うほどの大きな大きな「北条製薬会社」の大役を務めることを、祖父が勧めてきたのだ。

「大人の話だから。」と、私には何も教えてくれないお母さんだったけれど、その仕事を引き受けたのだった。

もちろんコネ。何も入社試験何て、そんなものは受けていない。それに、下の方から入ったわけでもない。すこし経営学をやっていただけのこと。何もできやしないお母さんは、何故か引き受けたのだ。

私の為だと。家族2人の為だと。そう言う。


だから、私もそのために、我慢をしようと思う。


「ピチチチチ・・・ピチチチ・・・」

小鳥のさえずりがこだまする。

私を歓迎してくれているのか、そうでないのかはどうでもいい。どうであっても、私はここに居なければならない。

見上げるほどの大きな門。

太い銀色の鋼鉄が組み合わさって、複雑な模様をしている。

門に取っ手はついてはいるものの、私のような子供が安易に開けられるような簡単な者ではないというのは見た瞬間に感じ取った。

・・・どうしよう・・・どうやって開ければ・・・

戸惑って、キョロキョロした挙句、やっと見つけたのが、その大きな門と、それに続くお屋敷を取り囲むような柵の間の隙間だった。

私が無理して入れば、きっと入れるだろう。だけど・・・

私は、私の腰ほどの高さのキャリーバッグを見つめた。

あまりこのキャリーバッグには無理をしてほしくはない。中には大切な私の宝物が入っている。

「ピチチチ・・・チュン・・・チュン・・・」

小鳥のさえずりが、私のイライラを急増させた。

私は現役の中学1年生です。

本を読むのが好きで、自分でも物語を作れたらいいなあと思って、下手な小説を書きはじめました。

どうぞ頑張って読んでください。

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